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ステラの決断

その時、セドリーヌとエマが率いる修道兵と対峙していたロハン兵を率いていたのは、ステラという副将軍だった。彼は数多くの実戦経験を持つ御仁で、いつもセザールとともに悩みながらロハン軍を率いてここまでやってきた。そう、ロハン将軍セザールの片腕で参謀さんである。

とはいえ、彼は最前線にいる訳じゃない。セザールから総指揮を任された彼は、修道兵と激戦を繰り広げている中央通りから戻って20km地点の建物内にいるのだ。


( やけに遅いな…。 )


ステラは月明かりを浴び、闇夜に影だけぼんやりと浮かぶ修道院を見て、怪訝そうな顔でそう呟いた。彼は中央通り沿いの空き家になった商家を乗っ取り、その屋上から修道院を見ていたが、その雄大な建物には今の所変化はない。

当然この時点でステラは、まだ自分たちの大将であるセザール将軍がただの物売りであるアルバに一騎打ちで破れたなど露ほども知らない。むしろ、将軍が無事に責務を果たし、ルン修道院から火の手が上がるのを今か今かと待っていた。

そう、自分たちの領主の無茶振りを聞いて、修道院破壊などという罪深い責を一身に背負うことを覚悟したセザールが修道院に火をかけるのを苦渋の面持ちで待っていたのだ。

ステラはその将軍と同年代の40だが、中性的なセザールと違って彼は四角い顔の大柄な男だった。黒髪のオールバックで立派な口髭が如何にも軍人っぽいが、目はタレ目。その為、どこか愛嬌があったりする。

剣の腕前っていう点では化け物セザールに引けはとるけど、この御仁は中々にしたたかで、むしろ戦略や戦術に限っては、その将軍様の上をいっているなんて言われているほどのお人だった。


これがまた面白くて、線が細くて中性的なセザール将軍が剣の腕前ではピカイチ。

だけど大柄で如何にも強うそうなステラ副将軍が実は頭脳派っていう…ある意味、このロハンの英雄さん2人は凸凹コンビだった。

云々、これは実にいい組み合わせだ。

色々予想外なことが起こる戦争には、こう云う考え方が違う2人を上層部に取り揃えていた方が何かと都合がいい。

何せ戦い方も、危機管理能力だって2倍になる。

セザールは思慮深いといえ決めたら突っ走るタイプだけど、ステラの方はどこまでものんびり屋さん。戦いが始まっても細かいとこまでずっと考え続けるような御仁だった。

ところが、そんないつも落ち着いていてのんびりしている男が、細くなった路地の地形を上手く使い、槍を振るいながら激しく抵抗している修道兵さんたちの戦術の報告を受けて、思わず頭を抱えてしまった。

戦いに焦っていた…訳ではなく、セザール将軍から連絡がこないことに難儀していたのだ。

何しろ、政治的能力と交渉力まである彼がいないことにはルン占領も大きく手間取る。

( まさか将軍の身に何か…。 )

なんて事もステラの頭をよぎった。

今は味方が優勢だが、ロハン軍の象徴ともいうべきセザールに何かあれば大きく士気に影響する。将軍が討ち取られた!なんて事になれば、ロハン軍は総崩れになり、散り散りになってしまう危険性だってあるのだ。


( 真実を突き止めるためには、やはり前線を突破するしかない…か。 )


そう思い立ったステラ副将軍は、ゆっくりと伝令部隊の男に顔を向けた。

その男の持ってきた情報によれば、最前線の部隊長たちは自分の命令を無視して、無謀な突撃を繰り返しているという。敵はもはやルン正規軍ではなく、修道兵。神に仕えし彼女たちを力づくで抑える事は、今後の為にも得策ではない…スカラはそう思っていた。

だがセザール将軍が行方知れずでは、話は変わってくる。


「仕方ありませんね…。彼らに、突撃を続けなさいと告げるのです。」


スカラはそう伝令部隊に静かに告げた。

結局彼は覚悟を決めて、前線の部隊長たちの無謀な突撃に賛同することにしたのだ。それはいよいよ騎馬隊での強硬策を容認した事になる。たとえ怪我をさせても修道兵たちを追い払う決断をしたという事だった。



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