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槍使いのサカテと少年




サカテは、ここザグレア地方の北西にある”サイ”という国の出身である。


サイは美しい山々が国土のほとんどを締める国で、自然と共存しながら人々は暮らしている。

平地が少なく穀物を育てるのには向かないけれど、山からの恵みは多く、獣肉や山菜、キノコ類が豊富だ。

その他にも豊かな天然資源である木材や石を売ることで外貨を得ている。要は、食べ物も資源もそのほとんどを山の恵から享受しているという事だ。

またこの国は、世界唯一の宗教である”教団”の影響力が強いことでも有名で、そのことが度々問題を起こす原因となってしまっていた。一説には、教団に刃向かう者をこの国に幽閉し、拷問や殺戮が行われてるなんて噂まである。


ちなみに彼女が生まれたのは、パートパーラという町だ。

元々、お茶栽培農業が盛んなお土地柄で、紅茶の名産地なのだが、この街が有名な理由はそれだけではない。

それは”ムカサ”という槍術の達人が開いた大きな道場があるからだ。

何せこの道場、常時300名ほどの門徒がいて、木造ながらその大きさは一間としてはサイの国最大の建造物だったりする。そしてここは槍術と棒術の専門道場として知られ、世界中から腕に覚えのある猛者が集まることでも有名だった。

その道場を取り仕切っているのがムカサという訳だが、この御仁はサイの国の英雄様で、パートパーラ周辺に巣食っていた山賊たちを一掃したり、ロフテンやアトラスなんていう強国の侵攻を追い返したりと、大車輪の活躍で知られていた。

サイにはもう一人、ベルトランという化け物みたいな剣豪がいるのだが、残念ながらこちらの方はお尋ね者で、やはりこの国の英雄といえばムカサだ。

そして、サカテはそのムカサが最も気にかけている女槍使い。厳しい事で知られる彼の道場に幼少の頃から通い、わずか17歳で師範にまで上り詰めた、いわゆる天才だった。


「見聞を広げてこい。」


サカテが20歳になったばかりの頃、彼女はムカサからそう背中を押され旅に出ることになった。

まぁ、尊敬する先生の勧めだ。すぐに承諾したが、すぐに疑問も生じる。

「どこへ行って、何をすれば…?」って、いうやつだ。

恐る恐るその事を先生に問うたら、「旅をしていれば自ずと目標や目的ができるもの。」と返され、若干謎かけみたいなお言葉をいただいた。

とは言っても、いきなり宛のない旅っていうのはさすがに無理がある。

そこで彼女は最初のうちはムカサの知り合いの道場を紹介してもらい、文字通り武者修行に勤しんでいた。

その生活は、それまでと比べると実に刺激的で有意義だった。

何しろいきなり山奥から旅立ち、様々な国や街の文化や人々に触れるのだ。常に新たな発見があり、勝手にいろんな情報が飛び込んでくる。

まぁ、まがい物やよもや話みたいなものが多いのだけど、稀にとっても気にかかる内容なんてのもある。


その一つに、” 天翼の槍 ”と呼ばれる伝説の槍の行方なんてもんがあった。


一説には、500年前を生きた英雄が扱いし聖槍として、どこぞの教会に封印されているなんて噂があって、今も人の目に触れる事なく眠り続けていると言われる。

まぁ、普通の人が聞けば、このとっても疑わしい、若干都市伝説的な香りのするものを信じる者なんて少ない。

ところが彼女はこの槍の逸話を先生であるムカサから聞いてしまっていた。

尊敬する大先生のお言葉だ。当然のようにサカテは最初から思い切り信じていたりした。

そして一度信じると、それに纏わる噂を拾い集めるようになり、自分の都合がいいように勝手に解釈を始めてしまうものだ。

当然彼女も例外ではなく、僅か数ヶ月で天翼の槍信者として、すっかり出来上がってしまっていた。

と、なればだ。


( ぜひ欲しい!! ) 


槍術の頂を目指す彼女としては、その欲求はとても自然なものであった。そして彼女は、有名な武芸家や道場を転々とする傍ら、その伝説の槍の情報をコツコツと積み上げていく…。

ところが積み上げて積み上げても、どれだけ情報を集めて確証がつかめない…。

サカテは出会う武芸家たちを修行と称して張り倒し続け、襲ってくる強盗と変態を叩きのめしながら、その天翼の槍とやらを探し続けていたら、いつの間にやら1年なんていう歳月が過ぎてしまった。まぁ、この時期に彼女は実戦を数多く経験し槍使いとしての腕と評判は飛躍的に上がったのだから、皮肉といえば皮肉だ。

まぁ、そんな乱戦につぐ乱戦を経験した…そんな時だった。

ロハンという砂漠の街に槍刃造りの名人がいらっしゃる…そんな噂を聞いた。

( 槍に関わりのある人なら、もしかして…。 )

なんて、軽い気持ちでロハンへ訪れたのだけど、そこで彼女は運命の出会いをすることになる。そしてその出会いは彼女の運命と目標を大きく変えた。


それは、とある少年との出会いだった。

そしてその槍づくりの名人の孫は、過酷な運命を背負っていたのだ。


同情した…訳ではないが、なぜかその子が気になった。

サカテは天翼の槍探しを一時中断してまで、その少年の為に世界中を奔走する事になったのだけど、それがまたとんでもない難問で、そこから既に4年も経ってしまっていた。

だが半年前、ついに転機が訪れた。

それは、その問題解決に大きく近づく情報を入手したって事なのだが…。

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