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オービタルエリス  作者: jukaito
第3章 リッター・デア・ヴェーヌス

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エピローグ~デランの旅立ち~

 ダイチ達は宇宙港にやってきた。

 ダイチ達が金星にやってきたときと同じ宇宙港で、ほんの少し前にテロ騒ぎが起きたとは思えないほど、平和的に賑わっていた。


「ダイチはん、ここや!」


 イクミがダイチ達に向かって大きく手を振る。


「遅れてしまわんか不安やったで」

「妾が迷子になるはずがないじゃろ」


 フルートは大きく胸を張って言う。

 実際、フルートはレーダーのようにヒトの位置を把握しているので、宇宙港みたいな込み入った場所でヒトを探すにはもってこいなのだ。


「一番迷子になりそうなのにね」


 一番大人っぽいマイナがぼやく。


「お前が言うな」


 ダイチは言う。


「まあ、なんにしても合流できてよかったわ。

ダイチもちゃんと強くなってるみたいだし」


 エリスにそう言われて、ダイチは驚く。


「わかるのか?」

「身体つきはそんなに変わってないけど雰囲気が別人みたいになってるわ」

「そうか……まあ、デランや教官にしごかれてたしな」

「……それで気になってたんだけど」


 エリスはデランとエドラに視線を移す。


「なんで、あんた達がいるわけ? 見送り?」

「いや、それが違うんだ。エリス」


 ダイチが言うと、エドラは答える。


「ボクはそうだけど、デランは違うよ」

「俺もお前らの旅についていくことにしたんだ」

「はあ!?」

「なんやて!?」


 エリス達は驚く。

 ダイチも、俺達も同じリアクションをしたなと苦笑する。

「なんで、あんたがついてくるわけよ?」


「ワルキューレ・グラールで木星人の奴と戦ってな。もっと別の星のことを知っておかなくちゃならないと思ったんだ。そこにちょうど木星に行くってお前達がいるからちょうどいいと」

「ちょうどいいって……」

「エリス、俺からも頼む」

「ダイチ?」

「デランには学園で世話になったんだ。頼みはきいてやりたいんだ」

「別に私は反対しないわよ。ただシャトルのチケットが」


 エリスはイクミへ視線を移す。


「一人や二人ぐらい余計に用意できるで!」


 グッと親指を立てる。


「サンキュー、助かるぜ!」


 デランは礼を言って、イクミの手を取って振り回す。、


「お、おお! 元気がええな!!」

「ま、仲良くやれそうね」


 エリスにそう言われて、ダイチは一安心する。

 下手をすると喧嘩になるのではないかと危惧したが、その心配はなさそうだ、と。




「留学?」


 ダイチとデランがパプリアへ事情を話しに行ったら、首を傾げられた。


「そう! 他の星に修行に出るんだ! もっと他の星のことを知って、もっと強くなりたいんだ!」

「それは素敵な提案だけど、あてはあるの?」

「ない!」


 デランははっきりと答え、パプリアはため息をつく。


「俺の方も話があるんです」

「ああ、ダイチ君は元々ワルキューレ・グラールまでの留学の予定だったから火星に帰る。その話ね」

「いえ、俺達は木星へ行くつもりなんです」

「木星?」

「詳しく話すと長くなるんですけど、俺達は木星に行ってから天王星まで行くつもりです」

「なるほど、そういうことね」


 パプリアは納得する。


「デラン君はその旅についていくつもりなのね」

「そうだぜ。頼むよパプリア、行かせてくれ」

「いいでしょう」


 パプリアはあっさりと了承する。


「……え?」


 あまりにもあっさり言うものだからダイチは拍子抜けする。


「木星大使の一子であるアングレスとの試合は私も見たわ。あれは私にとっても勉強させられる内容だった。木星や他の星に行って学ぶことは多いでしょうし、それによってあなたはもっともっと強くなれるでしょう」

「パプリア……」

「頑張りなさい。次のワルキューレ・グラールで優勝できるように」


 パプリアは、デランの肩を叩いて勇気づける。


「ああ!」


 デランはそれに力強く応える。




「そろそろ時間や。じゃあ、行こうか」


 イクミは号令で、シャトルへのゲートを向かう。


「じゃあ、元気でね。デラン、ダイチ、ミリア」


 エドラは手を振る。


「おう、お前も頑張れよ」


 デランも手で振って返す。

 ダイチ達が乗せた木星行きのシャトルが飛び立つ。




「そろそろ一休みしましょう、師匠」

「そうだな」


 工房で、ハイスアウゲンの整備をしているラウゼンは手を止める。


「アウゲンの調子はどうですか?」

「ああ、こいつときたら嬢ちゃんがいなくなった途端、元気を無くしてしまったみたいなんだ」

「身体の一部がなくなったら誰だって元気を無くしますよ」

「そうだな……フフ、わかるようになってきたじゃないか」


 師匠に認められたようで、ラミは嬉しくなる。


「そのエリスさんはそろそろ時間ですね」

「ああ……」


 ラウゼンとラミは空を見上げる。


「また会えるといいですね」

「会えるさ。なにせ、こいつの半身なんだからよ。

次にあいつが生まれ変わったこいつの姿を見て驚く顔が見ものだぜ」


 ラウゼンは陽気に言う。

 その様を見て、ラミは子供みたいだと自分まで楽しくなってくる。




 エインヘリアルの教官室へアグライアはパプリアに訪ねてやってきた。


「そうですか、デランは木星に行ったのですね」

「ええ、今頃シャトルに乗っているわ」


 パプリアは窓の外を見つめて言う。


「私はこの旅で彼はもっともっと強く大きくなって、帰ってくると思うわ」

「そうですね、私もそう思います。

……わざわざ、私が声をかけるまでもなかったみたいです」

「他の星では男はそういうものだと聞いているわ。ダイチ君を見ているとそう思うわ、騎士のように強く気高いと」

「そうですね。我々もそんな男達に負けないよう頑張らなければなりません」

「やはり、グラールの一件は尾を引きそうなのね」

「………………」


 アグライアは少し黙る。


「彼が勝ってくれなければ、ヴィーナス様の退位もあり得ました。そのことに関しても礼を言わなければならなかったのですが」

「一足遅かった……そういうことね。今度会った時にでも言ってあげなさい」

「……はい。今度会う時が楽しみです」


 アグライアは笑顔で言い、パプリアと共に窓の空を見つめる。




 飛び立つシャトルの中、ダイチは窓から金星の地表をずっと見つめていた。


「名残惜しい?」


 エリスが訊く。


「いや……金星で色々なことがあったなって……」


 こうして、地上を見ていると思い出す。

 宇宙港のテロ騒動、ヴィーナスとの会話、デランとエドラの出会い、エインヘリアルの留学、そして、ワルキューレ・グラールの激闘……

 本当に色々なことがあった。

 エリスの言うとおり、名残惜しくないといえば嘘になる。


「残ればよかったって後悔していない?」

「別にしないさ。それより腕の調子はどうなんだ?」

「絶好調よ。フェストに参加してから調子がいいのよ」

「優勝したって話だろ。すげえじゃねえか」

「機体がよかったのよ。私だけの力じゃないわ」

「それでも、お前の力だろ」

「……まあ、そうね」


 エリスは照れくさそうに言う。

 テクニティス・フェストの競走、闘技……そのどちらも激しい戦いだった。


「確かに色々あったわ。でも、あのアグライアと戦えなかったのがちょっと残念ね」

「なんだよ、お前の方が名残惜しいんじゃないのか?」

「かもね、ハハハ」


 エリスは笑う。


「いつかまた来ましょう」

「ああ、またな」


 ダイチは窓から視線を外した。

 シャトルは金星圏を抜け、木星へと向かっていた。

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