5-3 ベヒーモス肉
「そういえばベヒーモス倒したら、戦利品としてツノを取ってきてほしいって言ってたっけ」
「このツノは槍の素材として重宝されているの」
「どうやって取るんだ?」
アリサは死体をいろいろ見聞していたが、ナイフを取り出し首から切り落とした。
「下手に取ろうとすると素材を痛めそうなの。どうせ血抜きするから、お兄様は首ごと持って先にギルドに報告に行くの」
アリサは首を落としたベヒーモスの体を近くの木を使って後ろ足から釣り上げていた。
「おいおい血抜きって、もしかしてベヒーモス肉って食べれるのか?」
「すごい高級肉なの。
今夜はごちそうなの。
でもきっと余るからあとでギルドに引き取ってもらうの」
「わかった。
ヒルダはどうする?」
「なかなかグロいから、お兄様といくほうがいいと思うの」
「そうさせてもらいます」
すでに血抜きを見ていて蒼白になりかけているヒルダは申し訳なさそうにそう言うのだった。
肉を解体中のアリサを残して、一足先にヒルダと冒険者ギルドへ。
ベヒーモスの頭はツノを持って担いでいくことにしたが、結構持ちにくいし重いんだよな。
1時間の帰り道が長く感じた。
「ただいま戻りました」
ベヒーモスの頭を持ち帰った俺たちは歓声とともに迎えられた。
これほどわかりやすい結果もないだろうな。
「ありがとう、しかもこんなに早く倒してくるなんて思ってもいなかったよ。
見ればツノも完璧な状態だし、大きさも見事なものだ。
この分の報酬も期待してくれ」
ギルドマスターのジークさんは嬉しげにそう言った。
「今、仲間の1人が肉を解体中なんですが、その何割かも引き取ってもらえますか?」
「あー、ベヒーモス肉なら大歓迎だ。
肉の分は後で精算するとして、討伐の報酬とツノの買い取りで合わせて23000Gだ」
「そんなになるんですか」
「あー、最初に言ったとおりボーナス込みだ。
ベヒーモスのツノも高く売れるからな」
金貨2枚と銀貨30枚を受け取った。
そうこうしてるうちに、アリサが戻ってきた。
「早かったな」
「帰還呪文使いましたの」
「そうか……ってそれがあるなら、俺たちもそれで戻ってくればよかったんじゃないのか?」
「お兄様たちが行ってしまった後に気付きましたの」
「頭を担いで1時間歩くの結構しんどかったんだぜ」
「ごめんなさいですの。
トレーニングと思ってあきらめるんですの」
さっそく引き取り分を鑑定してもらい、5200Gを追加で受け取ることができた。
「肉だけで5200Gってどれだけ高級品なんだよ」
「すっごく美味しいって話ですの。
まだアリサも食べたことがないから楽しみですの」
冒険者ギルドの建物の裏手でギルドマスターのジークさんは住んでいるとのことで、今夜はそこにお邪魔することになった。
ジークさんは奥さんと2人暮らしの様子。
台所を借りて、ベヒーモス肉の分厚いステーキを焼いた。
ジークさんは遠慮していたが、5人でいっしょにその肉を頬張る。
すんごい美味かった。
今までに食べた牛肉のステーキがすべて紛い物であったかのような美味しさだ。
「こりゃ美味いな。
あんな価格でも金持ちが買い漁るのがよくわかるぜ」
ジークさんの言うことにまったく異論はなかった。