異世界へ
人生まるっと全否定された気分だ。
今まで学校でせっせと勉強してきたことは一体何だったんだ。
特に物理、てめぇは絶対許さねぇ。
胸を張るほど真面目に授業は受けてきていないが、そんな俺でもこれは反旗を翻す権利くらいはずだ。
だってこれはどう見ても…
異世界じゃねぇか…。
そうどこからどう見ても、紛うことなき異世界だ。
漫画とかゲームとか、嫌というほど見てきた異世界。
微塵も存在を信じていなかった異世界。
それがまさに目の前に広がっている。
視界を拒否するようにそっと瞼を閉じる。
異世界かー、亜人とかいるのかなー。
こんな思考が出来るのはまだ現実味を帯びていないからだ。
夢の可能性を大いに期待しているからだ。
そうでもなければ、命の危機に瀕している今、愉快な妄想など出来るはずもない。
シューシュー。
さっきよりやけにはっきり声が聞こえる。
んーまずいな。
いつの間にやらかなりの至近距離まで近づいてきているのかな?
まあでも目開ければ流石に夢から覚めるだろう。
まだ異世界一つも堪能してないけど、夢ってだいたいそんなもんだしな。
好きな女の子目の前にしていざってところで終わるしな。
すぐ寝ても続き見れないしな。
ってことで、この夢ともおさらばだ。
おはよう、世界。
瞼を開くと、眼前には壁。
ほらやっぱり俺の部屋…じゃねぇな…。
相変わらず聞こえるシューシューとかいう声。
加えてなんだか生暖かい風を頭皮に感じる。
壁もよくよく見ると生々しい。
ふぅ…と一息、頭上を見上げると、洞窟から覗かせていた主がいた。