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サーシャとサカテのヒソヒソ話

サカテはふいに目が覚めた。

武人として5歳の頃より染み付いたその習慣は今も変わらず、たとえ深い眠りについていても辺りの空気の流れが変わるととっさに目が開き、枕元に置かれた槍を手にしてしまう。故に彼女を暗殺しようと寝込みを襲っても成功する確率は限りなく低い。

ただ彼女が今、目を覚ましたのは別に侵入者がいたからではない。

大気の違いを感じ取ったのだ。

ベッド横にあった小さな窓から柔らかい陽の光が差し込み、冬特有の冷気が輝き、ひんやりとした部屋の空気が肌を突き刺す。厚手のシーツに包まれているのに身体は覚醒前のように冷たく重かった。

そう、朝が訪れたのだ。


小さく息を吐き、冷えた身体をいたわるようにベッドの中で丸くなった。

ふと、わき腹に少しだけ痛みを感じた。それは昨日、マフィアが巣食うBarに乗り込みサーシャを守りながら戦った時にいらぬ筋肉を使ってしまったからだろう。ようは、慣れない戦い方をして軽い筋肉痛をおこしてしまったのだ。

( まだまだだな、ボクも…。)

そう苦笑いを浮かべながら、控えめな乳房を包むように自分で自分の肩を抱いて小さく身体を震わせた。

ふと、横に並ぶもう一つのベッドに目が向いた。

そういえば…と、昨晩は久しぶりに同部屋に人がいたことを思い出したが、そこにいるはずの彼女の姿は無かった。

綺麗にたたまれたシーツと小さいバック。そして枕脇に丁寧に並べられた化粧道具。

その高級そうな瓶の横に置かれた使用済みのスポンジを見て、サカテは思わず笑みを浮かべた。…彼女の行き先が分かってしまったからだ。

そういえば、昨晩もお姫様は部屋割りの事でずっと駄々をこねていたっけな…なんて思いながら目をこする。

元々この宿をとる時にサカテは特に何も意識せず自然と2人部屋と1人部屋にした。

常識的に考えれば女性同士である自分とサーシャが2人部屋で男性のアルバが1人部屋、それに異論を挟む余地などないと思っていた。ところがアルバが巻き込まれたマフィアとのいざござを解決して宿に戻って部屋割りの事を話した時、彼女はあからさまに顔を顰め抵抗した。…どうやら彼女の常識はボクとずれていたようだ。


「聖女である私は常に騎士様と共にあらねばいけないのです。」


なんて大真面目な顔で言い切ったサーシャに唖然とした。

いやはやこの世間知らずのお姫様は何を言ってるんだと。

サカテはとりあえず眠そうなアルバを一人部屋に押し込めてから、今にも泣きそうな顔でオロオロしている彼女の手を引いて自分たちの部屋に案内したものだ。

それでも必死にアルバの部屋に行こうと、何かにつけ抵抗を続ける彼女…。

まさか女神様はただの男好きなのかとも思ったが、これまでの彼女の態度や言動を見るにつけそれはありえない。そもそも彼女は清廉の極みであるカスティリャ家の一人娘、最高位司祭で枢機卿だ。

( きっと身分が高すぎて、そういう常識は教えられなかったんだろうな。 )と勝手に思い込み、サーシャをベッドに座らせて懇々と彼女に一般的な男女の常識を説明した。


「恋人ならいざ知らず、結婚前の男女が同じ部屋に寝るのは良くない。ましてや君たちは出会ってひと月も経ってないだろ?」


それは現代では硬い考えである事は自分でも重々分かっている。だが武人として厳格に生きてきたサカテとしては曲げられない。それでもサーシャは口を尖らせて反抗した。


「アルバと私は騎士と聖女なんです。共に過ごした時の長さは関係ありませんわ。」


「騎士と聖女が恋人のようなものだという事は理解している。だがこのままではお姫さんは都合のいい女になってしまうぞ。」


「…それはどのような意味で仰られているのですか?」


「いいかい、お姫さん。アルバだって男なんだ。君のような美しい女が自ら彼のベッドに潜り込み添い寝をしたら、誰だって手を出してもいいんだと誤解する。誰とでも寝る、ただの軽い女だと思われるぞ。」


そう説明するとサーシャは目を丸くして驚いた。


「そ、それは困りますわ。」


「だろ?だから君はここでボクと大人しく寝るんだ。」


「でも…私は騎士様に手を繋いでいただかないと安心して寝られないのです。」


「大丈夫だ。君の事はボクが命に変えても守ってみせる。」


何せ彼女にはキエイの目を治してもらわなくてはいけない。そしてそれを約束してくれた彼女には恩義もある。だから今の言葉は本心だった。だが、彼女がアルバと常に共にいたがるのはどうやら自身の身を案じてのことではないらしい。


「で、でも…私が側にいなかったら騎士様が寂しがると思うの。」


サーシャはまるで言い訳をするように上目遣いでそう洩らした。


「アルバは男の子だ。それにすぐ隣の部屋にいる。心配ない。」


「えっと…騎士様に万一の事があったら…。」


「騎士であるアルバは君を守るのが仕事だろ?その彼が寝込みを襲われたくらいで遅れをとるようなら、そもそもお姫さんを守れない事になる。君の騎士様は強いんだろ?」


「もちろんです。騎士様は世界一お強い殿方ですもの。」


「よし、じゃ安心して寝ようっ!」


そう言って強引に彼女をベッドに寝かそうとしたが、サーシャは頑として動かなかった。


「でも騎士様の部屋に怪しげな女が忍び込んできたら…。」


「安心しろ。あんな頼りない男を夜這いするのは君だけだ。」


「で、でも今日だって騎士様は商家の娘さんに声をかけられて…。」


いつまでも抵抗を続ける彼女にサカテは無表情に見つめ返しながら頭を掻いた。本音を言えば頬をひっぱたいて説教でもしたいところだが、彼女は今の自分にとって世界で一番大事な御仁。誠心誠意、この問題に納得してもらわなくてはならないし、だいたいこれからも一緒に旅をするのだ。宿に泊まるたびに隣にピンクルームを作られては飛んだ迷惑、絶対にごめんだ。


「だいたい君の本当の騎士様は師匠とかいう男じゃないのか?」


だから殿下の宝刀を抜いた。すると予想通り彼女は口をつぐむ。

師匠…それはサカテにとってもアルバにとっても謎の人物だ。ただ時折サーシャが話す内容をかいつまんで理解しようとすれば、師匠なる男はとんでもなく強い彼女の正式な騎士様。何らかの理由で離れ離れになっているようだが、彼女はその男の事をたいそう大事に想っている事は間違いない。だからこそ、そんな大事な彼がいるのにアルバの事を何故これほどまでに気にかけるのかが分からないっていう側面もあるのだけど。


「い、今は師匠の事はいいのです。」


彼女は珍しく口ごもっていた。


「良くない。このままでは君は、その師匠にもアルバにも二股をかけられているって思われるぞ。」


そう突っ込むと、世にも美しい女神の顔が大きく歪んだ。今にも泣き出しそうな…大げさに言えば世界が終わったみたいな表情だった。


「そ、そんな…違います。」


「だったら、ここで素直に寝るんだ。いいな?」


もう結論は出たとばかりにサカテはベッド脇に置かれたキャンドルを消した。

そして強引にサーシャの華奢な体をベッドに沈ませると、そのまま丁寧にシーツをかけた。…まるで我儘な妹を寝かしつける姉のように。ようやく落ち着いたのか、抵抗を弱めた彼女の頭をポンッ、ポンッと軽く叩くと、サーシャはサカテの目を見つめ返して口を開く。


「ねぇ、サカテさん。」


…なんだか子供のように甘えた声だった。


「どうした?」


「アルバの部屋に近いベッドに変えてくださらない?」


「…ああ、いいよ。」


そう言うと彼女は嬉しそうにベッドから飛び起き、黄金色の髪をなびかせながら大慌てでサカテが寝るはずだった壁側のベッドの中に潜り込んだ。そして目を細めて、向こう側に彼がいるであろう壁を愛おしそうに壁を手でなぞる。

その様子にサカテは唸った。…これではまるで恋い焦がれる少女のようではないかと。だが師匠という男がいる以上、その推察は成り立たない。

( どういう事なんだろうな…。 )

サカテは窓を打つ風の音を聞きながら考えを巡らせた。サーシャが普通の町娘であればいつまでも会えない師匠という恋人に業を煮やしてアルバに乗り換えようとしている…なんて事もあるかもしれない。だが彼女は教団の最高位司祭、とんでもない権力者だ。もし彼女が本当に師匠という男を欲しれば、世界1,000万とも言われる修道士と大多数の信者たちは血眼になってその男を探すだろう。だが彼女からも世間の動向も見てもその様子は微塵も感じられない。

そうなると妄想好きでサスペンスと都市伝説が大好物の自分の拙い考えは、より現実味を帯びてくる。


「なぁ、お姫さん。君の旅の目的はなんなんだ?そろそろ教えてくれてもいいだろう。」


だから率直にそう尋ねた。が、彼女は返事を返さない。

この質問に限っては、これまでと変わらないつれない態度…サーシャは旅の目的や師匠の事になると途端に口をつぐむ。だけどここは逃さず聞きたかった。これから一緒に旅をする上でも彼女の旅の目的は危機管理的にもぜひ知っておきたいからだ。


「ボクだって旅の目的を話した。狡い事だと分かっているが、交換条件で話してくれてもいいだろう?」


「私の旅の目的はサカテさんみたいに美しいお話じゃないの。」


「だとしてもだ。君はボクの事を友だと言ってくれた。だから聞きたい。」


そう話すと彼女はゆっくりとこちらを振り向いた。彼女の瞳はいつになく鋭く、表情はどこか固かった。何かを言いたげなその表情を見て、先ほどの”友”という言葉を口にした事を激しく後悔した。ついさっき彼女が自分に言ってくれた言葉はやはり社交辞令だったのだろうか…。


「最初にお話しましたでしょう。…私に深く関わると命を落としますよ?」


サーシャは静かにそう口にした。


「…君はキエイの目を治してくれると約束してくれた。そしてボクはその言葉を信じ、君についていくと決めた。」


「………。」


「ボクは武人だ。恩はこの腕で返す。この旅で命を落とすなら自分が未熟だったがため。お姫さん…いや、サーシャの所為じゃない。」


昨日、サーシャからお姫様と呼ぶなと注意されていたのを思い出して呼び名を変えて話を続けた。


「無理にとは言わないが…このままではボクは君の事をずっと疑わなくてはいけなくなる。それはキエイの目を治してくれるであろう恩人に対して心苦しいし、辛いし、何より礼を欠いている。」


「………。」


「だからボクは君のことを信じていたいんだ。だからもっとサーシャの事を知りたい。」


「…貴女は私の何をお知りになりたいの?」


ようやく聞く耳を持った彼女に、ここぞとばかりに自分が推察した夢物語を頭にめぐらせながら、あえて核心をつく質問をしてみた。


「単刀直入に聞く。君はアルバに何をしようとしているんだ?」


「はい?私がアルバに…ですか?」


「そうだ。…ボクには君がアルバを嵌めようとしているんじゃないかって見えてしまうんだ。」


「ちょっ…!サカテさん、いくらなんでも…。」


大声をあげそうになったサーシャに、サカテは鎮めるように少し大きめの声で言葉をかぶせた。


「ボクだって恩義のある君をそんな風に思いたくはない。だけど、師匠という騎士がいるのにアルバの事まで騎士だという君の言葉は不自然だ。うがった見方をすれば愛する師匠を取り戻す為にアルバを利用しているのではないか…そう思われても仕方がないぞ。」


「私がアルバを利用…ですか?」


「そうだ。例えば…師匠という男は恐ろしい悪魔かなにかに捕まっていて、彼を取り戻すためにはアルバを生贄にしなきゃいけないとか…またそれには彼が持っている何かがどうしても必要だとか…。」


そう話すと彼女は面食らったように目を見開きながら動きを止めた。

そのサーシャの様子はある程度予想できた。自分で言っていても確かに暴論だと思うし、そもそもアルバを生贄にする理由が分からないし、もっと言えば貧乏丸出しのアルバがそんなたいそうなもんを持っているはずがない。だけどそういう無茶な暴論でも考えないとアルバに対するサーシャの態度がどうにも説明がつかないのだ。

しばらくしてサーシャはシーツから出てベッドからゆっくりと起き上がると、急に足を組んでこちらに鋭い視線を向けた。その時の彼女の様子はどこかいつもと違っていて、サカテは思わず身構えたほどだ。


「サカテさん…それを知られた以上、貴女も生かしてはおけないわ。覚悟はいいかしら?」


その脅しとも取れる彼女の言葉とともにブラウンの瞳が徐々に藍色に染まっていき、部屋全体がカタカタと揺れだした。ベッドも家具も窓枠も小刻みに揺れているのが伝わる。

妖しく光る彼女の瞳…。

咄嗟に武人の血が騒ぐ…サカテはすぐに理解した。

世界でただ一人、女神だけに宿る神のチカラ…魔法がくる!と。

背筋がゾッとした。ここまで幾多もの死地をくぐり抜けてきた自分でも足が震える。それは感じたことのない恐怖が自分に迫っていることを警告しているに等しい。目を向ければ彼女の黄金色の髪がふわっと宙に舞い、それとともにサーシャは美しい手を掲げ、まるでオーケストラの指揮者のように指が妖しく動いた。これが神の怒りに触れたというやつか…。

咄嗟に槍に手をかけようとするが、体が言うことをきかない…。

( やばっ!言いすぎたかっ! )

思わず後ずさった。…そして改めて気づく。この美しく華奢なお姫様は、やはり自分よりはるかに強く、恐ろしいという事を。

彼女の身体から白く眩い光が溢れ出し、波動が自分に迫ってくる。

咄嗟に手で顔を覆い、指の隙間から目を凝らして彼女を確認しようとしたが、溢れんばかりの神の光はこの部屋自体を白く染め上げてしまい何も見えなかった。…恐ろしかった。

バサッ!!

と大きな音がした。咄嗟に体を屈めて防御姿勢をとる。

やがて自分は何かのチカラでそのままベッドの上まで飛ばされ、そのまま押し倒された。

魔法で消されるっ!?…そんな物騒なことを思い浮かべ死を覚悟したのだけど………なんだかダメージはそれほどない。いや、むしろ柔らかくて心地いい。

やがて白く柔らかい光のカーテンが徐々に薄れていく…そこは地獄絵図なのではなく先ほどと変わらぬ古ぼけた宿の一室だった。もちろん自分は死んでもないし、痛くもない。

恐る恐る辺りを窺うと、黄金色に輝くふわっとしたものが見えて、なんだか春花のような爽やかな匂いまでした。

ゆっくりと首を起こすと、あろうことか自分はサーシャに上に乗られていてまさに押し倒されていた。

しかし…なんていう心地い気分なんだろう……まるで素敵な異性に押し倒されているようだった。

自分は女なのにこの女神に押し倒されていると顔が赤く染まり、体が反応する。


「…ふふっ、冗談ですよ、サカテさん。」


サーシャはそう言って舌を出す。どうやら先ほど眩い光は彼女がサカテをちょっとだけ脅しただけのようだ。つうか悪戯だ。さすが神様ともなると意地悪の破壊力が違うと妙な事に感心する。


「じょ、冗談にしてはスケールがでかい…。」


「…あはっ、ごめんなさい。…でもせっかく友達になれたサカテさんにそんな風に思われているなんて…悲しいです。」


「い、いや…さっきの話はあくまでボクの妄想だ。」


まぁ、客観的事実に基づいたものだが。


「サカテさんの妄想は、あまりに偏っていますわ。それでは私が悪者ではないですか。」


「君が悪者だなんて誰も言っていないさ。ただサーシャは目的の為なら手段を選ばないだろ?」


「…それはサカテさんも一緒でしょう?」


そう言いながら彼女はサカテの顔を覗き込んでくる。まぁ、ごもっとも。


「ははっ、そういえば君とボクは似た者どうしだったね。」


「ふふっ…そうですよ。」


やがて気がつくと2人は笑いあっていた。…場の空気が温まり、なんだか彼女との距離も近く感じた。まぁ抱き合っているのだから近いことは間違えない。

この機を逃すのはあまりにも惜しい。サカテはすぐに先ほどの話を続けた。


「君の旅の目的…信頼できる友になら、ちゃんと事情を説明出来るはずだ。…ボクは君を信頼したからキエイの話をしたんだ。」


「…確かにサカテさんは私に心の内をお話しくださいました。このまま私の事だけを秘密にするのは友としては失格ですし…卑怯ですね。」


「…ボクは君の友達でいいだね?」


一応、念押しした。まぁ今回の事を抜きにしても教団最高位司祭が友達っていうのは気分がいい。


「もちろんです。」


「なら、旅の目的をちゃんと話してくれるか?」


そう言って顔を覗き込むと、サーシャは小さく頷いた。


「…分かりました。ただし、一つ条件があります。」


「なんだ?」


思わず息を飲んだ。

話したら魂でもくれと言われるのではないかと本気で焦った。なにせ相手は神様、太古の神様とかだったら生贄とか要求してきそうだ。思わず息を飲んで冷や汗をかいたが、その予想はいい意味で裏切られた。

彼女は少しだけ微笑むと寂しそうな声で呟く。


「途中で私が泣いても…許してくださいね。」


思わず目を見開いた。

その言葉通り、女神の微笑みは今にも涙で崩れそうだったからだ。


それから彼女は約束通り、旅の目的とアルバの事を包み隠さず話してくれた。

それはボクの妄想を遥かに凌ぐとんでも話しだった。

結局ーーー彼女の話は深夜にまで及んだ。

だけどその話には全くと言っていいほど実感がわかなかった。どれだけ聞いてもふわふわとした夢の中の世界のお話のようだった。

必死に理解しようと神話みたいな現実の話を聞いていたが、やがてその話の全容を聞いてそりゃ彼女がアルバから片時も離れたがらなかったはずだと納得することができた。

ボクは彼女の話を全部信じることにした。

それは彼女が最初に話していた通り、きな臭く、関われば命の危険にさらされるというサーシャの言い分もごもっともな物語のような話で、それは常人ならすぐに身を引きたくなるようなとんでもないものだったが、どうやらボクは変わり者だったようで、むしろ興味が湧いた。


すると不思議な事が起きる。しばらくすると急に眠気が襲い、そのまま気を失うようにベッドに倒れ込んだのだ。…それがサーシャの魔法によるものなのか、ただただ眠気に襲われただけかは分からなかったけど。

ただ気がつくと、いつの間にか朝を迎えていて、そして彼女はベッドにいなかった。


( 騎士と聖女…か。)サカテは昨日のサーシャの話を思い出し、主がいなくなった空のベッドを見ながら思わず膝を抱いた。そして彼女があの少年にあそこまで心を砕く理由が分かり、なんだか自分まで切ない気分になった。これからもアルバは悩み、落ち込み、悶え苦しむことだろう。


( こりゃ、長い旅になりそうだな…。 )


サカテはサーシャの代わりに窓辺にやってきた小鳥のさえずりを心地よく耳にしながら、そうため息をついたものだ。



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