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大義の士  作者: CLOWN888v
6/13

警邏

「今日の晩飯はー、コンビニ新作スイーツのココアババロアー」

「本気で言ってます? それ……」

 基本的に何か理由がなければ封鬼委員と美化委員のバディは同じ寮に住むことになっている

 緊急の呼び出しにすぐ反応できるようにだ

 だから悪魔の駆除後に自ずと一緒に帰宅することになったのだがコンビニに寄りたいと言われて付いていけばこれである

 食後のデザートにならわかるが晩御飯がババロアとはどうなのだろうか

「ちゃんと五つぐらい買ってくから腹は膨れる」

「数とお腹の問題じゃないですしむしろもっと問題なんですがそれ……」

 まぁ言ったところで聞くわけもないだろうし僕は別に弁当でも買えばいい

 前の家では自炊していたのだが引っ越してすぐでまだ荷ほどきしていないし今日は初仕事で疲れているのもあるしという言い訳を自分のなかでしながら弁当を選んだ


「お邪魔します」

 これから住む場所だが僕は一応入る時に挨拶をする

 あのあと兼合さんはほんっとうにココアババロアを五つと甘いココアのパックを2パック買い込んでいた

 僕は1日分の野菜が取れると書いてあった弁当とサラダチキン、豆乳の小さいパックを買った

「相変わらず仕事が早いな、もう運び込まれてるじゃねーか」

 兼合さんは僕の荷物の入っている段ボールをチラリと見てから呟く

「すいません、荷ほどきしたら部屋に全部運びます」

「あー、だからいいって、なんなら荷ほどきもしないでいいぞー、じゃあな」

 そう言ってひらひらと手を振りながら兼合さんは自室へと消えていった

 今日初めて会ったが相変わらず一言一言が癪に触る人だ

 まぁでも僕は美化委員を止めるとかそういう以前にこの人の担当を自分から降りる気もない

 せっかく封鬼委員第二庶務長という地位と力を持った人の担当になれたのだから僕の目的のためにも利用しない手はない

 使えるものは利用する

 今はあまり好印象を持たれていないのだと思うがなんとかして取り入ってやるさ

 自分の部屋に入り扉を閉めるとこれからのことを考えながら僕は天を仰いだ


 僕が朝起きて準備を済まして部屋を出ると兼合さんはもうすでに準備万端で共同スペースのリビングにいた

「兼合さん、おはようございます、今日は警邏をしながら緊急の連絡に備えろとのことです」

 僕は最初に朝の挨拶をすると今日の予定を伝える

「あー、わかった」

 兼合さんはこちらを見ることもなくスケッチブックに向かっている

「何か描いてるんですか?」

「か、関係ないだろ!」

 僕が覗き込もうとすると兼合さんは慌ててスケッチブックを閉じた

「……見せたくないならいいですが、あ、あと警邏に行く前に本部に寄れとのことです、美化副委員長が先日の件で話があると」

「げっ! あのババア口うるさくて嫌なんだけどなぁ……」

 兼合さんはそう言うと心底嫌そうに顔をしかめた

 元はと言えば自分が約束をほっぽりだしたんじゃないかと思いはしたが言葉にすることは止めておいた


「約束の時間を3分過ぎているが、お前また寄り道でもしていたのか?」

 部屋に入れば低めのハスキーボイスが響く

「も、申し訳ありません! 早めに家は出たのですが少しハプニングがあったといいますか……」

 本当のことを言えば兼合さんが途中でこのシーンは!とか言いながら写生を始めてしまってなんとか引っ張ってきたというところなのだがそれを言えばただの言い訳にしかならない

「ああ、双葉庶務が謝る必要はない、謝らなければならないのはお前のほうじゃないか? 兼合封鬼第二庶務長?」

 そう言って兼合さんのほうを見たのは美化副委員長の北大路尊だった

 眼鏡の奥の瞳は鋭く光り長い赤みがかった髪をサイドポニーにしている

「あー、すいませんでしたー、これで満足?」

「兼合さん!!」

 美化副委員長、目上の相手にこんな態度ではとさすがにたしなめるように名前を呼ぶ

「双葉庶務、気にするな、こいつはいつもこんな感じなんだ」

 副委員長はやれやれといったように手を振った

「して、先日の件というのはまぁ建前だ、お前が反省するとは思っていないしな」

「じゃあなんの用ですか?」

「お前は封鬼委員に所属して長いから少し聞いておこうと思ってな、まだ戦えそうなのか?」

「その話ですか、なんの問題もないですね、まだまだ戦えますし」

「ならいいのだが、まぁ無理はしないように、以上だ行っていいぞ」

「うぃーっす、行くぞ」

「あ、はい!」

 二人がいったいなんの話をしていたのか僕にはわからなかったがそれを聞くことはしなかった

 まだそんなに深入りできるほどこの人に近づけてはいない


 僕達は兼合さんの担当することになっているに警邏区域に到着すると畏因会の腕章を付けるとパトロールを始めた

 僕達の仕事は悪魔関連の事件だが悪魔駆除の予定がない時はこうしてパトロールしている

 僕達が腕章を付けてパトロールすることで悪魔の活動を抑制することもできるし自警団のように人間同士のいさかいを止めたりなんかすることもある

 そして呼び出しがあればすぐにそこに向かう

「で、兼合さんはどこに行こうとしてるんですか?」

「どこって、昨日買えなかった画材を買いに行くんだよ」

「今警邏中なのわかってて言ってますか?」

「わかってるに決まってんだろ」

 この間のようにまた何を言っているんだという顔をされたがこちらが言いたい

 仕事中に私用を済ませてしまおうとするこの人の考えが理解不能だ

「わかってると思いますが行かせませんからね?」

「行かせないも何もないだろう、そして付いてきてくれとも言っていない」

「……バディって言葉を一度辞書で調べてみたらいかがでしょうか?」

「あ゛?」

 しまった、ついうっかり本音が漏れてしまった

 僕が慌てて言い訳をしようとした瞬間だった

ビー!ビー!ビー!

 端末からけたたましいアラーム音がなる

 これは緊急時の警報である

 慌てて僕は端末を確認して読み上げる

「ここから3キロ範囲内で火災発生! 今のところボヤですが計測されている力の余波から悪魔のノロイによるものだという可能性が高いそうです!」

「わかった、道案内は任せた、走るぞ」

 兼合さんは先ほどまでのやり取りなんてなかったとでも言うように走り出した

 僕も慌ててその後を追った

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