会議2 魔人と精霊人と魔術師
モモは随分と説明を急いでいた。本当なら、その場にいた仲間たちも彼女に質問したいことは山ほどあったが、それを解決しながら進むととても終わらない。モモは、とりあえず全てを話した上で質問を受け付けるつもりだった。そしてその事は、そこにいた全ての仲間が分かっていた。モモは、一度大きくため息をつくとそのまま「魔人と精霊人」の話しを続ける。
「まずは、精霊人と魔人。この呼び名は、ちょっと混乱するけど実はどちらも同じもの。但し、この2つはいろいろな意味を指していて、使い分けが難しい。レイアさんは、サーシャに「魔」の精霊王バロールについた精霊人の事を魔人と呼ぶと言った。一方で、アルバとジャンのお友達の魔人は、精霊人と魔人は呼び名を分けたのは、遥か500年前に当時の教団最高位のファティ大司祭によって住み分けされたものだと言った。サーシャには、辛い事実だけど…ファティ大司祭に味方した者を精霊人、敵対したり姿や醜いものを魔人と呼んだらしいわ。つまり立場や人種によって、呼び方や指すものが違う。だから、私はレイアさんの名誉のためにも、彼らを精霊人と統一して呼ぶこととします。」
「ちょっと待った!バロールは全ての精霊人の王ではないのか?。」モモの言葉にサカテがたまらず口を挟むと、モモは親友の彼女を見て大きく首を縦に振った。
「それも私たちの勘違いよ。バロールは全部で…これは予想だけど11種類いる精霊人の王の一人よ。バロールは「魔」の精霊人の王であって、全ての精霊人の王じゃないの。私の結論は精霊人=悪ではないということ。むしろ…彼らは我々人間よりも、自然と共に生きて心優しい種族だと思っている。精霊人には全部で、11の種類がいる。ファティの日記に載っていたのは13種類だけど、「光」と「神」の力はサーシャしか使えないから、私の予想で11人。でももっと少ない可能性もあるけどね。」
モモがそう話すと「まじか!」とサカテはかなり驚いた顔をした。時が経つにつれて新たな事実が明るみに出てくる度にサカテは目を丸くする。だが、それはこの仲間たちが求める「世界の理」と「消された500年前の真実」に迫るものであることは確かなようだ。モモはサカテが納得した表情を確認するとそのまま話しを進めた。
「さて、この精霊人は「下位」「中位」「高位」「最高位」「王」の5つに分かれていることがわかった。だけど…「最高位」と「王」の精霊人に関しては、まだ我々の手には負えない。でも私たちは精霊人の「最高位」と「王」に2人も会っているのよ。」
「つーか、2人も会ったのかよ!誰だよ!」
「ふふ。サカテ。その一人と会ったのは貴女よ。貴女は、ドリュアスに会っているでしょ。ドリュアスは木の精霊の王よ。もう一人は、勿論バロールの娘ベアトリーチャ。彼女は「魔」の最高位の精霊人。でも幸か不幸か彼らは人間を憎んでいない。そのお陰で、私たちも世界も無事。」
「ああ、ドリュアスか。あいつは確かにいい奴だった。」
サカテはモモの話に会得するように大きく頷いた。サカテはプチ家出をした時に、偶然森の奥深くでドリュアスに会っていた。彼は美少年だったが、とても心優しかった。
モモはそんな嬉しそうな彼女に笑みを浮かべると再び真面目な顔で話し始めた。
「さて、ここにも矛盾が潜んでいる。精霊人…特に「魔」の精霊人バロールは、人間を世界から排除しようとしている。それは、エディア国も魔術師集団も望んでいない。」
「なるほど…。と、いうことは」
「そう。私たちが最大の勘違いはここ!エディア国も、魔術師も、精霊人も繋がっていない!みんなバラバラに事を起こしている。」
モモはそう自信を持って言い放った。これには全員が呆気にとられたが、間違いなくこの天才軍略家の話は理にかなっている。そしてそれを証明するように、いきなり魔術師のレイアが再び立ち上がると話しを始めた。
「私たち魔術師は、精霊人を従えているわけではありません。あくまで友として信頼を築き、そのお力を借りるだけです。そのため、「下位」と「中位」の精霊人を友に持つものが殆どです。上位の精霊人を友としているのは、ごく僅か。最高位や王の精霊人など見たこともありません。」
「ふむ。君たち魔術師は、精霊人の王の取り決めに従うことはないと?」ロハンの執政ロイスがそう尋ねると、レイアは大きく頷く。
「ありえません。魔術師は、あくまで精霊人にお願いをする立場です。そもそも立ち位置が大きく違います。力もないのに高位の精霊人を呼び起こし、命を落とした魔術師なんてザラにいます。私たち、魔術師にとっても精霊人は恐ろしい存在でもあるんです。そもそも精霊人の方から、魔術師にお願いする…なんて話は聞いたことがありませんし。」
レイアがそう説明すると、今度はサーシャが口を開いた。彼女はいつもように黄金色の髪を触りながら
「レイアさんのお話は御尤もです。そもそも精霊人は、人間にとっては「下位」といえど、迂闊に近づけぬ神に近い存在です。そんな力を持つ精霊人が、魔術師にわざわざモノを頼むはずがありません。そう考えると…確かに魔術師と精霊人が手を結んで事を起こすなんてことはありえない。」
と結論付けた。すると、モモは先ほどのページを指差して
「「エディア国」「魔人」「魔術師」「教団」「エディア以外の12の国」。このうち、「エディア国」「魔人」「魔術師」が進もうとしている道はわかりました。そして彼らがバラバラだとうことも。さて、ここからは「教団」「エディア以外の12の国」の話しをしたいと思います。」
と、話しを続けた。




