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オービタルエリス  作者: jukaito
第4章 ケラウノスパイデス・オラージュ

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第58話 領主アランツィードの死

 一度部屋を出て、ホテルのレストランで食事をとった。

 昨晩よりも人が少ないおかげか、注文しても待たされることは無かった。マイナはお金の心配をしていたが、ダイチやフルートはいくらか持たせてもらっているし、デランは留学前の蓄えがあるということなので問題ないと答えた。


「あれ、私だけ無一文!?」


 などと、周囲を気にせず騒ぎだすので目立った。


(騒いだら警官、来るかな?)


 ダイチは少しだけ不安だったが、来る気配はない。どうやら、今は火星人以外はマークしていないようだ。

 食事を終えると、再び部屋に戻って一休みする。

 その間、イクミは一度も連絡してこなかった。つまり、まだ捕まっていないということだ。


(エリスとミリアは無事だろうか?)


 こちらはこちらで戻ってくる気配が無い。


「すぐ解放されるって言ってたじゃないか」


 ぼやかずにはいられない。

 あの時、もしミリアの言うことをきかずに警官を倒して逃げていたら……そうすれば、エリスとミリアと別れることは無かった。そうすることで警官から追われる身になるが、二人が無事で傍にいるなら大丈夫だとそう思える。

 それがいないとなると不安は増すばかりだ。


「ダイチよ、不安になるのはわかるが、少し落ち着いたらどうじゃ?」

「ああ、そうだな」


 深呼吸してみる。

 それで一瞬落ち着くが、すぐにまた不安が押し寄せてくる。


(エリス、イクミ、ミリアがいないだけでこんなに不安になるなんて……)


 それだけ三人に頼り切っていたのだと思い知る。

 思えば地球を出て、火星に来てからずっと三人に助けられてばっかりだ。


(それが嫌だから、強くなろうと決めたのにな)


 そこまで考えて自嘲する。

 自分の心の弱さ。少しは強くなったと思ったのに全然変わっていないじゃないか。


――そのかわり、もし捕まったら絶対助けに来てくれんか?


 イクミはそう言っていた。

 あれは自分を頼りにしてくれていることじゃないのか。それなら、応えなくちゃいけない。


「よし、港へ行こう」


 ダイチは提案する。


「港ならエアカーで一時間あれば着くぞ。あんまり早めに出歩くのは危ないんじゃないか?」

「いや、この分だと時間が経つにつれて検問は厳しくなりそうだ。何しろ片っ端だからな。どんどんきつくしないと国中の火星人は見つけられない」

「まあ、そりゃそうだな。というより、無茶苦茶もいいとこだぜ、国中の火星人を連行するなんてよ」

「だけど実際にやろうとしてるわよ、あいつら」

「ああ、だからイクミとはやいとこ、合流したいし、検問が厳しくなって港に辿り着けなかったら元も子もねえ」

「そういうことか」


 デランは納得する。


「善は急げということじゃな。そうとなればすぐ行くべきじゃな」

「しょうがないわね……」


 マイナはため息をつく。


「ま、じっとしてられないのも本音だけど」


 こうして、四人はホテルを出て、昨日イクミがどこからか用意していたエアカーを使う。

 運転はダイチも昨日ちょっとやってみたから出来ないことは無いが、マイナに任せた。


ブオオオオオオオオオン!!


 外は嵐になっていたため、とてもダイチには運転する自信が無かったのが大きい。


「うおッ!?」


 デランは思わず声を上げるほどの速度を出して、道路を駆け抜ける。


「これなら、思ったより早く着けそうだな」

「そうでもないみたいよ」


 マイナはすぐにハンドルを切って、勢いよく左折する。


「うお、な、なんだ!?」


 ダイチはその勢いに負けて仰け反る。


「検問よ、時間とられそうだからかわした」

「ああ、いい判断だ」


 今、ダイチ達の中に火星人は無い。

 容疑者が火星人だというのなら、問題なく検問を通れるだろう。

 だけど、検問に出張っている連中が、ホテルにやってきたあの高圧的な警官みたいなやつだったら、と思うと出来れば会いたくない。

 そういう奴等は何かにつけて言いがかりをしてきて、連行するかもしれない。そういう危険は避けたい。


「とお!」


 マイナはまた勢いよく左折する。

 そこで、ダイチはある不安がよぎる。


「あ~、マイナ?」

「どうしたの?」

「これ、ちゃんと港に向かってるよな?」

「あ……」


 マイナは硬直する。


「おい」

「だ、大丈夫よ! ちゃちゃ、ちゃんとナビがあるんだから!!」

「だったら、最初から使えよ!」


 どうにも不安になってきた。

 港へまっすぐ向かう、というわけにはいかないようだ。




オアアァァァァァァァァァァァァァッ!!


 悲鳴が城中に雷鳴のように轟いた。


「ディバルド卿、今のは一体!?」

「急ぐぞ!」


 近衛騎士団の若き副団長ガグズは問いかけるが、ディバルドは無視して駆け抜けた。

 暴風を吹き飛ばす大砲のごとき勢いだ。それだけの緊急事態だということを物語っている。

 それも当然か。

 何しろ、悲鳴の主はこの城の姫ファウナだからだ。そして、悲鳴があったのはアランの自室だ。


「失礼!」


 ディバルドは一言をそう言ってから、アランの部屋へ踏み込む。ガグズもそれに続く。


「――!」


 そこで信じられない光景を目にした。


「ファウナ様!? アランツィード様!?」


 部屋にいたのはファウナで、呆然と立ち尽くしていた。彼女がそこにいること自体、驚くことではない。問題はさらにその奥にいたアランであった。


「これは一体……!?」


 ガグズは先に入ったディバルドへ問いかける。


「――殺されている」


 ディバルドが発した一言にガグズは絶句した。

 アランは自ら流した血だまりに沈んでいる。炎で焼かれたかのように身体は焼け焦げ、刀か槍か何かで胸を貫かれ、明らかに致死量の出血をしている。

 一国の領主とは思えない無残さに目を覆いたくなるが、二人は騎士としての冷静な判断から確実にアランの死を感じ取っていた。


「何故……! 一体、何故……!?」


 警備は万全だったはずだ。

 領主の命を狙う不敬な輩を一歩たりとも踏み入れさせないために、近衛騎士団は城に常駐している。今夜、いや今この瞬間だって彼らは職務を全うしている。

 誰にも気づかれず侵入し、アランツィード氏を殺害する。そんなこと不可能なはずだ。


――なのに、


「何故アランツィード様は殺されたぁぁぁぁぁッ!?」


 ガグズは叫ぶ。


「お、兄様……?」


 その叫びで意識を取り戻したか、ファウナはアランのもとへ歩み寄る。


「姫様!? 姫様は無事だったのですね」

「お兄様、は?」


 ファウナは問いかけるが、ガグズは答えられない。

 あなたのお兄様は何者かに殺されました。なんて言えるはずがない。


「………………」


 そのまま、ファウナはアランを見やる。


「お、兄様……?」


 呼びかける。

 返事をしてほしい。無事だということを教えて欲しい。そんな願いを込めた問いかけだ。


「お兄様……?」


 もう一度呼びかける。

 そんなはずはない。どうか返事をしてください。


「お兄様!」


 今度は強く呼びかける。

 そうすれば、応えてくれるはずだ。

 強くて優しいあの兄が自分の呼びかけに応えない、そんなはずはない。


「お兄様! お兄様! お兄様ぁぁぁぁッ!!」


 力の叫び、呼びかける。

 届く。届くはずだ。これだけ声を上げれば、兄は起きてくれるはずだ。

 そうだ。きっともっと叫べば兄は応える。応えてくれるはずだ。


 そうじゃなかったら……

 応えてくれなかったら……

 起きてこなかったら……


 いくら呼び掛けても、一向に応えてくれず、絶望に染まる。


「姫様、アランツィード様は……」


 ディバルドが沈痛な面持ちで言ってくる。

 その後ろには異常事態に気づいて、駆け付けてきた騎士、侍女、執事達が集まっている。だが、ファウナにはそんなことどうでもよかった。


「ディバルド、早く医者を!!」


 ファウナはディバルドへ呼びかける。


「何をしているのですか! 一刻も早く医者を呼ぶのです!! まだ急げば間に合うはずです、お兄様を絶対に救うのです!!」

「姫様!!」

「――!」


 ディバルドに一喝され、ファウナはたじろぐ。


「もう、手遅れです」


 その直後に穏やかに一言そう告げる。

 あまりにも沈痛な面持ちだったため、それが事実だと嫌がおうにも促される。


「そんな……うそ、ですよね……?


――嘘だと言ってください!!」


 目に溢れるほどの雫をため、一気に流れ落ちる。

 認めたくない。しかし、現実は容赦なく受け入れることを強要してくる。


――お兄様は死んだのです、認めなさい。


「うく……くぅ……」


 美しいネグリジェが涙で濡れていき、悲しみの色に染まりあがっていく。

 優美な顔立ちも悲しみに耐えきれなくなり、歪んでいく。

 その場にいた誰もがそのいたたまれない姿に正視することができず、顔を背ける。


「お兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 再び城にファウナの声が雷鳴のように響き渡る。

 今度はあまりの悲しみによる慟哭であった。




 城の会議室にクリュメゾンの領主を支える側近ともいうべき面々が集まった。

 まだ夜は明けていない。

 領主の突然の死、それも何者かの手による暗殺ともなれば国を揺るがす一大事である。


「まさか、アランツィード様が暗殺されるなど……」

「想定外の事態だ」

「警備は? 近衛騎士団は何をしていたのですか?」


 誰からともなく責任の所在を近衛騎士団へ向けてくる。


「申し訳ありません」


 それに対して騎士団長であるディバルドが矢面に立つ。


「万全の警備を敷いておりましたが、出し抜かれてしまいました」


 誠意のこもった謝罪であった。しかし、その気持ちの中に責任感や罪悪感、悔しさも含まれているのだろうと推察する者もいた。


「ディバルド卿ほどの騎士が出し抜かれたとあれば、どうしようもないことです」


 防衛大臣であるヴォルフ・ガラールは庇う。


「大事なのはこれからどうするかです」


 官房長官ギムエル・スターファは呼びかける。

 しかし、みなどうしたらいいかわからないというのが実情だ。


「犯人は……?」


 誰からともなく誰もが疑問に思っていたことを口にする。


「不明です。ですが、目下捜索中です」


 ディバルドは簡潔に答える。


「目星はついているのですか?」


 ギムエルは問いかける。


「いえ……まったくわかっていません」

「それでは探しようがないではないか!」


 クリュメゾンの軍事を取り仕切る総軍事長官オーギス・アルシャールは睨みつける。


「ディバルド卿よ、何でもいいのだ。手がかりさえあれば、我がクリュメゾン軍の総力を挙げて必ずや犯人を捕らえて見せよう!」


 啖呵を切って、ディバルドへ迫る。


「申し訳ない、アルシャール閣下」


 しかし、それにディバルドは応えることはできなかった。


「く、手がかりがないのであれば捜索のしようがない! だが、領主殺しの犯人、何としてでも」

「犯人の目星すらついてないのですか?」

「どうせ、西のジェマリヌフ家に決まっている」

「いや、北のグラジスト家に違いない! 奴は四国の中でもっとも欲深だからな!」


 二人の大臣が犯人の容疑をめぐって言い争いが始まる。


「お二人とも、おやめください」


 それをディバルドが仲裁に入る。


「犯人が何者か検討もついておりません。然るに下手に容疑をかけると国を滅ぼされます」


 ディバルドの「滅ぼされます」の一言に言い知れぬ迫力を感じ二人は押し黙る。


「………………」


 一同は押し黙ってしまう。


「……ファウナ様は?」


 また誰からともなく疑問を口にする。


「ファウナ様はどうなさっているのですか?」

「アラツィード様亡き今、ファウナ様こそ現領主ではないか」

「ファウナ様が取り仕切るべきではないのか?」


 この場の重鎮達の行き場の無い戸惑いがファウナへ向けられる。

 成り行きを見守っていたガグズはゾッとする。

 ディバルドの身体から発せられるのは、静かな怒気だ。ガグズやアルシャールのように武力を持つヒトだけが察することが出来るほどだが、本来ディバルドはそういった感情の波風を立てるような男ではない。

 自分が感じ取れるほどの怒りが出ている。

 それは、兄を失い悲しみに暮れる妹に責任を押し付けようとする者達だ。


(……もしかしたら、ディバルド様はこの場で彼らを斬り捨ててしまうのでは……?)


 そんな惨劇を思い浮かべて、恐怖にかられる。


「皆様……」


 ディバルドは厳かな口調で告げる。


「ファウナ様は今敬愛する兄君を亡くし、悲しみに暮れています。

ですが、ファウナ様であれば必ずやその悲しみを乗り越え、我等を指揮してくださる。今しばし猶予を」

「そんな時間があると思うか?」


 アルシャールは鋭い目つきで、残酷に言い放つ。


「卿ならばご存知の通り、四国の領主達がみなそれぞれ我が国を狙っている。

アランツィード様がお亡くなりになったのであれば、彼らは嬉々として占領しにやってくる。ファウナ様が立ち上がるのを待っていては手遅れになるかもしれん」

「そうです。そうなってからでは遅いのです」


 アルシャールの進言に、ヴォルフが賛同する。


「ですから、我々だけで判断を下さねばなりません。この国を守るために!」

「近衛騎士団長のお前としては、領主の名なくして動けぬのはわかっている」


 アルシャールは同情を向けつつも、力強く自分の意思を告げる。


「だが、事は一刻を争う。今日、我が軍はアランツィード様より賜ったジェアン・リトスを活用し、防衛網を敷く。それがこの国を守るためになるのだからな」

「アルシャール閣下、そのような勝手は許されませぬ」

「許されないとあればファウナ様が立ち上がってから処断下せばよかろう」


 立ち上がってから。その言葉には皮肉が込められていること、ひいては侮辱の意思があることを場にいるヒト達は感じ取った。

 何故なら、ファウナが悲しみを乗り越え立ち上がるのはいつになるか見通しは立っていない。それよりも先にアルシャールが四国からの侵略に防衛を果たして、自らの正しさを証明する方が遥かに可能性が高いと考えられる。

 それは、ファウナにこの国を守る領主は務まらないと告げる侮辱にも等しい。


「………………」

「………………」


 ディバルドとアルシャールは睨み合う。

 この国で最も強い力を持つ者二人の対立はこの空間に言い知れぬ緊迫感をもたらす。

 一方は領主となる人物を信じ、一方は国を守る最善の策を提案する。

 どちらかが正しいか、若いガグズには判断がつかない。

 ただこの場の雰囲気からして、アルシャールの意見の方が優勢に見える。いくら領主の妹とはいえ、ファウナはその領主アランツィードの庇護のもと、城で平穏に過ごしていた。

 クリュメゾンの姫というに相応しい気品と品位を備えているが、それと今この混乱を納める能力は別だ。贔屓目に見てもガグズにはそういった能力をファウナが持ち合わせているとは思えなかった。

 その能力は兄アランツィードが一手に引き受けているように感じていた。


(前領主様が亡くなった時以上の存亡の危機……ファウナ様にはとても……)


 そこまで考えて、ガグズは密かにアルシャールを支持した。しかし、敬愛する師でもあり、上官でもあるディバルドも信じるべきだとも思っている。

 領主に付き従い、守護し、正しい道を共に歩む。それが近衛騎士の本分なのだから。


「ディバルド卿よ。俺は俺のやり方でこの国を守らせてもらうぞ」


 そう告げて、アルシャールは周囲を見回して言い放つ。


「反論がある者は存分に異を唱えて構わない。俺は領主の命と国の大義のためにのみ動く! 領主が不在であれば国を守る大義に沿って戦うだけだ!」


「――ならば、領主の命に従っていただきます!!」


「!!」


 突然のファウナの声が雷鳴のように轟く。

 それによって、この場にいた誰もが文字通り雷に撃たれたかのように震え上がる。


カツカツカツカツ


 静まり返った一同の前へファウナの足音だけが妙に甲高く聞こえる。我こそが領主であると、その威光を誇示するかのように。


「聞こえませんでしたか。領主の命に従っていただきます。勝手は許しません」


 凛とした声で告げる。


「ハッ!」


 気圧されたアルシャールは一礼する。


(これが、ファウナ様……!?)


 ガグズはそのあまりの変わりように呆然とする。

 城で優雅に過ごし、箱にしまわれた宝石のような美しくも、控えめで奥ゆかしい姫であったファウナと同じヒトとは思えない。


「ファウナ様、今あなたは自分を領主とおっしゃいましたか?」


 ギムエルは確認の問いを掛ける。


「ええ。緊急事態ですので、略式ですがこのファウナ・テウスパールが第四区中央国家都市クリュメゾン領主を拝命致します」


 その宣言に一同騒然となる。


「ディバルド!」

「ハッ!」

「ガグズ!」

「――ハッ!」


 ファウナの号令に、ガグズは一瞬遅れて返事する。


「これより、近衛騎士団は私の配下です」

「「御意に!」」


 ディバルドとガグズの二人は敬礼する。


「軍の指揮権も私が預かります! アルシャール、独断は許しません!」

「……御意に」


 アルシャールも同じように敬礼する。

 彼は独断で動こうとしていたにも関わらず、領主の命に大人しく従おうとしていることに違和感を感じる者が中にいた。


――俺は領主の命と国の大義のためにのみ動く!


 だが彼はそう宣言した。その宣言に従っているだけのこと。そう考えるとアルシャールの信念は、全て国と領主の為と一貫している。


「このオーギス・アルシャール以下、クリュメゾン軍の指揮権は全てファウナ様に!」

「ええ! それでは領主として最初の命令を下します」


 そして、ファウナは雷を落とすかのごとく強く、全身の力を込め告げる。


「――火星人を! お兄様を殺した火星人を捕らえなさい!!」


 その命令を聞いたガグズは衝撃を受けた。


「か、火星人ですか!?」

「ええ、お兄様を殺したのは火星人に間違いありません!」

「わかっているのは火星人ということだけでしょうか? 失礼ながら手がかりがそれだけでは……」

「クリュメゾンにいる火星人全て捕らえても構いません! 包囲を引き、全ての空港を封鎖し、捕らえるのです!!」


 力強く言い続けるファウナに一同が畏怖する。

 その周囲には火花が飛び散り、熱と閃光が迸っている。

 小さな稲妻。それを見て、一同はファウナに対するイメージを払拭する。

 兄の庇護の元、平穏に過ごす物静かで大人しい姫。


「まさしく雷神の子……いや、――木星皇ジュピターの子だ……」


 アルシャールは呟く。

 ジュピターの血族だけが持つ雷の力――ケラウノスがその証であった。

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