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妹が最強すぎて冒険がぬるい  作者: 鳴嶋ゆん
第1章 冒険者としての出発
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1-11 武闘家認定試験

 その頃の冒険者ギルド。

 職員たちは賢者認定試験の結果を知って、騒ぎになっていた。

「賢者ランクSSなんて、世界中にも数人しかいないはずだが、新人に与えちゃってもいいものなのか?」


 魔法系担当主任ファルは、

「少なくとも魔力の絶対値においては他のどのSS賢者と比べても遜色ない数値のはずです。

 コントロールも完璧でしたし、無詠唱のおまけつきでしたから。

 あとは如何にそれを実戦で使えるかということでしょうけど、そこを測るのはギルド試験官の役割ではないはずです」


「なら午後の試験ではそのあたりを中心に見てみようじゃないか。

 腕が鳴るな」

 午前中、ギルド長とともに王都から来ていた客との打ち合わせをしていた前衛系試験担当官ギリウムが、楽しそうにつぶやく。


「おいおい、もしやギリウムお前自らが相手するつもりか?

 むこうは可愛いお嬢ちゃんだぞ」

「いつものように若いものに手合わせさせてやれば十分だろう。

 特別扱いすのはどうかと思うぞ」

 周りからギリウムに非難めいた声がかかる。


「賢者Aの申請でSS認定のお嬢ちゃんだ。

 武闘家Aの申請でSSの力を持っていると考えるほうが自然だろうよ」

 ギリウムは我関せずという態度でニヤニヤ笑っている。


「面白そうな話ですね。

 我々も混ぜてもらうわけにはいきませんか?」

 王都から来ていたという男女が話に加わり、ギリウムと試験方法を楽しそうに話し始めるのだった。


 シモンとアリサの2人が受付に姿を見せると、さっそくサマンサから声がかかる。

「皆様お待ちですよ、さっそく奥の武闘場へお願いします」


 武闘場には大勢の見物人が詰めかけている。

 どうやら午前中の賢者試験のことが知られ、話題になっているようだ。


「よく来たな、俺が前衛の試験を担当しているギリウムだ」

 ギリウムが俺たちの前に進み出て自己紹介をする。


「アリサです。よろしくお願いします」


「さっそくだが試験方法を説明する。

 普通なら誰か若いものに立ち会わせるのだが、どうやらお嬢ちゃんの相手になれそうなやつがいない。

 ってことで、俺が立ち会うことにしたんだが、一撃でやられてしまっちゃ判断のつけようがない。

 だから、特別ルールってことでお嬢ちゃんの攻撃は禁止させてもらう。

 俺がよしと言うまで、攻撃を防ぐなり避けるなりし続けてもらうってわけだ。

 おっと言い忘れていた。

 いろいろ補助呪文なども使えるようだが、この試験では一切の魔法は禁止だ」

 なかなか、えげつない試験内容だが、こちらから文句が言えるものでもない。


「んー少し気になる点もありますが、了解しました」

 アリサが神妙に答える。


「武器や盾、防具はそこにあるものを好きに使っていい。

 準備できたらいつでも声をかけな」

 ギリウムは棍を構え準備完了のようだ。


 アリサは武器を軽く眺めていたが何もとらずに

「ここままで始めさせていただきます」

 素手のまま、ギリウムからの間合いを遠めにとった。


「ほー、素手か。

 素手のお嬢ちゃんに武器を持って攻撃とか完全に悪役だが、しかたないな。

 早速行くぞ」


 ギリウムが間合いを詰めるが、アリサはそれより早い動きで一定以上の間合いを取り続ける。

 狭い武闘場ではあるが、円を描くような動きを基本に、フェイントを織り交ぜたギリウムの攻めから逃げ続ける。


「やはりこんな展開になっちまうか。

 じゃ第2段階と行くか」

 ギリウムの言葉とともに1人の男が武闘場に乱入する。

 まわりの野次馬はざわついたが、アリサはこのことを予想していたのか慌てた様子はない。

 武闘場の隅から棍を手にしてあらためて構えをとった。


「棍を持たせてもギリウムよりさまになってるんじゃないか?」

 乱入した男は片手剣と盾を構えて、ギリウムの横に並ぶ。

 2人して間合いを詰めるが、死角がなくなったため、アリサは逃げる場所をなくした。


 先に仕掛けたのはギリウムからだった。

 左方から叩き込んだ棍の一撃をアリサは上から叩き落とし、ギリウムの構えを崩し後方に移動することにより、剣の男の死角にはいる。

 剣の男はすかさず回り込んで上段から剣を振るうが、アリサは棍で受け止める。

 ギリウムは体勢を立て直し棍による突きを試みるが、アリサの蹴りにより防がれる。

 決して2人の攻撃が鈍いわけではないがアリサの舞うような棍技にすべての攻撃が防がれる。


「最終段階いくぞ」

 ギリウムの言葉で、軽装の女が武闘場に乱入する。

 いくらなんでもこれはひどすぎるんじゃないか。


 女は特に武器を持ってないように見受けられたが、それは次の女の動作で裏切られた。

 壁に向かって女の手から放たれたものは礫だった。

 アリサの表情が険しくなる。


 2人の男たちの攻撃が再開される。

 そして、アリサの防御動作にあわせて女からの礫が飛ぶ。

 1発目の礫は棍で弾き、2発目の礫は体勢を崩しながらも避けた。

 だが誰の目から見ても余裕はもうない。


 アリサは体勢を立て直すと、次の攻撃が来る前に自分の棍を捨てたかと思った瞬間、ギリウムの後ろにまわり、後方からギリウムの棍を掴み、動きを封じた。

 体勢的にギリウムは跳ね除けれそうに見えるのだが、アリサの細い腕からの想像できない腕力で完全に動きを封じられている。


 剣の男は回り込んで攻撃しようとするがギリウムを盾にすることで攻撃は防がれてしまう。

 そのまま退路を経つように自ら壁の隅を背にしたため、アリサの小さい体はギリウムで隠れてしまい礫の攻撃できる箇所はない。


「そこまでだ」

 苦しそうなギリウムの声が響いた。

 アリサは手を離しギリウムを解放する。


「私の反則負けだったりする?」

 アリサが少し申し訳なさそうにギリウムに聞く。


「いやいや、攻撃は禁止といったが、あれは十分に防御行動であろう。

 お2人の採点はいかがかな?」

 ギリウムから乱入した2人に問いかける。


「その前に自己紹介させてもらうよ。

 僕はロッキーで、彼女はミィア。2人は王都で冒険者をしている。

 今日は午前中に仕事の関係でこちらのギルドにお邪魔していたんだが、君のことを聞いて試験に混ぜてもらったんだ」

 剣の男ロッキーから自己紹介があった。


「これでも私は盗賊Sランク、こっちの優男も戦士Sランクの認定持ちなんだけどね。

 Sランク3人の攻撃を防ぎきったんだから、まぁどこからも文句でないと思うわよ」

 礫の女盗賊ミィアが続ける。


「僕としては判断力を高く評価したいな。

 最初は素手で逃げ続け、続いて棍で防御し、最後は敵の1人を利用してとか、瞬時になかなか判断できるもんじゃない。

 実戦でも十分通用するな」

 ロッキーからも最高の評価が返ってくる。


「そういうことだな。

 誰もが文句なしの武闘家SSランク認定だ」

 ギリウムが言葉を締める。


「素晴らしかったよ、いつか一緒に戦いたいものだ」

 ロッキーからアリサへ握手を求める。


「そういうことはお兄様にお願いしますの」

 群衆の中に紛れていた俺のところへアリサは駆け戻ってきた。

 いや、この場面に俺を引っ張り出されても、場違い感いっぱいだから困るんだが。

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