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自信家  作者: 七宝
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おじさんの家

 おじさんの家に着いたら心配した様子でシュウちゃんが出てきた。


「大丈夫? タケちゃん」


「うん、大丈夫。けっこう落ち着いてる」


 そう、落ち着いているんだ。あの小さな手紙のせいで親の死を悲しめないでいる。二人は俺を恨みながら死んでいったんだ。キヨシも含めて三人、あの世から俺を恨んでる。辛いことだが、取り乱したりするような元気もない。落ち着いているというより疲れ果てているのかもしれない。


 しばらくして葬儀屋が到着した。今日通夜をやって明日葬式だそうだ。そんなすぐやるもんなのかこれ。


「ムムム息子さん達も辛いと思いますがどうかね強く生きてくださいねねねねねね」


 葬儀屋のおじさんが励ましてくれた。


「ご心配いただきありがとうございます」

 

「タケオくんタケオくんタケオくんタケオくんタケオくん」


 花子が俺の名前を呼んでいる。


「あの葬儀屋さん絶対変な人だよ、さっきの救急隊の人と同じだよ」


「変な人とか言っちゃダメだろ! いろんな人が居ていいの! ってさっき言っただろ?」


 とはいえ俺もおかしいとは思う。変な人はいっぱいいるが、一日に二度も同じタイプの変人に会うのは珍しい。


「花ちゃん、今日は一緒に寝ようね!」


 シュウちゃんの妹のミドリだ。花子と歳が近く昔から仲が良い。しかし空気の読めないやつだ。今の花子にそんな余裕はないだろう。


「いーよ! ネヨ! 一緒にネヨ!」

 

 わりと元気だったようだ。


「お兄ちゃん、ちょっといい?」


 花子に外に連れ出された。真剣な顔をしている。


「さっきから記憶が飛び飛びになってるんだけど、パパとママが死んじゃったショックのせいなのかな」


「ああ、恐らくな。しばらくすれば治ると思うけど」


「あと、さっきお兄ちゃんのこと許さないって言ったけど、私はそんなこと思ってないの」


「どういうこと?」


「あの時はなぜかお兄ちゃんに対してすごく強い怒りというか、恨みを感じてて、でも私はこの事件の全部を知ってるわけじゃないから、今の時点ではお兄ちゃんの味方をしたいと思ってるの」


 良かった。俺の残った唯一の家族に見放されていなくて。


「あの感情はなんというか、自分のじゃなくて他人の感情が流れ込んできたような気分だったの」


 ピンポーン


「こんばんは」


 ばあちゃんが来た。怖い。ぼけてたようなので俺のことを忘れてるかもしれない。大事な人に忘れられるのって怖い。


「タケオちゃん、さっきはごめんね。最近オレオレ詐欺が多くて勘違いしちゃって。あの後ムサシから電話がかかってきて、タケオちゃんの言ってたことが本当だって分かったからまた電話したんだけど、繋がらなかったみたいで」


 なんだ、そういう事だったのか。忘れられてなくて良かった。⋯⋯ムサシって誰だ。おじさんの名前はヨシキだし。


「ムサシって誰?」


「なんだそれは。誰だそれは。知り合いにはそんな人おらん。誰だそれは」


 自分で言ったのに⋯⋯ばあちゃんやっぱり変だな。


「ごめんくださーい! キヨシ君を殺したんですよねー! タケオくーん! おーい!」


 またマスコミか? どうやって嗅ぎつけたんだ。


「なにか償おうとは思わないんですかー! タケオくーん!」


 おじさんが立ち上がって玄関の方に向かった。


「うるさいな! もうすぐお通夜なんだから帰ってください! ⋯⋯ん?」


 外には誰もいなかった。不思議そうな顔をしておじさんは居間に戻った。


「タケオくーん! 君は殺人犯だー!」


 おじさんはまた立ち上がって外に行った。しかし、外には誰もおらず、静まり返っている。


「だるまさんがころんだみたいだな。鬱陶しい」


 おじさんが怒っている。コソコソ隠れるような輩は嫌いなのだ。おじさんは正義の味方という言葉が良く似合う人で、昔からいじめっ子を退治したりして英雄になっていたそうだ。俺のことはどう思っているんだろうか。


「まったく最近のやつは本人の前に現れる度胸もないのか。口だけ達者な奴らだな!」


 通夜は無事に終わり皆床に就いた。俺は足が痺れた。明日は葬式だ。おじさんが全部進めてくれるようなので助かった。

 

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