7-2 乗馬
「ここが話に聞いた不死の王が封印されていた森なんですね」
この森に始めてくるヒルダは感慨深げだ。
ライナと出会ったのもこの森なら、俺の勇者としての旅立ちのきっかけとなったのもこの森。
すべてがここから始まったんだよな。
あれから半年か。長かったような短かったような。
俺も感慨深いものがある。
「確認すること忘れてたんだけど、皆は乗馬ってできますの?」
アリサから皆への質問が。
「俺は大丈夫だぞ」
「お兄様のことは知ってますの」
俺もアリサも一応、貴族の出身なので小さい頃からそれなりに乗馬とか教えられてたんだよな。
冒険者なってからさっぱり乗ってないけど。
「私は乗馬とか、やったことないです」
ヒルダはダメなようだ。
「馬って見たことあるけど、触ったこともないわ」
ライナはそれ以前の問題のようだ。
「借りれるかどうかもわかりませんが、近くの牧場とは面識があるので、馬を借りられれば旅は楽そうですの。
借りられたらふたり乗りで行くことにしますの」
マーケイン牧場主とは、不死の王の事件の際に依頼を通して知り合いになってる。
うまく借りられるといいな。
「ちょっと待った」
「なんですの?」
「もしかして、3人ともそのスカートのまま馬にまたがるのか?」
ロングスカートならともかく、特にアリサとヒルダのはミニだからそれでまたがると丸見えな気がするんだ。
「細かいことは気にしないですの」
アリサはそういうが、ライナは状況を想像したのか真っ赤になってるぞ。
3人ともズボンを持っているようなので馬を借りられたら牧場で着替えてから行くことにした。
マーケイン牧場を訪ねると、幸いなことにフランクさん・リタさんの兄妹がいてくれた。
「お久しぶりですね。
あのときはすっかりお世話になってしまって」
以前の依頼のことをずいぶん感謝された。
「今日はどうされたんですか?」
ガダウェルの街まで往復したい旨、おおまかに事情を話すと2頭の馬を格安で貸してくれた。
さっそく3人には着替えてもらって出発することにした。
主に体重のバランスを考えて、俺がライナを、アリサがヒルダを乗せて出発。
俺はライナを前に乗せて手綱を取ったんだが、最初のうち怖がって暴れるから、馬のほうも怖がってしまって苦労させられた。
でも、すぐに慣れたようだ。馬に乗ったときの高さが慣れないとちょっと怖いんだよな。
アリサとヒルダのほうは問題ないようだ。ヒルダがおとなしいのか、アリサがうまいのか。どっちもなんだろうな。
2頭とも気性のいい馬なようで助かった。
馬の旅は快調だったが、ふたり乗りで馬にはムリをさせているので、あまり酷使はできない。
適当なところで宿をとりながら、ガダウェルへと向かった。
このあたりの地理は俺もアリサもバッチリなんだが、さすがに冬ってこともあり、宿で泊まらないと厳しいものがある。
馬を飛ばせば3日でなんとかなるくらいの距離だったが、確実に4日かけての旅を選んだ。
そして懐かしのガダウェルの街についた。
アリサは半年ぶり、そして俺は1年ぶりの帰郷となる。