装甲正義‼︎ 弾劾戦士 ジャスティアル
ある晴れた日常、なんら変哲のないそこに非日常は現れた。
その名は"アナザーデッズ"、「異なる終わり」を名乗る彼らは突如この平和極まりない日本に現れ悪逆を尽くしていた。
そして、今日もまた彼らは突如して現れ無辜の民にその暴虐の牙を見せるのであった。
炎に包まれる繁華街には力無き人々の悲痛な叫びがこだまする。
されどその声に応えるものはいない...
数年前までは...
「動くなッ!」
突如響くその声は、悲劇の中でも心地よい冷たさを持つ風となり、その場にいる全ての生命に届き渡った。
その声の先に存在するのは、我らが日本国にて秩序と治安の維持に努め、心優しき隣人、そして猛々しい羅刹ともなる行政機関、そう警察官である。
桜の代紋を頭に掲げ、鎌倉武士の鳴りが如くPOLICEの
文字をその盾に示した彼らは機動隊である。
その彼らが、一糸乱れぬ隊列にて盾を構えことの騒動の根源を見据えている。
そして、彼らの後ろに存在する指揮車より発せられるのは、閻魔の裁きが如く罪状の羅列、そして罪に対して受けるべき報いを彼は告げる。
「以上の罪状により貴様を現行犯逮捕、又は超法規的処置により特務官による刑罰が執行される。両の手を高く上げ膝を地面に着いて頭を下げろ‼︎」
その声を興味深げに聞き終えた人類の敵は、 "ニヤリ" と不敵に口角を上げると腰を落とし、前傾姿勢となり此方へ突撃する。
彼我の衝突まで後わずかのところで指示が飛ぶ。
「総員、道を開けぇッ!」
その声と共に、盾の壁は左右に割れ中央に道が出来る。そうして出来た道より純白の風が駆け抜ける。
一陣の風が駆け抜けた刹那、邪悪に染まった風との衝突を起こし敵を突き飛ばす。
突き抜けた風は、その場で立ち止まると右手の人差し指を敵に、左の人差し指を胸の桜の代紋に指し示し高らかに、誉れ高く声を上げる。
両の胸に赤く輝く希望の光を点滅させながら。
それは、その場に居合わせる全ての同族を鼓舞し勇気を与えるが如きものであった。
「いかなる理不尽が、無辜の民に牙向こうともこの桜の代紋と人々の笑顔が輝き続ける限り如何なる悪逆の狼藉を許してなるものかッ!
正義装着!現場急行!弾劾戦士ッ!ジャスティアル!超法規的処置により貴様を現行犯で刑罰を執行する‼︎」
彼が口上を述べると共に、周囲より薄紫色の壁が現れ彼らの四方と空を覆う。
そして彼は、右の手で左脇に存在するホルスターよりジャスティアル専用の拳銃、"NEW SAKURA M360J"を取り出すとそれを空高く掲げ発砲する。
「これは最終警告である、今すぐ武装を解除し地面に膝をつけッ! さもなくば、つぎに銃口が突きつけられるのは貴様と知れ!」
その最後通告を聞き観念したのか、敵は地面に跪き前傾姿勢をとる。
ジャスティアルは、それを確認すると一息ついて彼に近づこうとする。
しかしっ... 敵は両の足で地面を蹴り抜くと猛スピードで此方へ向かい爪を突き立てようとする。
その悪意がジャスティアルの身体を傷つけようとしたまさにその時、轟音と共に衝撃波が四角い闘技場に鳴り響きジャスティアル合金にてメッキコーティングを施された9ミリの弾丸が4発続けて敵に放たれる。
その弾丸をまともに喰らった敵は、後ろに吹き飛ぶとその体から、人のものとは決して違うとわかる血液を4つの穴から垂れ流し、苦悶の表情を浮かべ此方に憎悪の雄叫びを投げつける。
それを確認したジャスティアルは、拳銃を左脇のホルスターにしまうと両の拳を握りしめてゆっくりと敵に歩み寄った。
「すでに貴様の罪状に弁護の余地は無い、これから下す一撃は貴様の生涯最後の断罪の機会と知れ。」
彼はそれを告げると、腕を曲げ両の拳を耳の後ろまで持っていく。
「プラズマァ、エルボォォォッ‼︎」
敵に与える最後の断罪の機会、彼が与える唯一つの慈悲、そして怒りの判決が今ここに下される。
両の肘よりそれぞれ発生したプラズマを敵に叩きつける。
接触箇所が溶解し始め、苦痛の悲鳴をあげる敵は、一切の容赦なくその生命を断とうとするジャスティアルに向け、口より何か液体をジャスティアルに吹き付ける。
恐らく、強力な溶解液であったのだろうそれは煙を立ててジャスティアルのボディを溶かし始めた。
その予想外の一撃を食らい怯んだジャスティアルの隙をつき、プラズマエルボーより抜け出した敵は一度距離をとり息を整える。
敵は身体の随所より血液や煙を立てた。
その姿は、先程まで罪なき人々を恐怖に書きたてた姿からは想像もつかない程に見窄らしくなっていた。
その姿を見たジャスティアルは鼻で笑い、先程までとは違い警戒を込めて構えを取ると、少しずつ敵へとにじり寄り、全ての攻撃手段の射程圏内に敵を収めると動きを止め敵の様子を伺う。
少しずつにじり寄るジャスティアルに、敵は再び口を開き溶解液を吐き出す準備を行うと共に両の爪を臨戦態勢に整えた。
そうしてお互いの睨み合い、様子を伺う中先に動いたのは敵であるアナザーデッドであった。
溶解液を目くらましと牽制として吐き出し、強靭な脚力で前方へ躍り出て、その爪を喉元の装甲の隙間であろう場所へと突き立てる。
しかし、そこにあるであろう喉元は存在せず、爪は虚しく空を切った。
吐き出された溶解液に対して反射的に膝を抜き、身を屈め最期の一撃を放つ体制を整えたジャスティアル、
右の足の脚力と足の裏に搭載されたバネの力でその地面を勢いよく蹴りあげる。
その勢いで、ガラ空きになった敵の左の脇腹にジェット推進で威力を増し、脛から刃を展開させた蹴りを入れる。
「シン、ブレェェェドォキィィィック!」
自らに喝を入れるかのように叫んだ声と共に解き放たれた絶命への一撃は、確実に敵の身体目掛けて放たれた。
その刃は、敵の左の脇腹からめり込み右の脇腹へと突き抜けその身体を両断したのだった。
無様に地面へも落ちる亡骸、そして切断面よりとめどなく溢れでる緑色の血液が、あたり一帯を染めるのであった。
そうして血染めの戦場に佇むジャスティアルは、薄紫色のシールドに阻まれ、見る事が出来ない空を見上げながら片手を高く突き上げ自らの勝利を宣言するのであった。
シールドが解除されると、戦場となったエリアの周りには先程まで居た機動隊員達の代わりに事後処理担当の"清掃班"が厳重な警備の元、仰々しい装備を抱えて彼と入れ替わるように仕事を始めて行く。
そんな彼らの後ろ姿に背筋を正せ敬礼をすると、彼はは自らの居場所へと戻って行ったのであった。
こうして、週に一度は必ず見かけるニュースに紛れて"アナザーデッズ"による凶悪事件が世間に報道され、様々な物議を醸し出していく。
こうして、ジャスティアルの任務がまた一つ終わりを迎え、新たなる脅威へと備える日々がまた始まるのであった。
しかし、彼は決してめげず、折れず、諦めない。
何故なら、それは無辜なる人々を守り平和なる世界を維持するための高貴なる使命であるのだから。
彼は、今日も備える人々の平和を守る為、そしてジャスティアルであり続ける為に。