1-8 妹の冒険者登録
俺が目を覚ますと、アリサはまだお休み中のようだ。
俺はアリサにガッシリとホールドされ、抱きまくら状態になってるから身動きするとアリサも目を覚ましちゃいそうだなとしばらくこのままじっと。
というのも、このままアリサに目を覚まされるとちょっと不味い状態かもしれないんだ。
健全な男子の朝の生理現象でどうもめいっぱい元気になってるんだが、アリサに密着状態なんだよなぁ。
困った。
「おはようですの」
とか思ってるうちにアリサも目を覚ましたようだ。
「おはよう」
さっそく起き上がろうとしてもアリサがしっかりと俺を捕まえてて起き上がれない。
「あと5分なの。このまましばらくお兄様を感じていたいの」
もしかしたらバレてるのかな?
「男の子の生理現象だから気にしなくても問題ないの」
完全にバレてるようです。
買い置きのパンを2人で食べながら、今日の予定を相談。
「アリサも冒険者としてやっていくならギルドに登録しておいたほうがいいだろうな」
「冒険者ギルドについては調べておいたの。この街で修行するにせよ、旅に出るにせよ、いろいろメリットが多そうだから登録するべきだと思ってたの。
お兄様はギルドへは職はどんなふうに登録してるんですの?」
この世界では職による能力の縛りとかは存在しないため、ここでいう職は使える能力の目安にすぎない。
よってどのような職で登録しても問題はないのだが、仕事の斡旋の目安などでギルドへの職登録は必須となっている。
「俺にぴったりあてはまるような職のカテゴリがないので、魔法戦士として登録しておいた。一応前衛志望であったしな」
「アリサはもっと難しそうですの」
「アリサは完全に万能型だからな。武器使っての戦闘はあまり好きそうじゃなさそうだから戦士とかはやめたほうがいいかもな」
「2つまで登録できるようですので、武闘家と賢者ってことにしようかと思ってるんですが、お兄様はどう思います?」
「すっごく極端な2つだなぁ。とりあえずどちらの職も問題なく務めれそうだからそれでいいんじゃないか?」
「そんな感じですることにしましょうか?
特に本名とか伏せておく理由は思いつきませんが、そのまま登録してもよろしいですか?」
「ああ、俺も本名で登録してある。偽名とか後でバレると面倒なことになりかねないからな。
ただ、わざわざ貴族であることを主張することもないからシモンとだけにしておいた。」
「なら、アリサってだけ登録することにいたしますの」
「じゃ、そんな感じでさっさとすませておこうか」
ギルドへ向かって歩きだすと、アリサはいつものようにおれの左腕を嬉しそうに抱えた。
ギルドではちょうど受付には他の冒険者がいない様子。これならさっさとすませられそうだ。
受付の女性サマンサとは顔なじみなので俺から話をすることにした。
「冒険者ギルドへの新加入の手続きをお願いしたいんだが」
「そちらの女性かな、ちゃっちゃと済ませちゃいましょうか」
サマンサから陽気な返事が返ってくる。
「こちらの申請書に必要事項を書き込んできてちょうだいな。読み書きとか問題ないかな?」
「ってことだから、さっさと記入しちゃおう」
「はい、お兄様」
「あら、こんな可愛らしい妹さんがいたんだ」
サマンサからの一声にアリサが反応した。
「え、こんな簡単に兄妹と見破られるなんて、さすが冒険者ギルドの人ですね。受付と思って甘く見てたらいけませんの」
「え?」
サマンサが固まる。
「おい、アリサ。冗談はそのくらいにして」
「冗談とか言ってませんの。夫婦というのはちょっとムリがあるにせよ、どう見ても恋人同士としか見えないはずなの」
「俺のことをなんて呼んだ?」
「お兄様のことはお兄様と呼ぶに決まっていますの」
「はいはい、仲のいいのはわかったから、漫才はそのくらいにして申請書をさっさと書いてきてね」
笑いをこらえたサマンサに、俺達は追っ払われた。
隅のテーブルでアリサがペンを走らせるのに俺は横で付き合う。
「出身地はいいとして、住所ってどうしましょう」
「宿屋って書いておけばいいはず」
そのあたりは適当でいいはずだ。
「賞罰かぁ、美術コンクール最優秀賞とか書く必要ある?」
「いらんいらん。そこは特になしって感じで」
まぁ書いておいたら特殊な依頼が来る可能性もないでもないだろうけど。
「そういえば職業ランクってどうしましょう?」
「なしってしておけば無試験だが、時間もあるし試験受けてみるか?」
「お兄様はどうしましたの?」
「俺も一応試験を受けて、魔法戦士Cランクで認定されてるぞ。それなりに依頼の目安とされるからな」
「自己申告書くようになってるけど、控えめにしておいたほうがいい?」
「どうせすぐアリサの能力とか知れ渡るに決まってるんだから気にせずいこうぜ」
「じゃ、武闘家S 賢者Sってことでいいかな?」
「いや、ちゃんと説明読めよ。自己申告はA~Eってなってるだろ」
「そうなんだ、でもよくSランクっての聞くけど、あれは?」
「あれは試験受けた際に特別に認定されてなるみたいだよ」
「そうなんだ。んじゃ武闘家A 賢者Aと。
こんな感じかな? お兄様目を通してくださいませ」
俺はざっと目を通すが特に問題はないと思う。
「いいんじゃないかな?」
受付のサマンサのところに申請書を出しにいくと、この時間は暇なのか受付には他に誰もいない。
「暇そうだな」
「勤勉な冒険者たちはもう仕事に入ってるし、そうでない冒険者たちは昼食前後に来るし、ちょうど今くらいが狙い目かな。
美味しい依頼はもう残ってないけどね」
と、思いもかけず重要そうな情報ももらえた。
「こんな感じでいいか? よろしく頼む」
申請書を差し出すとさっそく丁寧に目を通してくれる。
「武闘家A 賢者Aの申告ってこんなの初めてみたわ。
これはさっきのような漫才のネタじゃありませんよね?」
「あー、俺からみてもそれで問題ないと思う」
「わかりました。賢者の認定試験はこのあとすぐにでも行なえますが、武闘家のほうは試験担当者の都合で午後になると思います。
それで構いませんか?」
「あー、そういう感じで進めてくれ」