2-6 エルフ
「ホーリーフィールド」
アリサの詠唱によりアンデッドたちのまわりがキラキラ光り輝いた。
アンデッドたちの動きは目に見えて弱まる。
ゾンビの後ろから切りかかるとゾンビは2匹ともターゲットを俺に変更し、向かってきた。
もともと行動の遅いゾンビがホーリーフィールドの影響でさらに遅くなっているため、その攻撃は脅威とはならない。
すぐに2匹のゾンビを切り伏せ女性の加勢にはいる。
女性を囲んでいたスケルトンは4匹とも剣を持っている。
女性も余裕をもって攻撃速度の衰えたスケルトンの攻撃を杖で防いでいる。
俺もそのうちの1匹に攻撃することによりターゲットを変更することができた。
その時、アリサのターンアンデッドが1匹のスケルトンを殲滅に成功。
同時に、女性の杖の攻撃がスケルトンの肩を砕き剣を落とし、残るスケルトンも間もなく殲滅することができた。
「あなたがたのおかげで助かりましたわ」
((エルフだ))
初めて見るエルフの姿に俺たち2人は言葉に詰まった。
「私の顔に何かついていますか?
それともエルフにかける言葉はないとかいう差別主義者ですの?」
「あ、すみません。
あまりの美しさに言葉が出ませんでした」
これは本当だ。
長く風になびく金髪から出る長い耳こそエルフ独特のものだが、その美貌は今まで人間界で見たことのない美しさだった。
「え、え、美しいなんて、そんな」
エルフの女性は俺の言葉に顔を染めて、恥ずかしがっていた。
「名乗るのが遅れて失礼しました。
私は冒険者のシモン。こっちが同じく冒険者のアリサです」
「え、シモンとアリサ?
もしかして伝説の勇者様とか……
いえいえ、そんなわけはないよね。
伝説の勇者様は亡くなったってお祖母様言ってたし、アリサさんの方も人間ならもう生きているわけが……」
「私たちはただの冒険者で勇者とかは関係ありません。
ただ、もしかしてあなたの言っているのがこの森の封印に携わった勇者のことなら、私達の先祖らしいです。
あなたはいったいどういった方でしょうか?」
「失礼、ほとんど見知らない人間のことなのに、数少ない知っている名前をいきなり聞いて取り乱しました。
私はライナ。
勇者の供をした精霊使いユイナは私の祖母にあたります」
エルフが長生きって本当なんだな。600年間で2世代しか進んでないのか。
「伝説は本当だったんですね。
あれ?ということはもしかして私たちは血縁だったりするのかな?」
アリサの言うとおり、アリサの母と俺たちの先祖のミカエルが異母兄妹になるってことだ。
「そうなるのかな。
私にも1/4は人間の血が混ざっているらしい」
「ライナさんは、この森にどうして?」
アリサがライナさんに尋ねる。
「祖母が勇者とこの森で施した封印が解けたと申すので私がそれを確認しにきたのだ」
「もしかして、伝説に出てくる精霊使いユイナさんはまだご存命なんですか?」
「あー、さすがに歳で足腰は弱っているがまだ元気だぞ」
さすがにこれは驚いた。
「お祖母様はおいくつなんですの?」
「魔王討伐の頃は180歳と言ってたから、800歳にはまだなってないはずだけど、詳しくは知らないな。
エルフはあまり年齢を数える習慣はないのでな。
あ、私の年齢を聞くんじゃないぞ。
レディに対してそれはタブーだからな」
聞いた話から大まかに考えると、人間の10倍くらいで考えるといいのかな?
まぁ深く詮索するのはやめたほうがよさそうだ。
「話を戻して、封印はやはり解けてるんですのね」
「あー、そのようだ。
祖母が言うには、普通ならあと1000年は問題ない状態であった封印が強い力でいきなり壊されたようだ」
「近くの人に聞いた話では、夜中に雨も降ってないのに雷の落ちたような大きな音がしたそうです」
「このアンデッドたちはなんでしょうかね?
どうやら世界樹に向かっているようですが」
世界樹に向かっているとなると、不死の王が作り出したものとも違うのか。
「世界樹はもうすぐそこのはずですので、行って自分の目で確かめてみるのが確実でしょうね」
「ライナさん、ここで会ったのも天の導きかもしれません。
一緒に行動させてもらっていいですか?」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
3人で即席のパーティーを組んで、世界樹のもとへ向かうことにした。