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【書籍化】白い結婚、最高です。  作者: 火野村志紀
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46.指名手配犯

 この日は待ちに待った給料日。

 私は早速、街の本屋に出かけることにした。お菓子のレシピ本を買って、もっと色々なものを作ってみたいのだ。

 心を踊らせながら屋敷を出ようとすると、


「お待ちください、フレイさん」


 マリーに止められてしまった。


「外出は暫く控えてください」

「え……どうしてですか?」

「実は今、先日逮捕された指名手配犯の仲間が街に潜伏しているかもしれないのです」


 指名手配犯の仲間が……?

 目を丸くする私に、マリーが詳細を語る。

 何でも、田舎の村で女性や老人を背後からナイフで切りつけ、金品を奪う事件が多発していたらしい。

 どうにか犯人は捕まえたものの、もしかしたら共犯者がいるのかもしれないと、マリーが言うのだ。


「フレイさんはアニス様でもあるのです。ユリウス様の奥様に、万が一のことがあってはなりません」


 本が買いに行けないのは残念だが、ここは大人しく諦めることにした。

 それから一週間後の早朝。

 マリーにそろそろ外出していいか尋ねるも、首を横に振られてしまった。

 落胆しつつ、ポワールに話してみると、


「本屋に行きたいの? だったら、私と一緒に出かけよう!」


 人差し指をピンと立てながら提案された。


「マリー様は、ちょっと心配性なんだよねぇ。本当に共犯者がいるかどうかも分かんないし。さあ、お出かけお出かけ! 私も買いたい本があるし!」


 ポワールが私の手を引いて、玄関へ向かおうとする。

 マリーにダメって言われてるのに、いいのかな……

 ただ久しぶりの外出に少しワクワクしていると、背後から肩をポンと叩かれた。

 振り返るとそこに立っていたのは、無表情のメイド長。


「あ……」「あ……」

「お二人とも、こちらへどうぞ」


 私たちはそのまま、ユリウスの執務室へ連行された。


「気持ちは分かるが、今は我慢してもらいたい」


 部屋の主が、書類に目を通しながら言う。


「なので君も、フレイを勝手に連れ出さないように」

「はぁい……」


 ポワールはしょんぼりした様子で返事をした。


「犯人早く捕まらないかなぁ」

「そうですね……」


 執務室から出た後、つまらなさそうに唇を尖らせたポワールに、私も頷く。

 これではレシピ本どころか、お菓子の材料だって買いに行けない。

 見ず知らずの凶悪犯に楽しみを奪われ、肩を落としながら厨房へ向かう。

 すると応対担当のメイドが、料理人たちと何やら話し合っていた。


「おぅ……フレイが来たぜ」


 料理長がそう言うと、一斉に私へと視線を向ける。

 突然のことに目を丸くしていると、メイドに声をかけられた。


「フレイさん、実はあなたにお願いがあるんだけど……」




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