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【書籍化】白い結婚、最高です。  作者: 火野村志紀


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75/82

75.ただいま

「タルトタタンのこと、忘れるんじゃないわよ」と念を押して、ミルティーユはエシュット邸に帰って行った。

 私たちも騎士団が用意した馬車で、屋敷に帰ることになった。


「私はあっちに乗るね~」


 ポワールはそう言って、イーサンと同じ馬車に乗り込んだ。もしかしたら、私とユリウスに気を遣ったかもしれない。

 私たち夫婦を乗せた馬車は、緩やかに走り始めた。


「…………」

「…………」


 車内では暫く沈黙が続いていた。改めて二人きりになると、会話が中々思いつかない。

 気まずさを感じていると、ユリウスが私をじっと見据えながら口を開いた。


「……アニス、以前はすまなかった。私はあの時、君を守ることばかり考えて、君の心情を理解しようとしていなかった」

「そ、そんな、謝らないでください。私こそ、ユリウス様には酷いことをたくさん言ってしまいました。本当に……申し訳ありませんでした」

「いや、悪いのは私だ」

「いいえ。私の方が……」


 そこまで言いかけて、私はユリウスと顔を見合わせて笑った。

 私たちは、どうしてこんなことで言い合いをしているのだろう。


「……だが、互いに謝ることが出来たんだ。これで仲直りだな」

「はい。そうですね」

「これからもよろしく頼む」


 穏やかな笑みを浮かべながら、ユリウスが私に手を差し出す。

 ……まさか女性恐怖症が治った?

 彼の手を恐る恐る握ってみる。

 するとユリウスは目をカッと見開き、全身をガタガタと震わせ始めた。

 あ、これはいけません。

 私が慌てて手を離すと、震えの止まったユリウスは、切なそうな顔で私に謝った。


「すまない……」


 やっぱり恐怖症を克服するためには、まだまだ時間がかかりそうだ。




 数時間後、馬車はオラリア邸に到着した。

 たった半月ほど離れていただけなのに、不思議と懐かしさが込み上げてくる。

 そして屋敷の前では、マリーが私たちを待っていた。


「おかえりなさいませ、アニス様」


 私が馬車から降りると、マリーはいつもと変わらない様子でお辞儀をした。

 しかし彼女が顔を上げると、その瞳はいつの間にか潤んでいた。


「本当に……ご無事でよかった……」


 マリーは声を震わせながら呟くと、私を優しく抱き締めた。

 彼女の言葉と体温に、私も目頭が熱くなっていく。


「ただいま、マリーさん……っ」


 涙が雨のようにあふれては、流れ落ちる。

 私は家族を失ってしまったが、決して一人ぼっちじゃない。

 ユリウスやマリー、ポワールが傍にいる。オラリア家の使用人も、とても優しい人たちだ。

 だからどんなに辛くても、悲しくてもきっと乗り越えられる。私はそう信じている。


「……あれ?」


 今、一瞬目眩がしたような……気のせいかな。

 マリーが「どうなさいました?」と、私の顔を覗き込んだ時だった。

 ぐわぁんと激しい目眩に襲われて、思わずその場に座り込んでしまった。

 目の前がチカチカして、気も遠くなっていく……



「アニス!」「アニス様!」


 ユリウスとマリーが慌てた声で私を呼ぶ。


「す、すみません……何でも、ありませんから……」


 何とか立ち上がろうとするが、私は結局そのまま意識を失ったのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] アニスちゃんかわいい。 公爵のヘタレっぷり。 [気になる点] アニスは公爵家の奥方様で、実家であっても男爵家は格下も格下。普通の貴族の感覚が無いのか?頭のおかしな人が(妹夫も含め)多い。身…
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