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自信家  作者: 七宝
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オレ、かっこよくね?

 俺は人に強くモノを言える。これは昔からだ。普通の人が言えないようなこともズバズバと言ってしまえる。そんなオレって、かっこよくね?


「お前そんなことも出来ねーのかよ! 頭わりーなぁ!」


 キヨシは鈍臭い。成績は学年でビリだし、運動も全くできない。はっきり言ってクズだ。学年ビリでも進学希望らしい。こいつが来年大学生になっている姿なんて想像もつかない。


「で、でも⋯⋯それはタケオくんの仕事だよ⋯⋯」


 タケオとは俺のことだ。俺は今日掃除当番なんだけど、用事があるので早く帰りたい。そこでキヨシに代わりにやらせようとしたんだ。しかし、キヨシはやり方が分からないと言うんだ。バカなのは分かってたがここまでとは⋯⋯


「とにかくちゃんと終わらせてから帰れよな! 中途半端な仕事しやがったらタダじゃおかねぇからな!」


 俺は早くユウジの家に遊びに行きたいんだ。あいつが新しいゲームを買ったらしくて、みんなでやろうってことになったんだ。


「ひどいよタケオくん⋯⋯」


「うるせえ豚! はよ死ね!」


 さて、帰るか! ⋯⋯ん? 下駄箱に何か入ってる。手紙だ! めっちゃ小さいけど手紙だ! もしやこれはラブレターというやつでは?



 タケオくんへ


 はじめまして、私三組の高峰あやのです。やっとこの時が来ました。苦しかった⋯⋯毎日あなたのことを考えてたの。しばらく見ないうちにまたカッコ良くなっちゃって。ねぇ、私、あなたのこと好きなの。よかったら付き合って。



 高峰あやのって言ったらこの高校の三大ブスのリーダー格じゃないか! 喋ったことはないけど有名人だから知ってる。まさかあいつが俺のことを好きだったなんて⋯⋯帰る前に断りに行かないと!


 ガラガラガラッ!


「おい高峰! お前みたいなブスが俺にラブレターなんざ百万年早ぇんだよ! 気持ち悪い文章書きやがって! あばよ!」


 ガラガラガラバンッ!


 よし帰ろう! 帰って着替えて遊びに行こう! ってもうこんな時間かよ、早くしないと! 着替えてる暇なんて無い!


「何あれ⋯⋯あやの、知り合い?」


 あやのの親友・大島フケ子が聞いた。


「中学から一緒の石田タケオ君よ。同じクラスになったことはないけど、毒舌で有名なのよ」


 そう言ってあやのはタケオが閉めた戸をしばらく見つめていた。



 ふーっ、やっと着いた⋯⋯けどちょっと遅れちゃった。けどまあいいや、俺偉いし。

 来るって言ってあったしインターホン鳴らさなくてもいいよな。おっ邪魔しまーすぅ。⋯⋯ん、何か話してるな。ちょっと聞いてみるか。


「タケオのやつ遅いな」


 なんだなんだ、ユウジは俺が心配なのか可愛い奴め。


「別に来なくてもいいだろあんな口が悪いだけの奴なんか」


 えっ、ヨシオ何言ってるんだ⋯⋯


「それもそうだな、何も出来ないくせしていつもいばってるしな。お、もう終わりか⋯⋯新しいお菓子持ってくるわ!」


 ガチャ


「お、おう、ごめん、勝手に入って来ちゃった」


 いきなりドアが開いたのでびっくりして妙にたどたどしい話し方をしてしまった。


「いやいやいやいやいやいや、いいよ約束してたんだし! どうぞ勝手に入って来ちゃってください」


 ユウジ、焦ってるな⋯⋯丸聞こえだったよ⋯⋯


「今来たの⋯⋯?」


「そうだよ、今の今! めっちゃ今!」


 こっちも緊張して変なことを言ってしまった。どうしよう帰りたい帰りたい無理だよ帰りたい「帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい」


「タケオ、帰るの?」


 しまった、途中から声に出てたか! なんとか誤魔化さないと⋯⋯


「ごめん、そういえば今日家族と外食の予定があったんだった。帰るね」


 もちろん外食の予定などない。


「え、そうなの? うん、分かった⋯⋯じゃあね」


 帰り道のことはろくに覚えていない。ちょっと涙ぐんでたことだけ覚えてる。


「おかえりタケオ! カレーあるわよ! 手洗って食べな!」


 母ちゃん⋯⋯今までさんざん酷いことを言っちまったな。


「ただいま、ありがとう。すぐ手洗うね」


「え、どうしたのタケオ? いつも帰ってきたら『うるせーババァ! 手なんか洗わんわはよ飯出せ!』って言うのに。なんで今更いい子になるのよ⋯」


 そんなに口悪かったっけか、俺。今まであまり注意されたことがなかったから分からなかったけど、俺ってけっこうひどい事言ってたのか⋯⋯


 今日はなんとなく元気が出ない。ご飯だけ食べたら寝よう。スヤスヤヤァ⋯⋯




「早く死ねよ! あの野郎! いつも酷いことばかり言いやがって! 何様なんだあいつは!」


 ん⋯⋯? キヨシ?


「絶対に許さねえ! 呪ってやる!」


 あれ、手になにか持ってる⋯⋯? 文字がいっぱい書いてある、お札か?


「タケオに死を! タケオに死を!」


 キヨシ怖ぇ! どうしたんだよキヨシ! そんな事言うキャラじゃないだろお前!



 ジリリリリリリリリリン!


 朝七時の目覚まし時計だ。よかった。夢だった。キヨシ怖かった。今までキヨシが直接俺に反抗したことなんて無かったもんなぁ。やっぱ俺のこと恨んでるのかなぁ。そりゃそうだよな、酷いこといっぱいしてきたもんな。よし、今日学校に行ったら謝ろう!

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