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自信家  作者: 七宝
5/6

この夢は

「お前⋯⋯僕のこと忘れてるだろ⋯⋯」


 なんだ? また夢か?


「早く僕のところに来い⋯⋯早く!」


 真っ暗でよく見えない。誰が喋っているんだ。


「こんな暗闇にひとりぼっち。寂しいよタケオくん。早く来てよ⋯⋯」


 ジリリリリリリ!


 うちと同じ目覚まし時計だ。これはばあちゃんから孫達へのプレゼントなのだ。だから皆同じものを持っている。


 怖い夢を見た時は必ず人に話すようにしている。昨日味方をしてくれると言った花子に話そう。


「カクカクシカジカ」


「それってもしかしてキヨシ君⋯⋯?」


「いや、『僕のこと忘れてるだろ』って言ってたから違うと思うんだ。さすがに忘れられないよ」


 キヨシ以外の誰かということだ。といってもただの夢なので念とか信じない俺は現実世界と必ずしもリンクしているとは思わない。けどこんなことがあったあとだからちょっと怖いのも事実。


「そういえばお兄ちゃん昨日パン焼いてなかった? チン! って音聞こえた記憶があるよ! 多分そのパンの夢を見たんだよ!」


「あっ!」


 そうか、夢で俺を呼んでいたのは昨日焼いてトースターに入れっぱなしだった食パンだったのか!


「そういえばお兄ちゃん、昨日許さないって言ってたことだけど、やっぱりあれ私の感情だった」


 えっ、俺絶縁されるのか⋯⋯?


「あの時死んだフリしてた時頭にオナラされたのを思い出したの。昨日も言ったけど記憶が飛び飛びになってたせいでこのこともちゃんと思い出せないでいたの」


 あっ⋯⋯そういえばそんなことしたな。


「ごめん、あの時は俺もむしゃくしゃしてて⋯⋯」


「レディの頭にあんなことするなんてね、ホント最低」


 最低って、今の俺にそんなことを言うなんて!


「何がレディじゃ!しょんべん臭いガキじゃないか!」


「もういい! お兄ちゃんなんか死んじゃえ!」


 そう言って花子は一階に走っていった。キヨシ、父ちゃん、母ちゃん、そして花子。四人の人間に死を望まれるなんて、俺はよほど罪深い男なのだろう。


「きゃーっ!」


 花子の声だ! 何があったんだ!


「大丈夫か花子!」


 一階に降りると、そこには俺達以外の五人が倒れていた。おじさん、おばさん、ばあちゃん、シュウちゃん、ミドリ⋯⋯


 皆目を開けて横たわっている。まるで死んでいるように⋯⋯


「お兄ちゃん、救急車呼ぶよ!」


「お、おう!」


 妹のほうがしっかりしてるなんてな。俺は俺が情けなくなった。


 結局、五人とも亡くなった。全員心臓発作だった。俺達はいったいどうすればいいんだ⋯⋯


 俺達は家に帰り、途方に暮れていた。みんな死んだ。どうすればいいのかも分からない。学校なんて行ける状況じゃない。将来のことも考えられない。


「お兄ちゃん、見て見て!」


 こんな時になんでそんな元気なんだ花子は⋯⋯


「いくよ!」


 花子は包丁を強く握り、首にあてている。


「お前、いったい何するつもりだ!」


「さよなら」


 花子は自分の首を力いっぱい切り裂いた。血が勢いよく吹き出し、俺の顔にかかる。怖いし意味分かんないし辛いし、もう何も考えられない。もう俺も死のう⋯⋯みんな、俺のせいで死んだんだろうなぁ。ごめんよ。


 俺は学校の屋上に行き、ごめんなさい、と遺書を残し飛び降りた。

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