6-5 勇者の鎧
「シモン、お祖母様がお呼びです。
皆で来るようにと」
「わかった。すぐにいく」
ライナの呼びかけに皆すぐに反応する。
そのまま、ライナの案内で居間へ。
ユイナさんは俺たちの姿を見るとすくりと立ち上がった。
「ヒマそうならちょいと世界樹までつきあえ」
「なにかわかりませんが、お供します」
歩きながら、ユイナさんが俺たちへ。
「お主らがなかなか言い出さんが、勇者が使っとった鎧、いるんじゃろ?」
「あ、はい。
お貸し願えればありがたいと」
「今からそれを取りに行くぞ」
「世界樹にあるんですか?」
「使い道もないから世界樹に祀っておいた。
それなりにいい効果がついてるはずじゃ」
「世界樹にはそんな力があるんですか?」
「とは言ってもほんのわずかだがな。
それでも数百年も経つからわずかでも馬鹿にはならんじゃろう」
世界樹の前へ着くと、ライナさんは歌うように言葉を紡ぐいだ。すると、世界樹から光に包まれて2つの装備があらわれた。
「ほれ、これが勇者の鎧だ。
そしてもう1つ、こっちはわしが若い頃につけておった装備だ。
こっちはライナにやろう」
「うわ、私にもあるんだ。
おばあちゃん、ありがとう」
「まぁお下がりってやつだ。
それで、勇者の鎧のほうからだが、それは別に特別な能力は何ももっとらん」
「そうなんですか」
「ただし、当時すでに伝説級と呼ばれた北のトラバビエのドワーフの鍛冶師が自ら生涯の最高傑作と言い切った鎧だ。
行動を阻害することは最低限で、防御力は最高級であろう。
そして、世界樹の効果がいい具合についておるな。
MP自然回復がそこそこ付いたようだ」
「それは素晴らしい鎧じゃないですか」
まさに俺に理想といえる鎧だ。
「まぁ金じゃ買えないものじゃろうな。
そしてライナ、お前にあげたほうだが、同じ鍛冶師の作だ。
まぁ出来の方はそこそこいいってところだがな。
勇者の鎧とお揃いだぞ」
「いいなぁ、それ」
ヒルダが羨ましそうにつぶやく。
「それで効果なんだが、ライナのほうには魔法の効果がついておる。
わざわざ、付与師に高い金を払ってつけてもらったんじゃ」
「わ、なになに?」
ライナが喜んで尋ねる。
「んむ、魅力+10%だ」
「なによ、それ」
「魅力は大事じゃぞ」
「うんうん、とってもいいですの」
今度はアリサが興味津々と。
「魔法付与は本で読んだだけで、なかなか難しそうですの」
「まぁ魅力効果しかその付与師は付けれなかったんじゃがな。
そうそう、ライナのほうにも世界樹の効果で同じようにMP自然回復がついたようだ」
ユイナさんの家に戻り、俺はさっそく鎧をつけさせてもらうことにした。
ライナも自分の部屋へ着替えに行ったようだ。
勇者の鎧は俺のためにあつらえたかのように、ピッタリだった。
確かにこれは動きやすい。
肩などの関節部の造りが芸術的とも言えるくらい巧妙だ。
俺は鎧を装備したまま居間に戻り、皆へ披露した。
「最高に使いやすそうです。ありがとうございました」
「まぁその鎧も使う人間が再び現れて喜んでおるじゃろう」
俺たちが談笑していると、ライナも装備して戻ってきた。
「ねぇ、おばあちゃん。
これなんでスカートなの?
しかもこんなに短いと、ちょっと動くだけで見えちゃうよ」
「んむ。勇者のリクエストでそうなったんじゃ」
「えー」
ライナの恥ずかしそうな素振が可愛らしくていい。
「とっても素敵ですの!」
アリサがすごく欲しそうにしている。
「あげませんからね!」
ライナはスカートを抑えながら、アリサを睨みつけた。