5-10 サプライズ
アインセラの街についた。
珍しく人間中心の街のようだ。今までの街は比較的小さいところばかりだったが、ここはそれなりの大きさ。
ここには冒険者ギルドもあるようなので、冒険者カードの更新もしておいた。
「消耗品の買い出しやらなんやらあるので、この街で2泊しようかと思うの」
「わかった。手分けしてやるか?」
「お願いするの。
ヒルダさんと2人で買い出しをお願いしたいの。
リストアップしておくから、午前中にしちゃってほしいの」
「わかりました。シモン様と2人で行ってきます」
翌朝、早々からアリサの送り出されて、ヒルダと買い物に。
買い物のリストはヒルダに渡されたようで、俺は荷物持ち要員だ。
ヒルダは買い物の途中、服屋でやたら時間を取られる。
「シモン様、こういうの似合うと思います?」
昔、アリサにも付き合わされたことあるんだけど、俺あんまりこういうのわからないんだよな。
「んー、なかなかいいんじゃない?」
「もうちょっと、ちゃんと見てくださいよー」
「見てる見てる」
「もー、シモン様ったら適当な返事しかしないんだから」
勘弁してくれよ。
「じゃ、次はシモン様のを選びましょうね」
「え、俺のはいいよ」
「ダメですよ、これから寒くなってきますから。
シモン様、冬物とかぜんぜん持ってないでしょ」
何着も試着させられることになった。
俺は別にどれでもいいよ。
どんなの着てもさほど変わんないし……
「うん、これがよくお似合いです。
お値段も手頃ですし、これにしましょう」
やっと、ヒルダのお目にかなった服があったようだ。
「これでよろしいですか?」
「うん、これいいよ。これにしよう」
「もう、適当なんですから」
「お腹もすいたし、そろそろ戻って昼食にしよう」
「んと、あと1軒だけお願いします」
次の店でも結構な時間を取られたが、やっと宿に戻ることになった。
部屋の扉を開けると、いきなり部屋が眩しい光に包まれ、
「お兄様、誕生日おめでとうなの」
アリサの声が。
続いて、
「シモン様、お誕生日おめでとうございます」
後ろからヒルダの声も。
部屋は派手に飾り付けられ、料理や酒の準備ができていた。
どうやら、ヒルダが俺を連れ出している間に、アリサが準備したようだ。
なにやら、やたら時間をかけて買い物してると思ったら、こういう計画だったのか。
そうか、旅に出てすっかり忘れてたけど、今日が俺の誕生日だったか。
これで俺は19歳。特に区切りとなる年齢でもないから特別の感慨はないけどな。
家にいた頃は毎年家族で祝ってもらえてたが、こういう暮らしになってアリサが覚えてくれてなかったら、完全に忘れるところだった。
「せっかく1歳違いだったのに、これでまた2歳違いになってしまったの。永遠に追いつけないのが悔しいところなの」
「追いつかれてたまるか」
そういえば、アリサの誕生日は俺と離れてる間に迎えたんだったな。今年は祝ってやれなかったが来年は忘れないようにしないと。
「ヒルダの誕生日はいつなんだ?」
「正確な誕生日はわからないんですが、教会にはいった6月1日にお祝いしてもらってました」
「ちゃんと覚えておくの。
しっかりとお祝いするの」
アリサとヒルダにはさまれてのサプライズパーティー。
旅の間、ほとんど酒なしで過ごしてきたが、こういう日くらいはいいよな。