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5-1 3人旅の始まり

 東へ向かって旅立った俺たち3人。

 アリサはいつもながらのファンシーな装いだったが、ヒルダも王都にいた頃の僧衣から改め動きやすい服装になった。

 半袖のブラウスで胸の大きさが際立つようになったよなぁ。


 しばらくは街道に沿った旅となるので危険もなく気楽な旅。

 最初のうちは3人で明るく話がはずんでいたのだが、どうも途中からヒルダの口が重くなったような気がする。普通に受け答えはしてるんだけど、ちょっと表情が硬いんだよな。

 宿に着いてからちょっと聞いてみるか。


 今日は最初の町で宿泊することに。

 上手い具合に3人部屋が取れた。

 夕食後、


「ヒルダ、なんかあったか?」


「え、特にはなにも……」


「なにもってことはないだろ。最初の頃は普通にしゃべってたけど、途中からなんか変だったぞ。

 前も言ったけど隠し事なしにしようや」


「あのですね……」


 ヒルダはポツリポツリと話し始めた。


「シモン様とアリサさん見てたら、本当に息があってるというか、仲良しっていうか。

 わたしが入り込む余地ないなぁって」


「まぁなんだ。

 アリサとは10年以上もこんな感じでやってきたから息があってるのはそのとおりなんだけどさ。

 ヒルダとはまだ知り合って10日とちょっとだから、これからどれだけでもなんとかなるだろ」


「それはそうなんですけどね。

 なんていうかなぁ、2人は運命の2人なのに、わたしはただの従者にしかすぎないんだなぁって感じちゃって。

 2人の間にはなんか愛し合ってるんだなぁって思える絆が強く感じるし」


「運命っていうけどさ、俺とアリサはたまたま兄妹として育ったってだけで、運命的っていうなら聖女ナターシャのお告げもらったヒルダのほうがよほど運命的だと思うんだけどさ。

 まぁ言葉遊びはさておき、愛って言うのはそう簡単にどうこうなるもんじゃないだろ」


「そうですか?」


「俺はそう思うぞ。

 確かに俺が今ヒルダのことを愛してるかって言われると、ちょっとまだそう言い切ることはできないな。

 でも多分こうしていっしょにいるうちにそういうのも自然と育ってくるもんじゃないか?」


「そうかなぁ」


「ヒルダのほうだってそうだろ。

 俺のこと愛してるって言えるのか?」


「言えると思いますよ、私は」


「そうかな?

 どっちかというとヒルダはまだ俺シモンを愛してるって言うより、勇者シモンの影を愛してるだけじゃないか?

 それか、勇者に仕えるゴアビレンス教の僧侶というその自分に酔ってるだけだと思うぞ」


「そんなことありません」


「まぁ俺がそう思ってるだけだから、違ってたら謝るよ。

 でも、それが悪いって言ってるんじゃないぞ。

 今はそんなんでも、こうしていっしょに旅とかしているうちに、自然と愛情に昇華していくんじゃないかなって思ってるんだ」


「うーん、どうなんだろう」


「自分の感情ってのも本当のところはよくわからないし、相手の感情とかなるともうそんなものわかるほうが不思議だよ。

 なんとなく、そんなものだと思ってればいいかなって。

 俺はそう思ってる」


「なーんか適当なこと言って、騙されちゃったような気もするけど、騙されておきます」


「2人の話はまとまったようですの。

 では、勇者への秘儀っていうやつを見てみたいですの」


「え、アリサさん、待って!

 あれは人にお見せするようなものでは!」


「ちゃんと毎日しっかりやらないとダメですの。

 お兄様の成長はこれにかかっていますの」


「それはそうなんですが」


「仲間の間で隠し事はなしですの。

 すっごく興味深いので、ずっとわくわくしてましたの」


 アリサがこうなったら誰にも止められないことは俺はよく知っている。

 この際だからヒルダがそれを理解できるまで2人をほっておくことにした。

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