会議1 エディアと魔術師
その会議は、ロハン城の中階の一番奥にある貴賓室にて行われる事になった。
その部屋は、窓がなくすべて厚い石で覆われていて、縦に長い長方形の部屋だった。ドアも分厚い。部屋の中央には縦長の立派な机が置かれ、その机を囲うようにロハンの色であるブルーのソファが置かれていた。灯りは、ランプだけだが十分の明るい。
今までは、事がことだけに最小限の人数で行われていたが、今回はエディアから盗みとってきた文献とファティの日記という世界的に貴重な資料が集まったが為、それを精査したフィルファ国の「幻影騎士団」のメンバーも3名ほど顔を揃えていた。
そして、アルバとサーシャの新しい仲間となった、ベルトランとコルドバも皆に紹介するため、この会議に同席している。
ロハンからは、領主アルバ、執政ロイス、将軍ステラ、書記カエデ、近衛兵隊長アタナト、あとルンの領主ジェニファ・ロダンの顔も見える。
フィルファからは、宮廷騎士ジャン、幻影騎士からはモモを筆頭に、ジョセ、ベーカー、マタの4人とフィルファ王ルークの側近である執政官とその秘書も立会人として来ていた。
イストからは、空挺騎士団長のラルが国を代表してきている。
教団からは、サーシャ枢機卿、ザグレア地区司祭セドリーヌ、ロフテン地区司祭ピオ、キルド修道士ミナミ、ルン修道士アカネ、ジンボ修道士パオラ。
そしてアルバの仲間として、サカテ、ベルトラン、コルドバ。そしてそのアルバの仲間の横に魔術師のレイアが座る。
総勢24人の会議となった。
会議が始まる前に、座ってサーシャと話していたアルバの元に、幻影騎士団のメンバーであるジョセという男がお礼を述べにやってきた。
「ご挨拶が遅れ申し訳ありません。モモの配下でジョセと申します。先日は、ありがとうございました。」
だが、アルバはその男に覚えがない。いきなり礼を言われたので少し戸惑いながらもゆっくりと立ち上がる。
「あ、こんにちは。あの…すいません。お会いした事ありましたっけ?」
「はい。パンドラ軍に捕まっていた時、アルバ様とベルトラン様にお助けいただきました。」
「ああ!あの時の!」
アルバはその言葉で思い出し、笑顔を見せた。それは、ロンドという国がパンドラという国に攻め込まれた時の話だった。アルバとベルトランの2人は、当時助けを求めてきたロンドを守るための、攻めてきたパンドラ国の軍の陣営に忍び込んでいた。その時に偶然出会ったのが、捕虜として敵に捕まっていたフィルファの幻影騎士団に所属するジョセたちだった。
彼らが所属する幻影騎士団は、諜報活動が主だ。パンドラ軍の中に忍び込んでいたジョセは不幸にも、敵に見つかり拘束されていたのだが、たまたま忍び込んでいたアルバとベルトランに助けられていた。
「でもちゃんと無事に逃げ延びたんですね。さすが幻影騎士団だ!」
アルバが嬉しそうにそう話すと、ジョセは頭を深く下げた。そしてまるで王にでも忠誠を誓うような姿勢をとって話し始めた。
「お二人が我々の盾となってくれたからです。このご恩はいつかお返しいたします。」
「いえいえ。もうお釣りがくるくらい、ご協力して貰ってます。あなたがた幻影騎士団が持ってきてくれる情報でロハンは何度も救われましたから。」
アルバはそう話すと頭を下げた。
それぞれが席につくと、一人一人に資料が配られた。それは、今日の報告事項が書いてある紙でモモが仲間の幻影騎士団とともに徹夜で纏めたものだった。その資料が全員に配り終わると、まずはロハンの執政ロイスが立ち上がった。そして、一度深く頭をさげるといつものように通る声で話を始めた。
「今日は、我がロハンの友である両国と教団の方々のご列席賜りまことにありがとうございます。本当ならばご丁寧にご挨拶を述べねばなりませんが、我々には何より時間が大事。失礼のことお詫びしながら、話を進めさせていただきます。」
ロイスの言葉に、そこにいたメンバーは大きく頷く。そもそも数人を除いて此処に集まった仲間は気心がしれて信頼性も高い。今更、あいさつどうこう言う人物などいない。
「まず、ロハンからご報告がございます。この度、我がロハン領主アルバが2人の頼もしい仲間を得ることができました。一人は、狂戦士として世界に名前を轟かせていたベルトラン殿でございます。」
ロイスがそう話し、彼女を指し示すとベルトランは椅子から立ち上がり、一度礼をしてすぐに座った。いつもは自由奔放で野獣のようだが、サカテに「名前を呼ばれたら立って、頭をさげて、座るんだ。それだけでいい。」と言われていたのでベルトランは得意げにその通りにした。(サカテ、これでいいか?)(おお!完璧だ!)2人はコソコソと話し笑う。
「おお、貴殿があの名高いベルトラン殿か…。」
周りからベルトランの名を聞いて感嘆の声が聞こえる。なにせベルトランは、世界最強と称される聖騎士との戦いでも命を繋ぎ、結局アルバとともにその聖騎士すら打ち倒している。さらに、ロハンに来てからも数々の紛争解決や今回のレダル・ロフテン連合軍侵攻に際してもサカテと共に敵の中枢深くに入り込み食料庫破壊という戦果を挙げていた。それにより、レダル・ロフテン連合軍は作戦変更を余儀なくされ、結局モモとロイスの策略にまんまとはまり、総兵数の半分を失うという大打撃を被った。ベルトランのやり遂げた事は、結局味方を勝利に導く原動力となったのだ。
白い髪に褐色の肌、そして顔半分が刺青というスタイルも伝え聞くベルトランの姿そのものだった。敵ならば恐ろしい事この上ないが、味方であるばこれほど頼もしい女はいない。
「もうひと方は、コルドバ殿です。まぁ。私が今更説明する必要などないのですが、世界最強の傭兵で、水の騎士という別名もあります。彼女もこの度、我らに協力してくれることになりました。」
ロイスが彼女の名を呼ぶと、サカテが軽くユラの背中を叩いた。ユラは、反射的に立ち上がり頭をさげる。戦闘の時と正反対の彼女は人前が苦手で、知らない人々に囲まれるとすっかり上がってしまう。この時も自信なさそうに顔を上げないで、小さい声で呟くのが精一杯だった。
「あ、あの…よろしくお願いします…。」
ユラがそう囁くような小さい声で話すと、周りからはまたどよめきが起きた。ベルトランの時と違い、その見た目は地味で大人しい。皆、これが世界に名を馳せるコルドバとは誰も信じられなかったようだ。だが、そこでアルバが口を開く。
「彼女の見た目に騙されると、とんでもないことになります。「意志の力」は、仲間の中でも彼女が最強だ。彼女と模擬戦をやったが、はっきり言って普通に戦ったら俺でも勝てない。」
アルバのその言葉にその場の全員がアルバを見据えた。アルバはもはや生きる伝説になりつつある。その彼をして「最強」だの「勝てない」などと言われたら、周りは彼女の力を信じるしかない。特にフィルファ宮廷騎士でアルバの親友でもあるジャンは目を丸くした。
「え〜?ほんと〜?」
「ジャンも後で戦ってみるといい。本気出さないと怪我じゃ済まないぞ。ユラさんは、エディアで聖騎士を2人も病院送りにしたんだ。」
「まじっすか〜?そりゃ、とんでもない化け物だ…。」
ジャンとアルバの会話を聞いて、周りは再び感嘆の声を漏らした。教団を守る聖騎士は強さを図る上で分かりやすい指標だ。その聖騎士を2人も病院送りにしたということは、あながちアルバの物言いも大げさでないことがわかる。
「コルドバ殿は、普段はユラというお名前で生活します。どうか宜しくお願いします。さて…。」
ロイスはそこまで話すと一度、「ゴホン」と咳払いをして3人に手を向けた。すると、サカテは「立つぞ。」と小声でつぶやくと、両手をそれぞれの背中をポンっと叩く。すると、サカテ、ベルトラン、コルドバは揃って立ち上がった。
「来年、ここロハンはいよいよ帝都になります。そう、ザグレアは国として再び復活します。そして、我らはアルバ様とサーシャ様という最高の王と王妃をお迎えする。そんな彼らを守り共に戦う仲間として、今や白の槍使いとして名が売れたサカテ殿、狂戦士ベルトラン殿、水の騎士コルドバ殿の3名を、ロハンの3大天宮廷騎士とし世界に発表します。これは、盟友であるフィルファの宮廷騎士団やイストの空挺騎士団にも負けるとも劣らない偉大な宮廷騎士になると自負しています。」
ロイスがそう声高らかに宣言すると、周りからは拍手がおこった。実は昨日、ロイスはアルバとサーシャを交えてこの事を、3人にも話していた。ベルトランは、「にいちゃんといれるならなんでもいいぞ!」と快諾し、コルドバは「就職させてくれて、名誉までも与えてくれるなんて…」と感激してくれ、サカテは「僕に宮仕えが務まると思うか?」と苦笑いを浮かべながらも承諾してくれていた。
「皆様方のお城やお屋敷に使者として、または救援として向かって貰うこともありかとおもいます。どうぞお見知り置きください。」
ロイスがそう話し終えると、3人は頭を下げた。(よくもまぁ…こんな連中が集まってくれたもんだ…。)彼女たちを見ながらルンの領主であるジェニファ・ロダンは、自身の顎鬚を摩りながら、目を細める。もしアルバが王となれば、その領内にあるルンの街もその支配下に入る。普通なら、ルンの最高権力を奪われる形となるロダンにとっては由々しき事態だと誰もが思うが、実は彼の思いはその真逆でウキウキしていた。アルバ、サーシャという雄を頂きに掲げ、国づくりが始まることを心待ちにしていたのだ。彼は80歳をとうに超えているが、まだまだ死ねないと最近やけに体が元気だ。来年、ロハンが国になる時、ロダンは財務の最高責任者となることが決まっていた。
ロハンからの報告が終わると、いよいよとばかりに、モモと他3名の幻影騎士団が立ち上がり、手に持っていた資料をパラパラとめくった。彼らの机の周りには分厚い本が幾つも重ねられていて、その中には先日発見した「ファティの日記」まであった。モモは、昨日纏めた資料を確認するように一通り見終えると、姿勢を正しゆっくりと話し始めた。
「フィルファ幻影騎士団のモモです。今日はよろしく御願いいたします。さて…もう皆さんがご存知の通り、世界は再び戦乱に飲み込まれようとしています。ここロハンも実際にロフテンとレダルの連合軍に攻め込まれました。今、世界に散らばる幻影騎士団のメンバーからの報告によると、フォスナは、アトラスの北1/3を占拠したとのこと。パンドラ軍がまた懲りずに戦いの準備をしていること。そして、サイ国はどうもアトラスに攻め込もうと目論んでいる節があります。そして最南端の国ミューレルは、船を大量に作っている。その造船所が東の海に集中しているところから察するに、ラルさんの国イストが狙いのよう。これが、今集まってきている世界情勢です。」
モモが発表した内容は、ある程度把握している者もいたが最南端の国ミューレルがこの会議の同盟国である「イスト」に攻め込もうとしているのは意外な事実だった。ラルは大きくため息を吐いたが、特に口を挟むことなくそのまま傍観することにしたようだ。
「では、次のページをご覧ください。」
モモは、ここでは特に諸外国の対策にふれないで次へと進む。皆が一様にページを捲るとそこには、「エディア」「魔人」「魔術師」「教団」「12の国」と大きく書かれていてその文字の下に、説明書きがしてある。モモは、一度水に口をつけると、報告書を皆に見せるようして話しを続ける。
「まず、今まで私たちはこう考えてきました。エディアが魔人と魔術師を使って、サーシャのいる教団を滅ぼそうとしている…と。そしてその戦いに12カ国が巻き込まれていると。」
「そうじゃな。それが我々が認識している大きな骨格じゃ。」ジェニファ・ロダンがモモの問いにニンマリとして答えると、彼女は笑みを浮かべこの会議に参加していた魔術師のレイアを見た。
「そこにおります見慣れぬ黒い法衣をきた女性は、レイアさんといい…魔術師です。」
「あ、初めまして。レイアです。」
レイアは、モモに紹介されたので立ち上がり、みんなに向けて会釈した。モモはその彼女を指差しながら、ゆっくりと彼女の元へと歩き続ける。
「彼女の事は、皆さんにも軽く紹介してあるのでロハンにいる理由は省きます。私は、今回彼女と話して大きな矛盾を見つけました。その矛盾は私たちの「予想」を大きく覆すことになり、真実は別にある事を指し示しています。それを説明するためには、まず魔術師集団の目的を皆さんに知ってもらう必要があります。」
「目的…ですか?」
「はい。魔術師集団の目的は、サーシャの一族カスティリャ家の滅亡及び500年前に奪われた自分たちの名誉を取り戻すことです。話すと長くなるので簡略して言うと、魔術師集団は500年前に世界各地で宗教を起こしていて、民から信頼された敬られていた一族。つまりサーシャの教団ができる前は、世界中の民は魔術師集団の宗教を信じていたんです。」
モモは、そう話しながらレイアの肩に優しく手を置いた。その事実を知らない者は、「なんと!」と驚きの声をあげて顔を狼狽させる。特に、教団の司祭であるセドリーヌとピオは明らかに動揺した。
「彼女たち魔術師の伝承を信じるなら、世界各地で普通に民と共に暮らしていた彼らは、突如現れたファティ大司祭率いる「教団」に、力によって街から追い出され、迫害され、蹂躙された。と、いうことになっています。…レイア、ここまではこれで合っているかしら?」
「はい、モモさん。間違いありません。」
モモの問いにレイアは、真面目な顔で頷いた。モモも軽く頷くと、彼女の横に立ったまま報告書を指差して話しを続ける。
「エディアから奪ってきた書物から、エディアはカスティリャ家を自由に「操りたい」のであって「滅ぼしたい」わけではない事が分かっている。そりゃ、そうよね。教団は世界中に根付いていて、教会という世界を支配する基盤がある。エディアは実に合理的な国だから、それを利用して世界を牛耳りたいというのは理に適っているし、そう考えるのが自然だわ。わざわざ教団を壊して、また新たな宗教を立ち上げるなんて手間のかかることはしない。」
「確かに…そうですな。」ロハンの執政ロイスは彼女の言葉に大きく頷いた。あの国は、産業と呼べるものが何もない。しいて言えば金融という「金」を扱う事に長けた国だ。一度仕組みを作れば、何もしないでも金を生む。そんな国がわざわざ手間とお金をかけて新しい事に取り組む訳がない。
「そう!だから、エディアはサーシャを殺そうなんて、露ほども思っていない。まぁ、アルバは八つ裂きにしたいでしょうけど。」
「勘弁してくれ!」アルバがそう顔を顰めながら答えると、一同から笑いが漏れた。モモは、レイアに「レイア、ありがとう。座って。」と話しかけると再び机の中央部分に戻った。そして、先ほどの「矛盾」と言った理由を話し始める。
「ここで早くも矛盾が生じた。エディアは、サーシャを生かしたまま使いたい。だけど魔術師集団の第一目標はサーシャを殺すこと。この2つが手を取り合って協力するなんて…おかしいと思いませんか?」
「確かに…、だが、エディアが方向転換したという事は無いだろうか。もうカスティリャ一族なしで、教団を乗っ取ろうとした…とか?」
ジェニファ・ロダンがそう疑問を投げかけたが、モモは軽く頭を横に振った。
「ロダンさん。私もそれは考えたけど…それはないと断言できる。そもそも教団は、今はサーシャブーム。そりゃそうですよね。神の力を使えるだけでなく、世界各地にある教会の女神像とそっくりなんだもの。全ての敬虔な修道士は、カスティリャ家ではなくサーシャに忠誠を誓っているのが現実。」
「確かに…」
「つまり今やサーシャがいないと、誰も教団を纏められないの。それこそ、何をしなくてもいい。ただ居るだけでいいの。それだけで教団はまとまる。エディアがそんな重要な駒を捨てるわけがない。さっきも言ったけどエディアは合理的な国なの。無駄なことは一切しない。」
「なるほど…それは分かりやすい。」
ジェニファ・ロダンはその流れるようなモモの説明に納得し、ニンマリと笑みを浮かべた。確かに、サーシャが生まれてからというもの教団はサーシャ一色だった。神の力を使えることは勿論、その讃える微笑みは世界中にある女神像そのものだった。さらに、アルバと共に世界中の国を周り、教会や街、時には国を救ってきたことも修道士たちを陶酔させた。もしサーシャと教団の意見が食い違っても、彼らは教団の命令よりもサーシャのお願いを聞くだろうことは容易に想像できる。
「私たちは、国としてのエディアを大きく勘違いしてしまっていた。なにか、すごく大きな「敵」のように勝手に妄想していた。でもそれは大間違い。サーシャですらその事に気付かなかったんだから、当然よね。はっきり言うと、もうエディア国なんて気にする必要のないくらい小さいものよ。」
「へ?そうなの?」
「サーシャ、そうよ。あなたとアルバに辛い思いをさせてまで「コンフィの指輪」をエディア国から奪還してきたことがここで効いてる。彼らにはもう打つ手がない。」
サーシャの問いに、モモは彼女の目を見て明確に答えた。そして得意げに話しを続けた。
「考えてみて。彼らは、コンフィの指輪を使って精霊人を蘇らせていた。それは、何の為か。エディア国がサーシャを使いたい以上、貴女を倒す為じゃない。それは偏に、聖騎士を葬るため。エディア国にとってはとにかく聖騎士が邪魔だった。何をするにもあの世界最強の騎士団が教団にいる以上、教団は牛耳れない。力で抑えられてしまうからね。」
「しかし…。あの国には魔術師がいるわ。魔術師は、魔人を封じ込めた扉を私以外で開けられる可能性があるんでしょ?例え、コンフィの指輪がなくたって…」
サーシャがそこまで話すと、モモはいよいよドヤ顔で女神を見返す。
「サーシャ。そこが、大きな勘違いだったのよ。貴女は、エディアに魔術師がついている…そう思って疑わないでしょ?」
「うん。そのお話はいろいろな人から聞いたもの。エディアには魔術師集団という恐ろしい組織を持っているって。」
サーシャがそうはっきりと話すとモモは、再びレイアを指差した。
「まず!魔術師は、精霊人が眠る扉を開けられない。これは、なんと言っても当の魔術師に聞いたから間違いないわ。ねぇ、レイアさん!」
「はい。そんな話…聞いたことも見たこともありません。私の精霊人たちを解放するときも、コンフィの指輪が使われていましたから。もし、私たちに開けられるならそんな面倒臭いことしませんし。」
レイアは、モモの問いに明確にそう言い切った。モモは、彼女から視線を外すとこの貴賓室に集まった全ての人々を見渡して、決定的な言葉を言った。
「そしてサーシャのお話。エディアには魔術師が付いている…それは言葉の大きな勘違いだったの。レイアたち魔術師はエディア国に従っていたわけじゃない。エディアという老人に従っているの。つ・ま・り。レイアたち魔術師が言う「エディア」とは、国ではなく「一人の人物の名前」なのよ。彼女たちが総領と呼ぶ魔術師集団のトップは、エディアという老人なのよ!」
「それって…まさか!」
アルバはモモの言葉であることを思い出し、思わず叫ぶ。それはジンボの街で見たファティの日記のことだ。500年前に、ファティが略称イザナギという宗教に入り込み力を貸した時、その宗教のトップは「エディア」という名前の老人だった。
「アルバ!正解よ。魔術師集団を率いているのは、エディア国と関係のない「エディア」という老人。その老人が、あの日記に登場した老人本人なのか、子孫なのかはわからない。でも、ここまで繋がっていると偶然なんてことはない。」
モモはそう話すと、その部屋にいた仲間は一様に深いため息を漏らした。
「さぁ…。これで、エディア国と魔術師の関係はほとんどないという事が分かった。なにせ最終目標が違うから共闘する可能性も薄い。とすると、コンフィの指輪をなくしたエディア国はもう何もすることがないの。さて、次は精霊人と魔人、そして魔術師の話しをするわ。」
モモはそう話すと、自分で持っていた資料をめくった。




