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馬鹿野郎の華麗なる日々  作者: ギャバン
幼少編
5/6

親も親なら子も子

セシル奥様による、一時間一本勝負のセメントデスマッチ(場外乱闘有り)も終わり、チャンピオンベルトよろしく俺を掲げて宣言して下さった。


「ティナは私の大親友よ!ティナの子供は私の子供も同然です!よって、この子は私が育てます!」


ありがてぇ…これで衣・食・住心配をしなくて済む。心の中で称賛を贈りたい。ほら、他の使用人さん達も困惑しながら拍手してる。


と、そんな使用人達の中から、初老の貫禄のある執事さんが、セシルさんの前に進み出てきた。


「奥様。その赤子の事で少々申し上げたい事がございます」


「何か?貴方は反対なのかしらロザン?」


セシルさんは気丈な眼差しを執事、ロザンさんに向ける。


ロザンさんは首を横に振り、にこやかに微笑んだ。


「いいえ、滅相もございません。ティナの事は私もよく存じております」


「……っておい!お前は反対する立場じゃないのかロザン!?」


あ、阿保が復活した。早くない?全治2ヶ月の重症だと思っていたのだけども?


「……ッチ!相も変わらず復活が早いですな?」


「舌打ち!?今、使用人に舌打ちされたけど!?」


「回復魔法が巧みなようで…ああ、そういえば、アチラの方も巧みでお早いようですな?」


「しかも嫌味まで重ねてきたよ!?俺主人だよね!?」


どの意味で早いかは考えないでおいてやろう。武士の情けだ。というか、回復魔法なんてあるんだ?まあ、あるか。剣と魔法の世界とか言ってたし。


「まあ、こんなでも一応、冒険爵とはいえ貴族の端くれでございます。奥様のお気持ちも大変理解できるのですが、この赤子を嫡男とするには少々無理がございます」


まあ、そうだよな。セシルさんとロックは見た感じヒューマンとかいわれる種族なのだろう。そして俺はハーフドワーフ。半分はロックの血を引いているとしても、セシルさんの血は引いていない。この世界の冠婚葬祭はわからないが、セシルさんが正妻という立場なら、こちらの世界でいえば、俺は私生児という扱いになるだろう。継承権云々より、体裁が悪い。


「……ならば、貴方はどうすれば良いと思うのかしらロザン?」


「そうですな。私としても、ティナの忘れ形見を見捨てるなど毛ほども考えておりません。ですからこの、粗末で珍妙なお貴族様。略して粗珍貴族に認知をしてもらい、クロウズ家の末席に籍を入れればよろしいかと。貴族に愛人や隠し子など、珍しくはありませんから」


「……そうね。この粗雑で珍奇な貴族、略して粗珍貴族に了承を得てもらいましょう」


「わざとか?それはわざとやっているのか?俺は決して粗末じゃないぞ!?剛剣だぞ!?」


誰もそんな事は聞いてないだろ?多分。後、了承云々とか言ってるけど、強制なんだろうな。


「……ほら、早く頷きなさいな。遅いだけなら犬や猫にも出来ますわよ?」


「……奥様、それは犬や猫に失礼でございます。動物は発情期以外、そこまで盛りはつきませんが、万年発情期のこの方は、恐らくは動物以下と思われますな」


「そうね…ごめんなさいね、ワンちゃん猫ちゃん」


「素直に謝罪するそのお姿。大変ご立派でごさいます」


……ええと、自業自得とはいえ、流石にロックが可哀想になってきたぞ?その証拠に、顔真っ赤にして身体が小刻みに震えてるよ?


「……ちくしょおおおおおおっ!俺は万年発情期じゃねぇええええっ!ただ常にムラムラしているだけだぁああああぁあっ!」


泣きながら走ってこの場から消えたロック。っていうか、それってつまり万年発情期って事じゃないの?



こうして、俺、坂下雄一は、ダン=クロウズとして、この世界で生きていく事となった。




どうも、坂下雄一改め、ダン=クロウズです。


私は今、作りが丈夫そうなベビーベッドの上で寝かされております。


私の隣には、もう一人赤ん坊がおりまして、恐らくはロックとセシルさんの子供だと思われます。


パッチリした瞳にあどけないながらも、将来は美形になること必至な顔の輪郭をしておられる。男なら美男子。女なら美女が確定的です。羨ましい限りですな。


そしてですね、もう一つ気になることがありまして……。


「…………」


可憐な雰囲気を纏った銀髪が印象的な美少女が、俺を食い入るように黙って見つめている。


身に付けている服の上等さから、恐らくこの女の子も二人の娘なのであろう。


「……わたくしはローザ。あなたのおなまえはなんておっしゃるの?」


舌足らずな喋りで話しかけてくる少女。これはご丁寧にどうも、だが悲しいかな、赤ん坊なので言葉を喋る事は出来ないのですよお嬢さん。


「…なのられたらなのりかえすのがれいぎですわよ?」


だから赤ん坊だから喋れないって。まあ、これくらい幼いとまだわからないか?


「………」


おやおや?何やら纏っている気配が不穏ですけど?その小さな手で、俺のもっと小さい手を握ってどうするつもりかな?


「れいぎがなってないこはおしおきですわ」


そう呟くやいなや、え、この子、本当に子供?って思うぐらいの強い力で俺の手をギリギリッと締め付けてきた。痛いんですけど!?ちょっと、どういう事なの?意味がわからない。


「あー…ぶぅー」


そして、俺の隣で大人しく寝ていた赤ん坊が、空いている方の俺の腕を両足に挟みこんだ。いつの間に?え、その体勢ってまさかの?


「ぶぅー」


腕ひしぎ十字固め!?ちょっとちょっ痛い!痛い痛い痛い!止めて!折れる!後、もう一人のお嬢さん?そのままだと潰れるから!ほら!手の血色が紫色になってる!駄目な色になってるから!


ボキッ!グシャッ!


ぎにゃあああッ!?折れた!潰れた!やべえよおい!?片方の腕が曲がっちゃ駄目な方向を向いてるし、もう片方に至っては感覚がなくなってますけど?どうしようこれ?


「あ……」


握り潰した方のお嬢さんは、こんな事を想定していなかったのか、ビックリした表情をしている。いや、俺の方がビックリだからね?そこのとこわかってる?君の義理の弟は今、両手の骨を折られたんだよ?


って、冷静に考えている場合じゃないな。どうしよう……あーそういえば、回復魔法ってやつがあったな?どう使うのだろう?治るイメージをするのかな?


「おかあさまたいへんですわ!このこのてがつぶれてしまいましたわ!」


少女ローザ、慌てて母親に助けを求める。報告は正確にね?君が潰したんだよ?……ものは試しだな。治るイメージ…治る。骨がくっつく感じ…。


すると、俺の身体全体が光に包まれて、両手の痛みが薄れていき、手の感覚が戻ってきた。


《回復魔法 序を習得しました》


やったぜ。習得したぜ。この家で暮らすには必須スキルっぽいスキルをゲットしたぜ。


「こちらですわ!」


「どういう事なのローザ?潰れたって?」


ローザお嬢さんがセシルさんを連れて現れた。そして、俺の手を取り、


「このてですわ!」


そう言った瞬間、俺の手をもう一回握り潰した。だから痛いっての!


「キャァァァッ!?なんて事をするのローザ!?」




その後、俺は執事のロザンさんに回復魔法をかけてもらった。そしてローザはセシルさんに抱えられ、命の尊さと赤ん坊について説教をされながら、お尻叩きのお仕置きを受ける事となった。



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