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オービタルエリス  作者: jukaito
第3章 リッター・デア・ヴェーヌス

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第42話 新星の巨人

 テクニティス・フェスト二日目。

 競技開始前のこの日も昨日と同様に競技に参加するマシンノイドが一同に介し、立ち並ぶ。

 ただ昨日と違う点は二つあった。一つは一日目に機体を破壊されて脱落した二機の不在。そして、もう一つは闘技から新しく参加する一つの機体の存在であった。


「……ノヴァリーゼ」


 それはバライから送られたデータにあった機体だ。


『何よ、あれ……』

『……大きい!』


 参加者達の戸惑いの声が聞こえる。

 ノヴァリーゼの全長は三十メートルを超えている。フェストに出ている機体の全長は十二メートル前後でこれが金星のマシンノイドの標準で、倍以上もサイズが違う。


『おい、運営! あのデカブツはなんなのよ!?』


 マイスターの一人が抗議する声がスピーカーから聞こえる。


『あれは木星か天王星の機体でしょ、いいのわけ参加して!? というか昨日出てなかったでしょ!?』

『ああ、同感だ』

『フェストは金星で最も優れたマシンノイドを決めるもの。木星の機体を持ち出すのは主旨に反する』


 それが火星人であるエリス以外の金星人達の概ねの意見であった。


『参加者の皆様に戸惑いの声が上がっているため、御説明致します』


 大会運営を取り仕切っているガウス長官が、アナウンスする。


『本日執り行われる闘技なのですが、昨日の競走に到着が間に合わなかったマイスター・バライ作のマシンノイド・ノヴァリーゼが参加致します。

またこの機体は木星の機体ではないかと抗議の声があがりましたが、ノヴァリーゼは金星人のバライ氏が制作したため、金星の機体となっております』


 ガウスは抗議に対して否定する。


「まあ、そうよね。それだったら、火星人の私が操者になっていることの方がよっぽど違反なわけだし」


 エリスは冷静に意見を呟く。


『金星のマイスターが金星で作り上げた機体であれば問題ないということだ』


 ラウゼンは冷静に言う。


「意外ね、あんたなんか思いっきり目くじら立てるかと思ったのに」

『そっちこそな。いや、お前さんの場合、戦い甲斐がある敵が増えて喜んでるんじゃないのか?』

「そのとおりよ。敵がデカイ分、潰し甲斐があるわ!」

『他のチームもそれぐらい簡単に割り切れたらよかったんだがな』


 ぼやくようにラウゼンは言う。

 その理由はガウス長官の説明を聞いても、納得できない連中がいるからだ。


『冗談じゃない!』『あれは木星の機体だぞ!』『なんで寄りにも寄って木星なんか!』


 他のチームは抗議の声も上げ続ける。エリスにとってはやかましく耳栓をしたいところだ。


「あんたも連中と同じ?」


 ふと目にとまったノイヘリヤのラルリスに声をかける。


「まあね。金星人が木星人にどういう仕打ちをしたか、火星人のあんたにはわからないだろうけどね」


 ラルリスの物言いにエリスはムッとする。


「火星だって、あいつらに無茶苦茶にされたわ。イクミやミリアの家族だってやられた。まったくわからないわけじゃないのよ」

『……そうか、火星人もそうだったのか』


 ラルリスは納得する。

 

『悪かった……だが、だからこそこのフェストを木星に踏みにじられた気持ちも理解してほしかったのだけどね』

「……そこまでは、わからなかった……」

『……ま、相手が誰であろうと全力で潰すことには変わりないけどね。もちろん、あなたにも!』

「ええ、望むところよ」


 エリスは昨日の雪辱を果たすことに燃える。


『うるさくてうっとおしいですね』


 ノヴァリーゼからうんざりとした男性の声がする。この声はバライのものだ。


「あいつ、マイスターのはずじゃ?」

『マイスターが操縦者をやってもいかんという規則もないからな』

「ああ、なるほど」


 ラウゼンの一言で納得する。


『だからってプレイングマネージャーなんてやろうと思ってもやれるもんやないと思うけどな』

「あれ? あんた、前にそんなことやってなかった?」

『いや~自分の造った機体を操縦するのはロマンやな!』

「変わり身早いわね、っていうか忘れてたでしょ」


 エリスとイクミがそんな会話をしているうちにバライは言い放つ。


『確かに、この機体には木星の技術が取り入れられています。ですが、金星人の私が仕上げた、紛れもない金星のマシンノイドですよこれがボクの目指す新世代のセアマキアです』


 バライの物言いは完全に参加者の反感を更に煽るものだった。


『新世代のセアマキアとは大きく出たな』

『まあ、そういう主旨の大会でも有るからね』


 もっともラウゼンやアライスタのように感心する者も中にはいた。


『ボクを認められないのなら、倒せばいいでしょ。あなた方にそれが出来るとは思えせんがね』

「あいつ、油の注ぎ方上手いわね」


 エリスも別の意味で感心する。


『それでは、これよりテクニティス・フェスト闘技を開始致します。

皆様には一対一の戦いを行ってもらいます。

勝利方法は二つ。降参するか、機体が続行不能にするか、です。機体が続行するかは、我ら技術省が判断します。最後の一機になったものが闘技の優勝者となります』


「聞いてたとおり、シンプルなルールね」

『反則も存在しないみたいやしな』

「あんたが言うと引っかかるわね」

『気にしないこっちゃ! なんでもありになってもエリスは負けへんと信じとるからな!』


 エリスはイクミの物言いに呆れる。


『対戦の組み合わせは抽選で行います。コールされたモノ以外は格納庫で待機をお願いします。それでは皆様どうか御健闘をお祈りします』


 そこからディスプレイに試合の抽選結果が映し出される。


   第一試合

ハイスアウゲン vs エアフォルク


 いきなりの出番であった。


『おお、トップバッターやないか! しかも因縁の相手やな!』

「借りは必ず返すわ」


 エリスは拳を握りしめる。


『それでは、ハイスアウゲンとエアフォルク以外の機体は、格納庫に移動してください』


 ガウスのアナウンスに従って、各機体は格納庫へ移動する。


『私と戦うまで負けないでよ』


 ラルリスは一言言ってから格納庫に入っていく。


「言われるまでもないわよ」

『いいや、お前は負けるね。あたしの手にかかってね!』


 昨日聞いたのと同じうざったい声がエアファルクから聞こえてくる。


「誰が誰の手にかかって負けるって!」


 昨日の悔しさが再び込み上げてくる。


「ちょうどよかったわ! 昨日の借り返したかったところよ!」

『威勢がいいわね。アライスタの作品に負けた割には!』

「コソコソして、二位をかすめとった臆病者に怯える必要がどこにあるっていうの!?」

『言ったな!』

「言ったわよ!」


 言葉の応酬もそこそこにハイスアウゲンとエアファルクは闘技用の定められた配置へ着く。


『それでは準備はよろしいでしょうか?』

『ええ!』

「おう!」


 ガウスの呼びかけに二人は応じる。


――カウントスタート! 3(ドライ)! 2(ツヴァイ)! 1(アインス)! ファイッ!


 カーン、と試合開始のゴングが鳴る。


「ブーストオン!」


 それと同時に、エリスはブーストをかける。


『って、いきなりかーい!』


 イクミの突っ込みも聞かず、エリスは速攻でぶちかます。


「行くわよ、アウゲン!」


 ハイスアウゲンは応え、エアフォルクに鉄拳を見舞う。


『ぐッ!? は、はや!?』


 開始からの速攻に、面を食らったがエアフォルクは後方に飛ぶ。


『思った以上に速いわね。だけど、速さならあたしの方が上だよ!』


 エアファルクの操者・メルヒアは吠えて、スタディオンの内周を飛び廻る。


「ちょろちょろ飛び廻って、盗人に相応しいせせこましさね」

『いちいち癪にさわる言い方ね!』

「癪にさわるのはどっちよ!」


 エアフォルクはハイスアウゲンの後ろに廻り込む。

 手に持ったマシンガンで穴だらけにしてやる。そういった気合をエリスは背中から感じる。


『――!』


 その時、メルヒアが驚愕する動きをハイスアウゲンは見せた。

 ハイスアウゲンは飛び上がり、背後にいたはずの自分に蹴りを叩き込んできたのだ。


『ムーンソルトキック!?』


 遥かな昔から伝わる地球の衛星である月を模したという蹴りを放ってきた。その蹴りのせいで、

頭がへこまされた。


『そんな芸当もできたのか!?』

「まだまだッ! ブーストオン!」


 ハイスアウゲンのブースター出力がニ百パーセントに、【ロートクリンゲ】の出力に二百パーセントに振り切れる。

 その勢いのまま、【ロートクリンゲ】でエアファルクの肩から斬りつける。


『がああああッ!?』


 メルヒアは自分で斬られたかのように甲高い悲鳴を上げるが、その程度でエリスの闘争心は揺らぐことはなく、、追撃をかける。


グシャン! ビガァン!!


 右ストレートからのハイキックをぶちかまして、エアフォルクは吹っ飛ぶ。


『よくも!?』


 メルヒアは挫けず立て直す。


「つーかまえーたー♪」


 しかし、エリスは容赦なく追い立て、ニヤリと笑う。

 そこはスタディオンの端。頑強な壁に囲まれ、逃げ場は無くエアフォルクの機動力は活かせない。


『チィ、それならッ!』


 エアフォルクは飛び立つ。頭上に立てば、まだ優位性を取り戻せると判断してのことだった。


「甘いッ!」


 それすらもエリスは読みきり、飛び上がったエアフォルクに飛び蹴りをかます。


『ガッ!?』


 これをまともに受けたエアフォルクはスタディオン端の壁に叩きつけられる。

 この壁、マシンノイドの壮絶な戦いで壊れないように頑強に作られており、たとえビーム兵器や核兵器の直撃を受けても耐えられるほどの頑強さを誇る。

 そんな壁に激突して、エアフォルクはバラバラ寸前のダメージを負い、これ以上の戦闘続行は不可能となった。


――勝者、ハイスアウゲン!


 高らかにコールされ、エリスの鬱憤も晴れる。


『続けて、第二試合を行いますので、両選手は速やかに退場してください』


 動けなくなった敗者に鞭打つようなアナウンスが流れるが、エリスは気にすること無く、格納庫に戻る。


   第二試合

ノヴァリーゼ 対 ゲヴァルツ


 格納庫に入ると同時に、第二試合の抽選結果が出る。


「お疲れさん!」


 コックピットのハッチを開けると、タラップかけて上がってきたイクミが紅茶を詰めたタンブラーを渡してくれる。


「別に大したことなかったわ」

「そりゃ秒殺やったからな! しっかし、いきなりブースト使ったからビックリしたでー!」

「今日はなんだかいけそうな気がしたのよ。それにあいつにムカついてたし」

「ああ、そういう気持ちは大事だな」


 後からやってきたラウゼンが言う。


「調子はどうだい? 何か変わったことはねえか?」

「特にはないわね……強いて言うなら、スムーズに殴れたわね」

「ああ、そういう調整はしておいた。やっぱりお前さんは実戦向きのようだ。もうブーストの使い所もわかってきたみたいだしな」


 ラウゼンは満足げに笑う。


「まあ、何度もやってればちょっとぐらいは掴めるわよ」

「ああ、そのちょっとぐらいは重要なんだ。

よかったぜ、ブーストのリミッターを外しておいて。お前さんなら十分使いこなせるだろう」

「はあ、今なんて?」


 エリスは怪訝な表情でラウゼンへ問い詰める。


「――出力限界を五百パーセントまで引き上げた、って言ったんだ」


 ラウゼンは悪びれもせず告げると、エリスは鉄拳を彼に見舞っていた。

ズゴン!




 ノヴァリーゼはゲヴァルツの三倍近い巨体にも関わらず、ビーム砲撃を機敏に動いて回避していく。


「あのデカブツ、意外にすばしっこいわね」


 モニターでその戦いぶりを観戦するエリスは言う。


「そりゃ、金星と木星のマシンノイドのいいとこどりって謳ってたみたいやしな」

「ようはデカくてすばしっこいってわけね」

「パワーもありそうですね。武装はレーザーブレード、マシンガン、ミサイルポッド……豊富にあるみたいですね」


 ラミは提供してもらったデータとモニターを交互に見る。


「ムカつくが……バライの技術力は本物みたいだな。木星の技術を上手いことを組み込んでいやがる」


 意外なことにラウゼンはバライを認めているようだ。


「じいさん、バライのこと知ってるの?」

「父親の方だな。

アライ・ファラウス、腕利きのマイスターだった。わしの次くらいにはな」

「あ~はいはい。じゃあ、息子の方は全然知らないわけね」

「ああ、何しろ奴ら親子は戦後に境界先へ追いやられちまったからな」

「境界先? ああ、それでか」

「何、どういうこと?」


 イクミが納得したが、エリスはついていけなかった。


「あの壁の境界は、木星との国境や。境界先は要するに実質木星の領地っちゅうわけや。バライはんがそこの出身ってことやから……あとはわかるやろ?」

「ああ、それで木星の技術は入ってるわけね」


 ようやくエリスは納得する。


「しかし、このフェストにまで出てくるとはな」

「そういうこと、前にあったの?」


 エリスが訊くと、ラウゼンは首を横へ振る。


「いいや。国境を超えてやってくる奴なんざワルキューレ・グラールの出場選手ぐらいなもんだぜ。乗り越えようとしたら基本死罪だからな」

「それも木星大使の許可があってようやく短期間の滞在が許されるみたいなんですよ」

「き、厳しいんやな……」

「だったら、どうやってあいつは国境を超えてきたのよ?」

「ワルキューレ・グラールの選手達と一緒に国境を超えてきたってことやないか?」


 イクミの考えにラウゼンは頷く。


「確かにな、それぐらいしか考えられん。マスコミの方もワルキューレ・グラールに出場する代表生徒達にばかり目がいくからな。そんなかにマイスターが一人こっそりいても気づかないだろ」

「はあ、そんなもんか……せやけど、バライはんはそうまでしてフェストに出場したかったちゅうこっちゃな」

「なるほどね、だから気合入っているわけね」


 エリスはモニターに映る戦うノヴァリーゼを見て言う。


「嬢ちゃん、わかるのか?」

「ええ、なんかそう見えるのよ。なんて言うのかわからないけど機体を通して出てくる気合がね、普通にこの腕で戦う時と同じようにね」


 ラウゼンはそんなエリスに肩をかけ、満足げに笑う。


「いいフィーリングだ。その感覚はハイスアウゲンと戦う時に必ず役に立つぜ、ハハハ!」


ガシャン!


 そんなやり取りをしているうちに、ノヴァリーゼはゲヴァルツを追い詰めていく。


「奴はもうおしまいやな」


 その様子を見てイクミは言う。

 ゲヴァルツは昨日の競走でエリスとハイスアウゲンに襲いかかって返り討ちにあい、ボコボコにされている。そのせいで、今日の闘技は辞退しそうだったところをマイスターの努力により、なんとか復帰にこぎつけた。しかし、その急場しのぎの応急手当で闘技を戦い抜けるかというとやはり甘くはなく、ノヴァリーゼがレーザーブレードを振るい、マシンガンで撃ち抜かれる度に、継ぎ接ぎの装甲に亀裂が走り、昨日と同じようにボコボコに歪んでいく。


「あいつ、試しているわね」

「試すとはどういうことですか?」

「一気に決めずにならしているのよ。あれだけのパワーなら一撃で倒せるはずなのに」

「マイスターやから、不慣れってことでもないんか?」

「そうとも限らないぜ。自分で調整してるだけに勝手がわかるって場合もある」

「ええ、バライってやつは間違いなくそれよ」

「嬢ちゃんがそう言うんならそうだろうな。だが、このまま奴がタダで終わるとは思えねえ」


 ラウゼンが言うやいなや、ゲヴァルツは動く。

 ゲヴァルツの得物である手持ち式カノン砲を撃ち込む。


ドゴォォォン!!


 モニター越しでも伝わる耳をつんざくような爆音が響き渡る。

 それによってモニターを埋め尽くすような粉塵に包まれる。


「ああ、見えなくなった」

「光学センサーで見えるから、こんくらいなんてことないやろな」

「こっちは見えないのがつらいですね」


ズドン! ズドン!


 カノン砲の銃声だけが響き渡る。

 この銃弾が当たったのか、外れたのか、わからない。


「あの大砲なら、あたればワンチャンあるところなんやけどな」

「そんなヘマはするとは思えないけど」


グシャン!


 粉塵が晴れだしたころに、装甲板が歪む音が鳴る。

 それとともに、手持ち式カノン砲がノヴァリーゼの頭上に舞う。

 勝負あった。と、その瞬間、イクミ達は思った。ノヴァリーゼの豪腕がゲヴァルツを捉え、装甲を貫いたのだ。


「これで決まりや!」

「いいえ、まだよ」


 エリスは言う。

 手持ち式カノン砲がジェットを噴射させて、ゲヴァルツの手に吸い寄せられるように戻ってくる。


「ああ、あれで回収するんか!」

「昨日のレースもあれで回収してたのね」


 エリスが納得したところで、ゲヴァルツは最後の悪あがきと言わんばかりに手持ち式カノン砲の銃身をノヴァリーゼへと向ける。鉄腕で殴ったばかりなだけに距離は全然無い。はっきりいってエリスでもはずしようがない。


ズドン!!


 ゲヴァルツは自らすらも巻き添えのも躊躇ず、引き金を引く。

 先程、粉塵を巻き起こした砲弾によって、今度は爆煙でモニターが埋め尽くされる。


「直撃したで!?」


 イクミはモニターを食いつく勢いで身を乗り出す。


「ど、どうなったんでしょうか?」

「いくらあの巨体でも直撃したらタダじゃすまないはずだけど」

「ああ、わしの知ってる木星の機体だったら今ので相討ちに持ち込めても不思議じゃなかったが……」


 ラウゼンは最後まで言いきらず、画面を見つめる。

 程なくして爆煙は消え、試合結果がモニターに届けられる。


ガシャン


 それはゲヴァルツという敗者を見下ろす巨人の姿あった。


――勝者、ノヴァリーゼ!


 アナウンスが高らかにその名をコールする。

 その装甲には傷一つつかず、悠然とそびえ立つ山のようであった。


「無傷か……装甲の厚みがダンチってことか」

「木星ならよくて相討ちって言ってたじゃないの」

「ああ、木星ならな。だがあの機体のベースは金星だ。金星人なら物質硬化はお手の物だ」

「さすがはいいとこどりってことやな。こりゃとんでもない強敵出現やな」

「いいじゃない、燃えてきたわ」


 エリスがギラついた目で答え、ラウゼンは感心する。


「そうこなくちゃな」


   第三試合

 ノイヘリヤ 対 ハイヤード


 ノイヘリヤの対戦相手は、昨日の競走で一瞬だけ見かけた機体であった。

 開始早々に飛び上がって、ゲヴァルツの狙撃で撃墜されたマシンノイドだ。


――勝者、ノイヘリヤ!


 そして、今日も開始早々にラルリスの駆るノイヘリヤにても足も出ずに敗退するのであった。


「……ここまで出番がたったあれだけとは、あわれや」


 ただ一人、イクミだけは同情していた。

 こんな調子で一通り試合を終えて、およそ半数になったころ、二回戦が開始された。



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