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妹が最強すぎて冒険がぬるい  作者: 鳴嶋ゆん
第1章 冒険者としての出発
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1-14 アザミとタンポポ

 翌日、セクルア湖へのピクニック。

 じゃなく、ギルド依頼を受けてのヒアリス草採集へ向かった。

 安全なとはいえ、一応短刀だけは用意したものの、考えてみればアリサがいれば少々のことはどうにでもなりそうだ。

 リュックには、いつもの冒険用の道具以外に、お弁当と園芸用のスコップ2個と採集したヒアリス草保管用の袋を多めに詰め込んである。


 アリサも上機嫌でいつものように俺の左腕を抱えて歩いている。

 以前にセクルア湖へ行った時は護衛任務中であったため、まわりの景色を楽しむ余裕がなかったが、さすがにメジャーな観光地。道中もなかなか風光明媚で十分に楽しめる。


「お兄様、ちょっとこちらへ」

 道中何かを見つけたようで俺を引っ張っていく。


「このお花、お兄様知ってますか?」

 アリサの指差した先には、紫色のツボミの草が集まって生えていた。


「んー、まだツボミだから、わからないや。

 多分、ちゃんと咲いててもわからないと思うけど」


「これはアザミの花ですの。

 クキとか食べれると聞きますし、根を煎じて飲むと滋養強壮にいいらしいですけど、試したことはありませんの」


「そういえば、キクやアザミって昨日受付でサマンサに聞いてたよな。

 何かヒアリス草と関係あるのか?」

 昨日、気にかかっていたことを聞いてみる。


「さすがお兄様、いろいろチェックが鋭いですの。

 この花がヒアリス草採集の大きなポイントですの」


「ほーほー、ではアリサ先生の講義をお願い致します」


「えっへん、しっかり聞くようにするの」

 アリサがいろいろウンチクを語ってくれそうだ。


「ヒアリス草は小さな葉で地面すれすれに生えていてお花も咲かないのでとても見つけにくいの。

 普通に探したら1時間に1個見つけるのも大変だったの。

 でも、見つけたヒアリス草はどれも、お花の咲いている根元で見つけたの。

 お花の種類も季節も様々だったけど、後でそのお花を図書館で調べてみたところ、すべてキク科のお花でしたの。

 まだアリサの仮説だけど、ヒアリス草はキク科のお花に寄生する植物だと思うんですの。

 アザミもタンポポもキク科の植物ですの」


「ということは、キク科の花のまわりを丁寧に探していけば、ヒアリス草を見つけれるということ?」


「そのとおりですの。

 ギルド依頼の金額からして、お花の元で見つかるってことを知ってる冒険者はそこそこいそうだと思うの。

 でも、今までに見つけたことのあるお花のまわりくらいしか探せないから場所も限定されちゃうし、季節によっては見つけるのは大変なの。

でも、キク科のお花ってわかってれば探すところは無限に広がるの」


「そういうことなんだな。

さっそく探してみよう……とは言っても、俺はヒアリス草ってよく知らないんだよな」


「まずはアリサが見つけるの」


 アリサはあたりをキョロキョロして、それなりの目星をつけて2-3箇所駆けていったが、どちらも見つけれなかったようで、がっかりした様子。

 それでも、5分くらい経って、


「お兄様、見つけたの。こちらへいらして」

 アリサがしゃがんで指差しているところを見ると、アザミの葉の陰に、小さな茶色がかった緑の葉の草があった。


「これがヒアリス草なの。

 採集する時は根っこごと採るようにしたほうが、ちぎれたりしなくて安全ですの」


 アリサの正面にしゃがんで、アリサが採集する様子を見る。

 まぁどうでもいいけど、女の子が短いスカートのまま、しゃがんで作業しないほうがいいと思う。


「アリサのおパンツは帰ってからいくらでも見ればいいの」


 視線がしっかりばれているようだった。


「ヒアリス草を探す時のポイントとしてはちょっと曖昧だけど、いくぶんクキが細めで、ツボミの紫色が薄めのアザミの根元を探すといいと思うの。

 ヒアリス草に寄生されてそんな感じになってることが多いの」


 せっかくなのでそのままアザミからヒアリス草を探すことにした。

 アザミの葉は地面に放射状に広がっているため、いちいちその葉をどかさないと探せないのが面倒なところ。

 30分くらいかけて、やっと俺は1個目のヒアリス草を採集することができた。

 自分で見つけると、なかなか嬉しいものだ。

 その間にアリサは4個のヒアリス草を見つけていたようだ。


 まだ探し漏れはたくさんあるだろうが、ここでの捜索はこのあたりにしてセクルア湖に向かうことにしよう。

 先程までは時間も早めだったこともあり、人も閑散としていた街道であったが、道草をしていたためそれなりに賑わってきている。

 さすが行楽シーズン、ほとんどがセクルア湖への行楽客だろう。

 まわりの速度はとってもゆっくりである。

 普段、冒険者としての行動と比べると、ちょっとのんびりしすぎた感じもするが、急ぐ旅でもなし。

 のんびり行きましょうかって感じでアリサを見ると、アリサは何も言わないのににっこり微笑んでくれた。

 意思が通じたのかどうかは知らないけど、まわりに溶け込んで2人腕を組んで道中を楽しむことにした。


 セクルア湖に到着。

 相談の結果、まずはお弁当にすることにした。

 ただ、お店で買ってきたパンと惣菜だけってのはやはり、こういうところではさびしいものがある。

 普段の冒険では気にもしなかったが。


 お弁当を食べ終わって、探索に入る前に少し湖のあたりを散策。

 湖の一角には屋台が数軒並んでいる。

 お弁当が少し味気なかったこともあり、どうしても気になる存在だ。

 アリサもこちらを横目でチラチラ見ているし。


「何か食べちゃおうか。

 アリサはどれがいい?」


「アリサは鳥肉の串で焼いたのが食べたいですの」


 木の串に刺さった鳥肉にタレをつけて焼いた料理だ。

 鳥肉の種類はお店によって違ってるので、味に当たりハズレがあるようだが。

 さっそく2人で1本ずつ買って立ち食い。

 ここの焼き鳥は当たりのようだった。


 美味しいものを食べると労働意欲を増してくる。

 午後はせっせとヒアリス草の採集に励もう。


「タンポポの場合も、アザミと同様にクキの細めのものを探すといいですの。

 ただ、お花の色はあまり変わらない感じなので少し花びらが小さめのものを目安にするといいと思いますの」


 視界が黄色に染まってしまうような、あたり一面のタンポポの丘でヒアリス草の捜索。

 早めに咲いた分なのか綿毛をつけているものも幾分まざっている。


 タンポポもアザミ同様に葉が地面すれすれに放射状に生えているので探すのは大変だ。

 それでもアリサのアドバイスに従って探していると1つまた1つと着実にヒアリス草をみつけていくことができた。

 2時間くらいかけて基準となる20個のヒアリス草が揃った。


 アリサの様子を尋ねてみると、

「58個のようですの。

 ところで、ギルド依頼の超過分はどういう扱いになりますの?」


「超過分も20個単位で同じ金額で引き取ってくれるはずだ。

 ただしギルドポイントについては同じ依頼については1ヶ月以上間隔をおかないともらえない規則だな」


「このあたりで終わりにします?」


「ならキリがいいようにあと2個見つけたら終わりにしようか」


「わかりましたの」


 すぐに2人とも1個ずつ見つけることができたので、ヒアリス草捜索はこれで打ち切った。


「ヒアリス草採集依頼、作業終了だ」


「お疲れ様でしたの」


 まだ引き返すには早い時間であったため、もう2時間ほどセクルア湖のピクニックを楽しむことができた。

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