4-3 勇者の盾
兄上との剣術の稽古の汗を流すために、風呂にはいっていたところ、
「ただいまなの」
アリサが帰ってくるとともに、風呂へ飛び込んできた。
「お兄様、1人でお風呂はいってるとか、ひどいの!
今日から一緒に入ろうと思ってワクワクしてたの」
アリサはそう言いながら、もう脱いでいる。
「いや、この時間から一緒に風呂とかはいると、あとあとのことが……」
「その時はその時なの」
一戦終了……
「幸せなの」
「汗かいたから、また風呂行ってくる」
「アリサもいっしょに行くの」
「また、無限ループするから!」
「想像してた以上にお兄様はタフなの」
「もうガマンするの、やめたからな」
「そういえば、もう1日1回の1時間外出は要らないよね」
「あー、なくても問題ない」
アリサの手作りの(俺も手伝ったぞ)夕食を食べながら、今日の兄上との稽古のことをアリサに話す。
「さすがミカエル兄様なの」
「あー、剣術の方もサボらずに鍛えてたようだ」
「ううん、そっちはそうだと思ってたの。
アリサが感心したのは、シモン兄様の装備の話のほうなの」
「装備の話か」
「アリサも気になってて、ちょうど今日そのことについて調べてたの」
アリサは数枚の書き付けを開きながら、そう答えた。
「王立図書館で俺の装備って?」
「勇者シモンの装備がどうなったか、何か情報がないか調べてたの」
「あー、剣以外の装備か」
「うん、剣についても書かれてたの。
勇者シモン以外の誰にも動かすことができなかったので封印のところにそのまま残されてたようなの」
「まったく動かせないのか。
でも、アリサは重いけど少し持てたんじゃなかったっけ?」
「たぶん、アリサにもほんのちょっとだけ勇者の資質があったのか。
それとも勇者シモンの血をひいてるせいなのか。
そのどちらかのせいだと思うの」
「そういうことか。
で、他の装備についても何かわかったのか?」
「いろいろわかったの。
勇者シモンの装備は他に4つあったの。
1つは盾。
これは、賢者アリサが持っていったらしいの」
「賢者アリサって俺たちの……」
「そうなの。
ロレンス家のご先祖様なの」
「ということは、実家のどこかにその盾が?」
「それでよく家のことを思い出してみたの。
玄関はいった正面の壁に何があったか、お兄様覚えてます?」
「んー、玄関の正面……確か家紋があったんじゃ?」
「家紋って盾の形してますよね」
「あー、確かに盾の形だ」
「あれってレリーフだと思ってましたけど、もしかして盾そのものでは?」
「あんなわかりやすいところに……」
「わかりやすすぎて、盲点でしたの」
「ただその盾は性能的にはどうなんだろ?」
「調べた史料では、それなりの出来栄えの盾だけど、何の変哲もない盾となってましたの。
他の装備も同様だったようですの」
「それじゃあまり意味ないのでは?」
「ただ剣と同様に勇者がもって初めて意味を成す装備だったのかもしれないですの。
そのあたりは実際にお兄様が試してみればよさそうですの」
「確かに、その盾は簡単に入手できそうだな。
でもここまで来て、今度は故郷へ引き返しか」
「慌てるのは早いですの」