4-17 王都からの旅立ち
「お兄様のことだから、ギリギリまでグズグズしてるかと思ったら、予想外に素早かったの。
見直したの」
夕食を取りながらアリサにからかわれる。
帰ってきて部屋の匂いを少し嗅いだだけで、簡単に見破られてしまったのだ。
「いや、俺としてもあんなにさっさとしちゃうつもりはなかったんだが」
「秘儀のことは聞いてるの。
今度、実際に見せてもらうの」
「ただ、あれあんまり人に見せるものじゃないぞ」
「旅に出たらどうせ夜も3人いっしょなの」
「そういうことか……って、そうなの?」
「そうですの」
「聞く限りではその秘儀は毎日したほうがよさそうですの。
お兄様の成長をどうするかがネックでしたが、これでその心配もなくなったの。
アリサの想定外のことですの」
「この秘儀って勇者のお話には出てこないよな」
「秘儀っていうくらいだから秘密なんですの」
「お子様向けのお話には書きにくい秘儀だったしな」
「お兄様の力もなかなか書きにくい力ですの」
「そう言えばそうか。
まぁ後世のことは置いといてだな、アリサのほうはどんな感じなんだ?」
「いろいろ調べてみた感じでは、エルフ村で直行するのはやめたほうがいいかもなの」
「そうなんか?」
「大事にはならないとは思うけど、隣国ビレニアとの外交が少しだけきな臭いかもしれないの。
国境地帯の森を抜けてエルフ村へ直行するより、真っ当なルートでビレニアへ入国してから、あらためてエルフ村へ向かうのが無難そうなの」
「それだと結構な回り道になるんじゃ?」
「少なくとも半月以上は余分にかかると思うの。
でも、後々のことを考えるとこちらがオススメなの」
「わかった。
そのあたりのこともアリサの判断を尊重するよ」
「それと調査のほうが思ったより大変ですの。
旅の準備に関してはお兄様とヒルダさんの2人にまかせてもいい?」
「あー、なんでも指示してくれ」
「では、明日の午前中にリストアップしておきますの」
「あーよろしく頼む」
翌日からは、アリサの作ってくれたリストに従って、ヒルダと2人で旅の準備を優先して行った。
そして旅立ちの日、見送りは兄上とララウェルさん、それにゴアビレンス教会の司祭サリアさんの3人が見送りに来てくれた。
「気をつけて。
何かあればいつでも連絡してくれ」
兄上が明るくそう言った。
ララウェルさんは兄上の後ろで俺に軽く頭を下げた後にヒルダと見つめ合っている。
サリアさんは、何も言わず俺たちを優しげに見つめるだけだ。
「では、行ってまいります!」
東へ向けて俺たちは旅立った。
第4章完了
この小説も10万文字を超えたようです。
第4章完了と区切りもいいところで、評価してくださると嬉しく思います。
なお、明日に登場人物まとめを掲載し、明後日から第5章掲載予定です。
第5章の進捗がイマイチなので頑張らないと。