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異世界へ
「おい貴様」
「喋れんのかよ!」
いかんいかん、あまりに流暢に喋りだすもんだから、ついついタメ語でつっこんでしまった。
変なところで怒りを買ってしまったら、食われ損だからな。
これがホントの逆鱗に触れる。
言ってる場合か!
「貴様は姫か?」
俺の無礼を意に介さず、とんでも質問を繰り出してくるドラゴン。
「は?姫?どういう冗談…」
ん?なんだこの違和感…。
何かがいつもと…。
その瞬間、違和感が確信に変わる。
「あれ!ちょっと待って!何この声!」
声を発しているのは間違いなく俺だが、いつもの声と違う。
鼻声だとか、喉を痛めて枯れているとかではない。
質が違う。
完全に男のそれではなかった。
「貴様は姫ではないのだな」
「今それどころじゃ…」
「ならば用はない」
「へ?」
スゥゥゥゥゥ。
こちらの回答を待たずに己で答えを導いたのか、目の前のドラゴンが周囲の空気を吸い上げる。
この挙動は嫌な予感しかしない。
分かっている、これは間違いなくあれだ。
絶対火吐くやつだ。
今すぐにでも遁走しなければいけないのに、足が全く動かな…。
ドゴッ!!!