65. チンピラ冒険者、計画する
今回は短いです。
――さて、椎名がツノウサギ、アカシアとともに夜の飲食街に繰り出していた頃。
ガアン!
ギルドの隣にある酒場では、男が酒瓶をテーブルに打ち付ける激しい音が響いていた。
「チッ、クソッ……なんなんだよ、アイツ!」
男の名はベシュ。
ギルドに所属するCランク冒険者だ。過日より、椎名に恥をかかされたと憤っている冒険者である。彼はとりまきの5人の冒険者達と酒場に集っていた。
「何がビッグキラーフィッシュだ! たかが中級害獣を狩ったくらいで調子づきやがって……」
「どうせ偶然池から跳ね上がったとこに炎魔法が当たったんだろ。ビギナーズラックだ、ビギナーズラック」
「新人がしゃしゃり出てんじゃねぇっつうのな」
彼ら一味の柄の悪さは、以前からギルドで問題視されていた。Cランク冒険者であることをかさに着て、下級冒険者達に不遜な態度をとるのは日常茶飯事。さらには、頭角を顕しそうな――彼らのライバルとなりそうな新人達を卑怯な手段で潰してきた、非道の男達なのである。
「ったくよぉ、どいつもこいつも、最近の新人はマジで態度がなってねぇんだよ!」
「どいつもこいつもって……あのヒョロ男以外にも新入りいたか?」
「あぁ、女が1人――アカシアって奴だ」
ベシュはそう言いながら、苦々しげに酒を煽った。
「あー……茶髪で三つ編みの……あのカワイイ女か」
「そうそう、ソイツ。前にベシュが手ェ出そうとして撃沈したんだよ」
仲間の一人が、親指でクイッとベシュを指す。
アカシアは紛うことなき“美少女”であり、さらに線の細い身体と整ったスタイルの持ち主だ。ガタイのいい男が揃うギルドの中では、非常に目立つ存在だったのである。あっという間にこのチンピラ冒険者達に見つかり、セクハラをかまされそうになったのだが……、まぁ、彼女の超全力パンチをもって軽くのしたわけである。
「あの女、こっちが声かけてやったのに無視した挙げ句ぶん殴ってきやがったんだ! こっちはCランク冒険者だぞ!? 黙って俺を立てろってんだ!」
……無茶苦茶である。
しかし彼らの仲間たちはうんうんと頷くばかりで、ベシュの言葉に異を唱えるものは一人として居ない。実力主義の業界たるゆえんか、彼らは自分より格下の冒険者を対等な人間として扱うつもりがないのである。
「あー、どいつもこいつもムカツクなァ……!マジでぶっ殺してやりてぇわ」
「……まぁ、女はともかく、あの男だな」
仲間の1人が、ポツリと呟く。
「魔法自体はとんでもねぇバケモンかもしれねぇが、身体能力は大したことねぇ。ギルド登録の時に受付野郎とやってるのを見たが――回避はあのホーンラビット頼りって感じだったしな。あんなヒョロヒョロが冒険者だと?笑わせんなって話だろ」
男の呟きに、さらに別の男が同調した。
「……やっちまうか?」
「まぁ……あんまチョーシのらせてちゃいけねーよなァ」
「恥かかせてくれた礼をたっぷりしねぇとな」
「よし、やるぞ」
男たちは悪い笑みを浮かべながら、舌なめずりする。
「だがどうやる? いくらフィジカルがクソ雑魚っつっても、あの極炎魔法……くらったら即死どころじゃねぇだろ」
「俺に考えがある。アイツ、いつも郊外で薬草採取やらショボい依頼ばっか受けてやがんだよ。だから――」
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