6-2 伝説の精霊使い
「夕食の時にお迎えにあがりますので、それまではアリサさんたちの部屋でお待ちになっててください」
ライナは俺に背を向けたまま、こっちを向いてくれない。
どうもライナは恥ずかしくて俺の顔をまともに見れないようだ。
始まる前がああだったけど、終わった後のこの初々しい反応がなんともいいな。
ちょっといじめたくなるが、まぁここは言われたとおりにしておこう。
アリサたちの部屋へ入ると、すっごく冷たい視線が2つ俺を襲った。
「お兄様がここまでスケコマシだったとは思ってませんでしたの」
「わたしも会っていきなりとか、どうかと思いますよ」
あ、どうやらすべてお見通しのようで……
「壁が薄いようですの。
隣の部屋でしたので丸聞こえでしたの」
「3回位してたようですね。
すいぶんお楽しみだったようで」
うーむ、言い返す言葉がない。
隠してもしかたないから、状況を2人に説明する。
「結果良ければということにしておきますの。
お兄様はきっとヘタレだから、なかなか自分からそういう状況を作れないでしょうし」
「うまくケダモノになるように誘導しないといけないから難しいですね」
はい、おふたりの仰る通りでございます。
「夕食の時に声かけるって言ってたから、それまでは待つしかないかな?」
「ここまで来る道のりをショートカットできたので、ずいぶん早くエルフ村へ来れましたし、のんびりいきますの」
「当面、優先すべきこととしては、ライナとじっくり今後のことを話し合うことと、ユイナさんへ紹介してもらうことかな?」
「その2つが最優先ですの。
他にもいろいろありますが、すべてユイナさんに会ってからの話ですの」
ユイナさんに聞くべことをまとめたりしているうちに時間が経ったようだ。
ノックとともにライナが現れ、夕食の席へ案内された。
俺たちより前に席に1人のエルフの少女が座ってこちらを興味深げにながめている。
まだ幼さの残る感じの少女だ。なんとなくライナにも似ているから妹とかかな?
「夕食の前に紹介しておきますね。
こちらが、祖母のユイナです」
「「「え!」」」
ちょ……ちょっと待ってよ。
ユイナさんって800歳位のお年寄りのはずでしょ。
目の前の少女は人間なら12-3歳くらいに見えるんですが。
「なんじゃ、わしのプリティさがそれほど珍しいか」
伝説の精霊使いの第一声がそれであった。
「た、たしかにとってもプリティですが、800歳と聞いてましたのでご老人の姿を想像してましたので」
「人間の常識ならそうであろうな。
エルフは年取ってもこんなもんじゃ」
「それにしても、他の方々と比べてお若すぎるような……」
「んむ、若い時に子供産むと、そこで止まっちまうようでな。
それに、わしは周りより、ちと成長が遅い方だったからのぉ」
「そういうことなんですね……」
それにしても、600年前の勇者ってロリコンじゃねぇか。どんどん俺の中での伝説の勇者像が崩れていってるんですが。