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それゆけ、孫紹クン! ~孫策(オヤジ)の夢はオレが継ぐ~  作者: 青雲あゆむ
第2章 中華制覇編

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48.曹丕との和解

建安23年(218年)2月 冀州 魏国 鄴


「はい、曹操さまは昨夜、お亡くなりになりました。そのため曹丕さまが、孫紹さまと交渉をしたいとの仰せです」

「「「なんだとっ!」」」


 曹操軍と苦しい戦いを繰り広げていたら、曹操が死んだという。

 その知らせを持ってきたのは、衛尉の賈詡かくだった。

 後世で”打つ手に失策がなかった”と言われるほどの、名軍師である。


 彼は曹丕の名代として、俺に交渉を持ちかける。


「曹操さまの死によって、城内はひどく混乱しております。そのため曹丕さまは、しかるべき待遇が保証されるなら、休戦に応じてもよいとのお考えです」

「たしかに曹操どのが亡くなったのでは、士気も衰えているだろうからな」


 そう言いながら、周瑜に目配せすると、彼が後を引き取る。


「休戦には私も賛成です。とりあえず双方が完全に兵を引き、そのうえで孫紹さまと曹丕さまの会談の場を設けるというのは、いかがでしょうか?」

「うむ、俺もそう思うが、賈詡どのはいかに?」

「私も賛成いたします。大至急、そのように手配をととのえましょう」

「よし、こちらの手配は周瑜に任せる」

「御意」


 こうして曹操との決戦は、思わぬ形で幕引きとなったのだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「孫紹 伯偉です」

曹丕そうひ 子桓しかんだ」


 それから2日後、俺は曹丕と対面していた。

 さすがに城の中は怖いので、城外に陣幕を張り、その中での会談となる。


「曹操どのについては、ご愁傷様です」

「うむ、お気遣い、感謝する。父上も草葉の陰で、喜んでいるだろう」


 とりあえず社交辞令を述べれば、曹丕もまじめくさって、それを受ける。


 曹丕 子桓。

 曹操の3男だが、兄が先に死んだため、後継者となった人物だ。

 史実では曹操が死ぬと、献帝に帝位を禅譲させて、魏の初代皇帝 文帝となる。

 年は32歳であり、中肉中背で顔立ちも平凡な感じだ。


「それにしても、ずいぶんと決断が速かったですね」

「貴殿と休戦することか? 当然だ。私は父上のような、英雄ではないからな」

「たしかに曹操どのは、稀代の英傑でしたね」

「そうだな。父上だからこそ、この中原で勝ち残れたのだ。そして貴殿に攻められても、決して諦めずに兵をまとめていた。あいにくと私にはそんなこと、到底できんよ」


 そう言う曹丕は、どこか達観しているようだった。

 おそらく曹操が偉大すぎたため、それなりに劣等感を感じていたのではなかろうか。

 しかし感情に流されて判断を間違えるような、愚か者ではないようだ。

 史実でも魏王朝を開き、それなりに安定した統治を行っていたからな。


「なるほど。講和の条件はなんですか?」

「フッ、性急だな。まあ、重要な話は先に済ませるか。私の望みは、魏王としての地位を保つことだ。そうでもしなければ、父上に顔向けができんからな」

「ふむ、私だけでは決められませんが、仮に王の地位を保てたとしても、現状のまま10郡を領有することは認められませんよ」

「それは当然だな。魏郡だけを貰えればいい」


 曹操は魏公に就任する際、冀州を中心に10郡を与えられた形になっている。

 それをたったの1郡に減らすことになるのだが、曹丕は大してこだわりがないようだ。

 これが史実では皇帝になった男とは、とても思えないほどだ。

 しかしまあ、ここまで状況が違うのだから、当然かもしれない。


 すると今度は曹丕から訊いてきた。


「貴殿はこれから、どうするつもりなのだ?」

「私ですか? とりあえず劉協陛下を保護して、洛陽に戻したいと考えています。その後は他の反乱分子を討伐して、漢の統治を取り戻すことになるでしょう」

「フン、きれいごとを。どうせ天子を傀儡かいらいにして、実権を握るのだろう?」

「そんなつもりはありませんよ。まあ、漢朝を建て直すに当たって、それなりの権力を振るうのは、否定しませんがね」


 曹丕がちょっと馬鹿にしたような言い方をするが、こちらはサラリと受け流した。

 さすがにこの場で、簒奪さんだつを疑われるようなことは言えない。

 俺なりに覇権を目指しはするが、この先どうなるかは分からないのだし。


「フン、まあいい。今後は協力して、この中華に平和をもたらそうではないか」

「ええ、よろしくお願いします」


 事実上、力は俺の方が上だが、年上の曹丕を立てる形で、会談は穏やかに進む。

 その後も遷都のことや、反乱分子討伐などについて、おおまかな流れを話し合って、その日の対談は終わった。


 ちなみに曹操の死亡状況についても聞き出したのだが、朝おきたら死んでいたらしい。

 このところ、俺との戦いで過労気味だったようで、心不全か脳出血などの突然死ではないかと思われる。

 そういう意味では俺が、曹操を史実よりも2年早く死に追いやった原因、と言えるのかもしれない。



 それから本陣に戻ると、周瑜と陸遜を呼び出して話をする。


「今日の曹丕の話、どう思った? 信じられるか?」

「まあ、油断はできませんが、それなりに信じてよいと思います」

「私も同感です。なんというか、曹丕どのは自分をわきまえていて、それほど欲がないように見えました」

「そうだな。どこか達観したようで、これ以上あがくつもりはなさそうだった」

「ですな。過度に追い詰めなければ、案外、共存できるのではないでしょうか」

「ぜひ、そう願いたいものだな。そうすればこれ以上、戦いで無駄な血を流さなくてすむ」


 俺がそう言えば、周瑜と陸遜が恭しく頭を下げる。


「さすがは孫紹さまですな。とはいえ今後、それとは別の戦いが始まりますが」

「ですな。漢王朝を建て直すのは、それだけでも相当な難事です。いっそ作り変えた方が、楽ではありませんか?」

「ハハハ、まあ、それも選択肢のひとつだが、まずはこの国を安定させよう。その後のことは追々、考えていこうじゃないか」

「「御意」」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安23年(218年)5月 司隷 河南尹 洛陽


 曹丕と和解してすでに3ヶ月。

 その間に俺たちは、次々と中原を制圧していった。

 各地には曹丕に従わない者や、単独で暴れまわっている者たちもおり、それなりに手こずった。


 しかし曹操軍の一部を吸収した我が軍は、総勢20万を超えている。

 その大兵力と、勇猛な将軍たちの働きで、各地を平定していったのだ。


 それと並行して洛陽にも軍を差し向け、天子さまを迎え入れるための準備を進めた。

 洛陽は守りには向かないが、中原を統括しやすい要地である。

 董卓に破壊されたため、一度はすたれたが、その後、徐々に復旧しつつあった。


 そこで宮廷の一部を最優先で修復し、天子さまをそこへ迎え入れようとなったのだ。

 そのうえで漢王朝の復興を、中華全土に宣言し、改めて各地の豪族に服属を迫る予定である。

 そしてその第一歩が、ようやく実現しようとしていた。


「陛下。洛陽が見えてまいりましたよ」

「うむ、実に20年ぶりの帰還になるな。孫紹には世話になった」

「とんでもありません。むしろ漢王朝の復興は、これからでしょう」

「ああ、そうだな。今後もよろしく頼む」

「お任せください」


 こうして洛陽への遷都は実現したものの、まだまだやることは山積みだ。

 正直、不安はいっぱいだが、新たな時代の到来にも、胸を躍らせていた。

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[気になる点] 劉備の軍はどうなったの?どこかに書かれていたのをよみとばしたかな?
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