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会議3 教団と13の国

様々な立場の人々が集まったこの会議だったが、話はついに教団に及んだ。教団は世界各地のどんな貧しい村にもあり、普段は、教育と人々の祈りの場として機能し、非常時には弱き民が逃げ込める最後の砦としての役目もある。大きな宗教というものが教団しか存在しないこの世界において、教団はほぼすべての人々が生活をする上で欠かせないものとなっていた。

モモはそのことを前提として、新たに掴んだ教団の秘密を話し始めた。


「さて、次は「教団」についてお話しします。教団最高位の司祭サーシャを目の前にこの話しをするのは憚られるけど…そもそも私たちが良く知る教団の正式名称は、「イリス・ザウス・ナヴァン・ギッライ」、うーん誰も知らないわよね。私たちの旅の仲間以外知らないはず。」


「なんじゃ、その長ったらしい名前は…。」


モモの言葉に、苦笑いを浮かべながらジェニファ・ロダンが思わず口を挟んだ。だが、高齢な彼にしてみても教団の正式名称など聞いたことも気にしたこともない。生まれながらに教会があって、名前を与えられ、勉学し、祈る場所。それが教団という組織であって名など、どうでも良かった。


「ふふふ。でもこれは本当です。なにせサーシャも認めてるんだから。さて、なぜ教団は正式名称があるのに、それを表に出さず「教団」と言い張ったのか。これは魔術師集団を抑え込んだことにも関係していますが…その目的は…自分たちの宗教を世界の唯一無二にするため。つまり世界に一つしか宗教を認めないという考え方からきてるの。もしさっきの長ったらしい名前を出したら、神を崇める宗教や教団が多く出てきても文句は言えない。でも教団という大きな括りで認めさせてしまえば、次に出てくる教団は二番煎じ、または偽物、まがい物というレッテルをはればいい…それが理由よ。」


「それって…」と、魔術師のレイアは思わず目を丸くする。500年前、自分たち魔術師は、各々で世界中に小さい宗教を開いていた。それを追放し迫害していたのがファティ大司祭率いる教団であることは、彼女たち魔術師の伝承の書に書かれている。つまり、教団の目的は最初から、宗教を世界に一つにするためだったことが分かってレイアは驚いたのだ。


「そう。私たちはサーシャと共にいるから「教団」は正しく弱いものの味方という意識が強いけど、実像は違う側面も持っているという事。教団は教団で世界を牛耳る方法を模索していたってことね。」


モモはちょっぴりサーシャに申し訳なさそうな顔をして、彼女を見た。だが、サーシャはそのことを認めるように頷く。するとモモも目で合図しながら更に恐ろしいことを口にした。


「実はねぇ…。今回、エディアから盗んできた文献の中にすごいものがあった。それは、サーシャも知らないとんでもない事よ。」


「まぁ…聞くのが怖いわ。」モモのその鋭い言葉に、サーシャがそう呟くように話すと、その戦術家は横に座っていたジョセの肩に手を当てて、


「それは、各ページ毎に分けられていて、まるで暗号のようになってた。それを見つけたのはここにいるジョセよ。彼は本当の天才だわ。これは、彼から発表してもらいます。ジョセ、どうぞ。」


と話すと、自分は一旦椅子に腰を下ろした。そしてそれと変わるように、ジョセがゆっくりと立ち上がる。彼はとても小柄な男で丸坊主だ。歳は30くらいだろうか。彼は背筋を伸ばして説明を始めた。


「では、説明します。私が発見したのは、世界中の信者や修道士から教団の聖地に集まってくる金の流れです。そしてそれは、エディアという国が、なぜ教団によって作られたのかさえ、暴いてくれました。」


彼はそう話すと、大きな紙を机の上から差し出し、皆の前に掲げた。そこには、手書きで書かれた金の流れが克明に記されている。


「教団に集まってくる金は膨大です。世界の国家予算を集めても到底及ばないほどに。まず世界中から集められた寄付金は各地の大きな教会に集められ、その後その地区をまとめる司祭の元へと運ばれます。これは赤ローブと言われる方々。今回出席されているセドリーヌ様やピオ様のところです。」


「それは、間違いありません。」ジョセの言葉に、セドリーヌ司祭は大きく頷き、そう応えた。彼は、セドリーヌに小さく頭を下げると話を続ける。


「そして、次に青ローブと呼ばれる中位の司祭の元に集められる。さて、ここからが問題です。青ローブの元へ集められた金は、一旦ここでプールされます。そして、最高位の司祭の一族カスティリャ家へと上納されるのですが…そのカスティリャ家へと流れる金は全体の半分にも満たない…。」


「え?でも、カスティリャ家に収められるお金は、それこそ天文学的な数字ですよ…。」


サーシャが思わずその事を口走るとジョセは大きく頷き目を見開いて応える。その表情は、なにかサーシャに対して申し訳ないとでも言いたそうな顔に感じられた。


「はい、ですから世界中から集められた金は、そのカスティリャ家に収められた金額の倍以上あるということです。そして青ローブたちは、そのカスティリャ家に収めなかった金をエディアに渡すのです。」


「はっ?」サーシャは彼の言葉に耳を疑った。だが、ジョセはこの事には自信を持っていた。それは、聖騎士キートンの配下である人物とともに調べ上げたことだからだ。キートンは聖騎士最強クラスの一人で、エディアにいるサーシャの数少ない理解者でもある。


「これは、我々幻影騎士団がキートン閣下の配下の者とともに現在の事も調べたので間違いありませぬ。話しを戻しますと…エディアに収められた金は、今度はエディアがそのお金を元に、全世界へと投資します。投資と言えば聞こえがいいですが、高利の金貸しです。そのバックも元本が多いが故、莫大な金を生みます。それこそ寝ていても生み出され続けるのです。」


「なんということ…。」サーシャは明らかに落胆した。まさか自分が枢機卿を務める教団に、こんな裏の顔があったとは晴天の霹靂だった。


「しかし彼らは、その事を指摘しても教団の金を管理しているだけだと言い張るでしょう。教団の運営費は、実はカスティリャ家からは出ていない。青ローブの司祭から出ているんですから。これは上手いやり方だ。カスティリャ家には、それ相応の金を渡し、目を瞑れと言っているようなもんです。サーシャ様がお生まれになるまで、カスティリャ家が表に出てこず屋敷奥深くに引っ込んでいた理由はこれです。要は、青ローブを中心とした取り巻きが出さなかった。それこそ「カスティリャ家は神なのだから、表に出てはいけない」とでも言い含めたのでしょう。」


「と、いうことはサーシャが出てくるまでは、カスティリャ家は本当のお飾りだった…ってことか。」


アルバが目を丸くしてそうジョセに尋ねると、彼は大きく頷いた。


「ええ。だから一般の民はそれこそカスティリャ家の名前さえ知らなかった。それは「神」そのものだから、修道士でさえそのことに触れられなかった。サーシャ様がでてくるまでは…ですけど。」


「しかし、ジョセさん、そのことと教団がエディア国を作った訳とはどう繋がるんだ?」


アルバの当然の問いにジョセは大きく頷いて、自分の坊主頭を掻きながら応えた。


「はい。教団は、表向きは弱き正しき民の味方でなければならない。つまり、金を取り扱えないんです。信者や修道士たちは、自分たちから集めた金でカスティリャ家が教団を運営していると思っている。だがそこで、欲深い青ローブたちは考えた。教団の金を教団とは別の組織を作ってそこで運用すればいいと。名目上は教団は金を扱わなくてすむ…と。」


「それが、エディア国…」


「そうです。エディア国は、教団に集まった金を運用するためだけに作られた国です。そして時が経つにつれて教団が行う「人に知られたくない…一言で言えば汚いこと」を全てエディアに押し付けた。教団を人々の希望と正きことしかしていないと見せかけるためにね。ですから教団はそれを覆い隠すために、エディア国が教団の上であると思い込ませる必要があった。そこで、彼らの宮殿の一部を借りるカタチをとったり、エディアの国内に聖地を設けた。最初、教団はエディア国に宮殿と土地を借りているという名目で、金をエディアに渡していた。でもそれは実際にはエディアで投資する金に変わり、そのリターンで教団は丸儲けした。」


「しかし、そんな大それた事をすれば、誰かに気づかれそうなもんだが…」ジェニファ・ロダンはそう疑問を口にした。彼は経済のプロだ。そんなに金が集まれば経済は歪な形になり、周辺諸国から当然睨まれ、疑われる。だが、ジョセの答えは現実とリンクしたすごいものだった。


「はい、だから彼らはすごい手段をとった。誰の目にも止まらないように…大地を…国を…宙に浮かべた。それはおそらくファティ大司祭のお力かとおもいますが…。」


「なんと!」それにはいつも冷静なロイスを始め、全ての仲間が大きな声を上げた。確かに教団の聖地があるエディアは、空に浮いている。それはサーシャ自身も認めているので間違えがない。


「もちろんそればかりが理由ではないと思いますが…。何にせよ、空に浮かんでいれば、誰も戦争も仕掛けられない、神のいる場所として教団の威光も高まる、おいそれと文句も言いにいけない。良いことずくめです。そしてこの事が、世界を貧困に追い込んだ最大の理由です。」


「わからない。教団とエディアがボロ儲けしていることは分かった。だけど、それと、世界の貧困とどう繋がるんだ?」


アルバはまるでサーシャを擁護するようにそう突っ込んだ質問をした。だが、その質問の答えたのは、ジョセではなく経済の専門家ジェニファ・ロダンだった。


「アルバくん。金というものは不思議なもんだ。君のような真っ当な人間には、金が金が生むということ自体、意味がわからんじゃろ。だが、生む。簡単にな。」


「それは…どうして?」


「それは利子、金利というものじゃ。エディア国が行っていた投資は、国単位にお金を貸す。そりゃもう莫大な金じゃ、国づくりには金がいる。だが、どこの国にもそんな金はない。するとエディアは国に金を貸す。利子をたっぷり受け取る約束でな。そして、国はその金を使って開発をする。だが国はその開発で利子を上回る儲けを出さないといかん。だが、高額な利子を返す開発などそうそうない。」


「それって…イストがはまったことか」


ジェニファ・ロダンの説明に、アルバはそう呟いた。以前、アルバは仲間とともに、東の島国イストを救ったことがある。その時、エディア国はイストを借金漬けにして国の統治権を奪おうとしていた。


「そうじゃ。国は利子が払えんくなって、またエディアから金を借りる。もう、そうなったら経済学からいっても絶対に金は返せん。どんどん借金が膨らんで…あとはエディアのいうことを聞くしかない。抜けられない蟻地獄じゃ。そして、その国借金地獄に陥った国は、今度は民に重税をかける。または、エディア国の真似をして、国民に金を貸して利子で儲ける。要は、そのツケはどんどん民に降りていくんじゃ。そして、国はやせ衰え、またエディアから借金する…堂々巡りじゃ。」


彼の丁寧な説明は、経済に明るくない者でも分かりやすかったらしく一様に納得した表情をみせた。だが、サカテがふと疑問を口にする。


「なんで、ロハンはそうならないんだ?」


「ふふふ。ロハンはザグレアの帝都から独立していて、エディアの管理下に置かれていなかったことが一つ。それとロイスという天才がいたからじゃ。こ奴は、世界で唯一エディアに借金がないフィルファと太いパイプを持っていた。そうジャン閣下だ。儂の街、ルンとともにフィルファからの援助で街は再生した。それにそもそもロハンは国でなく、街だからな。予算も少なくて済んだのも大きな要因じゃ。」


ジェニファ・ロダンはそう澄まし顔で、サカテの問いに応えた。ここザグレアは国が滅んで、町それぞれが自治を始めたので、エディアの影響が少なくて済んだという事らしい。


サカテが納得し、一同が落ち着くと再びモモが椅子から立ち上がった。そしてジョセと何ごとか少し小声で話しをしながら頷くと、また全員を見渡しながら話し始めた。


「さて、今のは経済の観点から見た教団の話しをしましたが、次は、宗教としての教団の成り立ちをご説明します。私たちは、偶然にも「ファティの日記」という、500年前を生きた教団最高位のファティ大司祭の文献を手に入れることができました。これが本物である証はありませんが…現在の最高位の司祭サーシャがこの日記は本物である可能性が高いと言ってくれたので、ここではこのファティの日記に沿って、教団の成り立ちを説明します。」


「それはまた、すごい発見じゃの…。」この話には教団の司祭であるピオが驚いた顔で反応した。ファティ大司祭については、ほとんど資料がない。ただ、神の力を使え、サーシャのように美しく、教会にある女神像のモデルになった…ぐらいしか情報がなかった。だが、そんな彼にサーシャはバツが悪そうに話しかける。


「ピオ司祭。でも、これも教団には結構耳の痛い話しです。心して聞いてくださいね。」


「またですか…。今日はどうも教団関係者は肩身がせまいですね…」


ピオ司祭は、サーシャの言葉に肩を竦めてそう漏らすと、すかさずモモが笑って応える。


「ふふ。サーシャもピオ司祭もそんなに心配しないで。これはあくまで500年前の話。少なくとも此処に集まっている修道士さんたちは、みんな真面目でまっすぐな方ばかり。あなた達を批判する気持ちなんてサラサラないから!」


そもそもファティの日記を証明することなど不可能だ。半分以上は、それは神話のようで、とても人知が及ばない内容なのだから。モモはとりあえず、今の教団の話ではないと前置きしながらも、ゆっくりと話を続けた。


「さて、その「ファティの日記」によると、教団を最初に立ち上げたのは、エディア教祖を始めとしてイスト、ザグレア、フィルファの4人。今ではとても信じられないけど…不人気の教団だったの。だいたい名前が長すぎる!」


モモがそう話すと一様に笑いが起きた。だがすぐに、教団を立ち上げたメンバーの名前にロイスが反応する。


「その名前は、今の国名と同じですね。」


「そう。現存する国の名前と同じ。最初のメンバーは13人。数から言って、おそらく他の修道士も今の国と同じ名前よ。そこで、皆さん…思い出して欲しい。この世界に残る伝承として有名なフレーズがあるでしょ?」


「おお、あの教会の歴史の授業で習うやつか?」サカテはモモの言葉で察したように応えると、モモは大きく頷いた。


「そう!一応、大きな紙に書いてきたから!」


モモはそう言うと、丸めいた大きな用紙を伸ばしてそのまま開くと、皆に見せる。その紙にはこう書かれていた。



生き残った人間は、神から与えられたという13個の珠をそれぞれが持ち、世界に散っていった。その珠は、小さな小さなシロモノだったが、それぞれに色が違い、それぞれに役割があり、すべてに不思議なチカラが宿っていた。


世界に散っていた人々は、残された大地にその珠を神から授かった者を「王」として13つの国を創った。

やがて珠を持つ王に導かれた人々は復活し、田畑を耕し、街をつくり、文化を生み出し本物の「国」が作り出された。


その文章は、アルバ以外は一度は見たことがある言葉だった。アルバは子供の頃の記憶が飛んでいるので見覚えがないが、他の者は教会や施設で一度は目にした事があった。モモは、皆が一様にそれを見たのを確認すると言葉を続けた。


「ファティの日記は、半分は神話のような内容。それを掻い摘んで話すと、神から生まれたファティの原型が、イストという女性の修道士と融合して、私たちが知る「ファティ大司祭」になったと書かれていました。」


「なんと!ファティ大司祭の原型は本物の神だと?それに融合というのは…イストという修道士に取り憑いたということか?」


ピオ司祭がその信じられない言葉に大きな声を上げたが、モモはその巨漢の司祭に優しく微笑む。


「こればかりはわかりません。ファティの日記は全部で4冊あるらしいけど、私たちが見つけたのは最初の一冊だけ。全部見つけられたら謎が解けるかもしれないけど…現段階では、事実確認は難しいわ。」


「ふむ。なにせ、500年も前の話だからの…。」


「そういうことです、ピオ司祭。だから今はその日記に沿ってお話ししています。信じるか、信じないかは別にして話を進めますね。」


モモはそう前置きすると、再び手に持っていた資料に視線を落とし、丁寧に再び話を始めた。


「神から生まれたファティに人間のイストという女性が取り込まれ、ファティ大司祭は生まれた。しかし、それは大いなる矛盾も生んだ。もともと教団の教祖はエディア。イストは、ただの司祭。だが、神の力を手に入れたイストは恐らく自分こそが「神」であると、彼の立場を奪い取ったはず。これが今に続くカスティリャ家の血が生まれた時だと思われます。」


モモはそう話すと、チラッとサーシャを見た。サーシャは変わらず背筋を伸ばし、凛としている。この事実は既にサーシャと旅の仲間は十分理解していたので、特に驚くことはない。だが、この話はある意味カスティリャ家を侮辱している話とも言える。モモは、先ほどからずっと親友のサーシャの事を気にしていたのだ。だが、彼女は動じる様子はない。(さすが、サーシャだわ)モモは改めて感心せずにはいられなかった。


「確かにその可能性は高い。だが、そうなると…エディア教祖の立場は…」ロイスがそう漏らすと、モモはさすが天才ロイスとばかりに声をあげた。


「そう!当然、エディア教祖は面白くない。それにどうも、イストとエディア教祖は途中から仲が悪くなっていた節がある。日記にも丁寧にその事が書かれていたからファティとなったイストは、彼を冷遇したはず。」


「そうね…。女の恨みは怖いから!」


「ふふ、サーシャが言うと本当に怖いわ。さて、ここからは私の推測。ファティは、恐らく最初の教団のメンバーを教団から追い出した。自分だけを神格化するために、自分がイスト司祭だった頃を知る12人の男たちを。ただ、その見返りとして、教団から去る代わりに世界を13つに分けて、彼らをそれぞれの国王とさせてあげた。恐らく、その時に国を治めていた王族を皆殺しにして、彼らに国を与えた…ってとこかしら。」


「そこまでやるか!?」アルバは思わずそう声をあげた。幾ら何でもこの優しいサーシャの祖先がそんな酷い事をするとは到底信じられなかったからだ。だがモモは呆れたように彼を見て、諭すように告げた。


「アルバ。だから私の推測だってば!でも私はファティ大司祭なら、やり兼ねないと思ってる。彼女の力は、本当の神と同じ。恐らく指一本で世界をひっくり返せるほどの力を持っていたはず。なんといっても、エディアを宙に浮かせちゃうくらいだからね。それに彼女は日記を見るにつけ、サーシャよりも思想が極端よ。自分が正しいと信じたらもうすぐに実行しちゃう。」


「モモは、ファティ大司祭が嫌いなのか?」


「ふふ。アルバは心配しすぎだって。ファティ大司祭は、貴方の愛するサーシャとは別人よ。私もサーシャは大好き。でも正直ファティ大司祭の事はよく分からない。私はただこの日記からこういう人かなって想像してるだけ。だから、あまり間に受けないで。彼女の正体は、一緒に旅でみつけましょう。」


「ああ。…そうだな。」アルバが落ち着きを取り戻してそう応えると、モモは「本当にあなた達には妬けるわ。」と、ボソっと言ってサーシャを少し見てから話を続けた。


「さて…言い伝えを信じると、ファティ大司祭はその13人に「珠」を与えたとある。彼らはそれを持って世界中に散らばり国を興した…と。」


「だが、イスト司祭がファティ大司祭になったなら一人足らない。イスト国へは誰がいったんだ?」


「アルバ、それもまだ謎。だけど、残りの日記を見つけて読み続ければ分かるかもしれない。それより問題なのは、今の国王の名前が国の名前と違うということ。例えば、我がフィルファ国の国王の名前は、ルーク・ヘクトール陛下。フィルファという名前は何処にも残っていない。すると、ファティ大司祭から「珠」を託されてフィルファ国を興した「フィルファ」という男は何処に消えたのか…そっちの方が気にならない?」


モモの言葉に、そこのいた全員が「おお…という声をあげた。確かに、伝説を信じるなら「珠」を託された13人の人間は国を立ち上げて王になったはずだ。だが、13のどこの国にも国と同じ名前の国王はいない。すると、彼らは何処に行ったのだろうか…。そもそもそれなら国を興した英雄の王として歴史に刻まれているはずだが、フィルファもイストにも国と同じ名前の国王の痕跡は残っていない。


「私は、ここにも大きな謎があると思っています。そしてその証拠に魔術師集団を率いていた男の名は「エディア」。私は、最初にファティ大司祭から「珠」を譲り受けた13人は、その本人かまたは子孫がこの世界の何処かにいると信じています。」


モモはそう告げると、再び報告書のページを捲った。

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