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槍使いの励まし



盗賊達に攫われたサーシャを助け、ひょんな事からお知り合いになったサカテという女槍使いを伴って、アルバが村に戻ったのはお昼過ぎだった。


元々の目的であったイワミ山の鉱山には行くことは出来なかったが、盗賊に狙われたにも関わらず無事にワラミ村に帰ってこれた事に、アルバは心底ホッとしていたものだ。紆余曲折があったとはいえ、結果的にサーシャを助けられたことに、若干胸を張りながらワラミ村の隠された裏門をくぐり、高い壁の中に入ることができた。

この村は、一風変わっていて村をぐるりと囲んでいる壁が城壁のように厚い。その為、門をくぐるとまるでトンネルから出てきたような錯覚に陥る。


「へぇ…。」


その門をくぐり、村の風景を見て最初に声をあげたのはサーシャだった。彼女は昨日は夜に村を訪れ、陽が登る前にここを出たので明るい時間の村を見るのは初めてだったのだ。

霜がおり時期的に何も実っていない畑と作物や種を貯蔵する倉庫が点在するのどかな田舎の風景。

都会的な彼女にとって、とても綺麗に映ったのかもしれない。


「さぁ、行きましょう。」


アルバはお腹が空いていたので、急かすように2人の先頭を行った。

様々な畑や倉庫の中を縫うように伸びる畦道を3人はゆっくりと進む。

昼間なので寒さは厳しくないが、透き通るような淡い空色が寂しげに広がっていて薄い雲が幾重にも横たわっている。

その田舎独特の美しい光景を進む3人だったが、先頭を行くアルバはちょっと気になったことがあり、ちょくちょく無言で後ろを振り向いていた。それは実を言えば、サーシャとサカテとの事だ。

サーシャにサカテを紹介していた時は、2人は仲良く話していたようにお見受けしていたが、あれからとんと話している様子がない。恋人どころか、女友達もいない自分にしてみれば女同士の間柄など分かるべくもないが、なんとなく女性というものは話し好きなイメージがあったのでとっても不思議で、ちょっと不安だった。

( なんかあったのかな…。それともやっぱり合わないのかな…。 )

少し心配になった。まぁ確かに、今日会ったばかりで見た目も性格も正反対の2人だ。そう簡単に打ち解ける…なんて事はないのかもしれないが、これからせっかく3人でランチするのだ。できれば和気藹々と食べたいものだとアルバは切に願う…。


やがて畑を抜けて、3人は村人が多く住む長屋地帯に足を踏み入れた。

白ローブを羽織った絶世の美女と真っ黒な服に身を包んだ小さい女、そして超貧乏なアルバ。

まぁ予想はしていたが、そのとっても不思議な3人の組み合わせに、道ゆく人々から痛い視線が飛んでくる。


「なんか…年齢層高くねぇか?」


と、その様子を逆に注意深く観察していたサカテがふとそう漏らした。


「本当ですね。みんなお仕事に出ているのかしら。」


サーシャも彼女に同意したようにそう答える。内容はともかく、2人が話してくれたことに胸をなでおろした。

とりあえずホッとして、自分もその会話に入ってみる。


「いえ、この村で若者といえば俺だけなんです。だから、友達もいなくて…。」


「まぁ…そうなのですね。不思議ですわね。」


「だな。」


この村には子供達を除いて、40歳以下は自分しかいなかった。記憶が鮮明に残っている時分からそうだったから、その事に疑問を持った事などなかったのだけど、言われてみればおかしい事なのかもしれない。

そこからは、「全然建物ねーし…。」とか「畑が雑!」やら「いい男いなし!」みたいなサカテの一口感想から、3人の他愛もない会話が続き、気がつけば目的地であるアルバの家の前にたどり着いていた。


「…これって…家なのか?」


そして最後のサカテ一口感想は、本当に辛口だった…。まぁ、アルバの家はそれはそれは慎ましやかなものなので、そのお言葉はいた仕方がないが。


「いえいえ。コンパクトで、とってもいいお家ですわ。近くに温泉もありますし。」


すかさずサーシャがフォローしてくれる。さすがは優しいサーシャさん!って少し嬉しかったけど、自分の家のお話なのでアルバはなんとなく口を噤んで2人の会話を聞くことにした。


「まぁ…付き合いたての貧乏カップルには、ちょうどいいかもな。」


サカテはそう漏らしながら、呆れたようなため息を落とす。


「でしょう?昨日は、部屋に枯れ草を敷き詰めて一緒に寝たんですよ。」


「はっ!?お姫様…昨日ここに泊まったのか?この坊やと一緒に?」


サカテが唖然とした表情を浮かべ、あからさまに驚愕した。。

いやはや、このサカテさんもまさかアルバとサーシャが閨を供にしたなど思いも寄らなかった。

つーか、アルバの話では、サーシャには師匠さんなんていう彼氏だか許嫁がいたはずだがって眉をひそめる。

しかも2人は昨日出会ったばかりだ。


すると怪訝そうな表情を浮かべるサカテに、サーシャが恥ずかしそうに言葉を続けた。


「はい。アルバに手を繋いで貰えて安心して眠ることができました。」


「…あっ、手を繋いだだけね。」 


…それなら納得だ。まぁ、若干常識はズレてるが、何せ相手はこのお姫様だ。


「ええ。実は昨晩も、今朝の盗賊さんたちに襲われてしまい怖かったんです。そんな臆病な私を彼はとても心配してくれたんです。アルバはとってもお優しいんです。」


サーシャは溢れるような笑みを浮かべながら、何やら嬉しそうにそう話した。だけど、サカテにとってはそのお言葉には違和感しかない。このお姫様みたいな御仁は、見るにつけとっても肝が座っている。それに彼女の素性を少しだけ知っているサカテは、とっても疑いの眼差しで彼女を見てしまった。


「お姫様は、全然臆病には見えないけど…。さっきもやけに落ち着いていたし…。」


「いえいえ、世間知らずなだけでございます。騎士様がいないと何もできませんわ。」


「ふうん…。」


「あら、お疑いですか?」


何やら、争いごとが起きる前兆を感じ取ったアルバは慌てて言葉を挟む。

大好きな女性と恩義がある女性…こんな2人が喧嘩したらたまったものではない。


「み、水を…飲みましょう。喉、渇いたでしょ?」


アルバはとりあえずそう言って、家の前にある粗末な井戸へと走り、桶を投げ込む。

寒空の下といっても、あれほどの距離を移動して来たのだから、喉も渇く。本当ならお茶の一つも出してあげたいが、そんな高尚なものアルバの家には存在しない。


「お手伝いしますわ。」


するとすぐにサーシャが自分に寄り添って、ロープに手を添えてくれた。サカテはテケテケと無言でついて来ただけだったけど。

とりあえずサーシャと2人で、縄を引っ張り、水の入った桶を引き上げる。そして首を傾げたかのように斜めになているその大きな桶の中に、備え付けのコップを入れて水をよそうと、3人は申し合わせたように回し飲みを始めた。

…なんか、仲間ができたみたいで嬉しかったけど、2人がお姉さんっていうところがちょっぴり恥ずかしい。だけど友達すらいないアルバにとってはなんとも賑やかで楽しい時間だと感じられたものだ。


「さて…では私は、昼食を作りますわ。アルバ、お台所をお借りしてもいいかしら?」


やがて、水を飲み終えたサーシャが変わらぬ笑みを浮かべて、そう尋ねてくる。


「も、もちろんです。」


「ふふっ。ありがとう。」


「なんか、またサーシャの料理食べられるなんて…すごく嬉しいです。ありがとうございます。」


素直な気持ちをそのまま言葉にしてしまった。


「アハッ。騎士様は、変な事を言いますね。それは当たり前というものです。」


「当たり前…ですか?」


「はい。」


サーシャは溢れるような笑みを浮かべて大きく頷くと、そのまま自分の小さな小さなお家の中へと入って行った。何度もなんどもアルバを振り返りながら…とっても嬉しそうに。

あいも変わらず、自分の心を惑わせる彼女の気持ちの奥底は分からないが、とりあえずは今は幸せだと感じることはできる。何しろ、好きな女性と共にいれて、そしてご飯まで作ってくれるのだ。

と、その様子を黙って見ながら、水を飲んでいた黒装束のサカテが急に口を開いた。


「君たちは、本当に仲がいいんだな。さすがは騎士と聖女だな。」


その何気ない一言に、アルバは「おっと〜!」って思った。それはとても興味をひくお言葉だったからだ。

何しろ、如何せん”騎士と聖女”って意味が分からない。もしサカテが知っているならぜひご教授いただきたいって思ったのだ。


「…すいません、サカテさん。あの…騎士と聖女ってなんですか?」


もうストレートに聞いてみた。当然だが彼女は驚いた表情でこちらを見返してくる。


「はっ?お前は彼女の騎士なのだろう?何を今さら…。」


「いえ…ほら、臨時と言ったでしょう。」


アルバが頭を掻きながらそう弁明すると、彼女は井戸の淵に腰掛け一度小さなため息を漏らした。

自分がそのことを知らなかった事が結構ショックだったようだ。


「全く…。こんな事なら、君にいい格好をさせずに、お姫様は僕が助けるんだった。君が彼女の彼氏かなんかかと思ったから手伝ってやったのに。」


「ハハッ。ごめんなさい。でも、あの時は本当に助かりました。」


「…呑気なやつだ。」


サカテはそう呆れたように肩を竦めると、やがて淡い水色の空を見上げた。


「僕も詳しいことは知らない。ただ、それは男女の関係性を示す言葉らしい。」


「関係性?」


「そうだ。ほら、恋人とか…夫婦みたいなやつ。騎士と聖女の2人は、恋人よりも熱く、夫婦より深いって言われるんだ。生まれた時より相手が決まっていて、共に生きる事を宿命づけられているとも。」


…思わず、倒れそうになった。なにせこのサカテの言葉は、なかなかに衝撃的だったからだ。

待て待て待て…。もし本当にそうなら、彼女との事を再構築しなくてはならなくなる。

なぜなら、どれだけ自分が強くなっても、彼女とも距離を詰めても、サーシャが師匠なる男を忘れ、自分の方を向くことはないという事だからだ。これには、如何な呑気な自分でも思わず頭を抱えた。できれば、昨日そのお言葉を聞きたかった…と。


「教団の理なのだそうだ。まぁ、信じるも信じないも本人次第だな。」


アルバの気持ちなど知らないサカテは、そう呑気に話す。


「そう…なんだ。」


「ちょっと、アルバ!なんでそんな事で元気無くすんだ?」


「いやいや、だってさ…。」


「君さぁ…本当にメンタル弱いよな。」


「だって師匠って人が彼女の騎士なら、もう恋人よりもタチが悪いじゃん。俺の出る幕がない…。」


「…まぁ、そう決めつけるなよ!騎士と聖女なんて教団が作ったおとぎ話だなんていう奴の方が多いんだ。だいたい、彼女が聖女だって決まったわけじゃないんだし。」


「…でも、俺を騎士だと言ったのはサーシャだし…。騎士と聖女の理なんて言葉も口にしてた…。」


…もう頭の中では、サーシャが聖女だと決めつけていた…。なんとも寂しい気持ちになる。


「だけど、昨日も言ったけど…彼女は君の事をとっても気に入っているように見えるぞ?」


「…まぁ、それは俺が、彼女が本物の騎士を見つけるまでの護衛だから…じゃないかな?」


そう苦しそうに言葉を漏らすと、彼女は立ち尽くしているアルバのそばに寄ってきた。

しばらく黙ってそのまま横に立っていたのだけど、やがてゆっくりと口を開いた。


「別に無理にとは言わないけどさ…。良ければ、彼女との事、僕に話してみないか?」


「………。」


「絶対に笑わないから。」


「………。」


「話すと…楽になるぞ。」


アルバは、やけにしつこく迫ってくる彼女に、ゆっくり顔を向けた。


「サカテさんは、なんでそんなに俺に構ってくれるんですか?」


「…僕は、別に君に優しいわけじゃない。ただ、彼女の事をよく知りたいだけだ。」


「…そういえば、サカテさんも彼女に何か用があるって言ってましたもんね。」


アルバは自嘲気味に笑うと、やがて大きく手を掲げ伸びをした。

確かに彼女もサーシャに何か思惑を持っていて、自分に近づいたって事は知っている。

いつもは自分の事などあまり話さないんだけど…なんとなく、サーシャとの立ち位置が同じな気がして、一緒に空を見上げながらゆっくりと昨日の事を話すことにした。といより、彼女との事を誰かに話したかったのかもしれない。


「別に…何か特別な事があったわけじゃないんです。ただ、昨日、いつものように石を売ってたら彼女が店を訪れてくれて…。 いろんな事情や事件が折り重なって、石を買ってくれた彼女とずっと一緒にいることになってしまったんです。そしてさっき、サカテさんが言ってくれた様に、彼女はとっても俺に優しくしてくれて…。」


「………やっぱりな。」


「今まで俺はずっと一人だったから…きっと、初めて女の人に優しくされて、勘違いしちゃったのかもしれません…。ハハッ、よくある話でしょう?」


「そうかもな。」


「でもね。なんとなく彼女の気持ちもわかるんです。こっからは俺の予想ですけど…彼女はなんらかの理由で師匠さんていう本物の騎士様と離れ離れになってしまって、彼を探す旅に出てるんじゃないかって。だけど、中々見つからなくて、寂しくなっちゃって…。そうしたら、丁度いい…都合のいい俺を見つけて…ちょっとだけ甘えてくれたのかもしれません。ほら、俺は女みたいにヒョロヒョロで、臆病で無害。彼氏さんを探すお抱えの剣士としては、とっても好都合でしょ?弱いのが難点ですけど…。」


…もう、自虐ネタが満載だ。これには、サカテもちょっと暴走に静止をかけてくる…。


「…いや。アルバさぁ、さすがにあのお姫様もそんなに性格悪くないと思うぞ。」


「ハハッ。だけど、彼女が頼ってくれる事が本当に嬉しくて、幸せで…。あの人の側にいられるなら、もう何でもいいかなって。」


「………。」


「例え短くてもいい。彼女が師匠さんに会える時まででいいから、側に居たいなって思ったんです。」


アルバは顔を俯かせ、ゆっくり頷いた。

…確かに彼女の言った通り、サカテにサーシャの事を話すとすごく楽になった気がした。

全然知らない赤の他人で、もう二度と会わない彼女だからこそ、恥ずかしいことも割とすんなり話せたのかもしれない。

当のサカテは、小さい体をより丸くして腕を組んで何かを考えている様だった。


「だから、彼女が頼ってくれる限り、ついて行こうかなって…。」


アルバはもう一度空を見上げて、そう言うと静かに目を閉じた。

自分に酔っている…とは思わないけど、なんとも悲しい道を選んだものだと哀愁が勝手に漂ってしまう。

すると急にサカテが口を開く。


「何かを守りたかったら…進むしかないんだ。いいんじゃないか。」


なにやら意味深な言葉だった。


「どういう事ですか?」


「何もしないで、じっとしているよりずっといいって事だ。」


「ハハッ。そんな格好いいもんじゃないんです。」


何とも情けない声でそう話した自分に、サカテは急に真面目な目をして顔を覗き込んでききた。


「…騎士っていうのは、聖女をずっと見守ることを使命としているそうだ。そして、なんびとが来ても彼女の進む道を阻むものを許さない。立ち塞がるのが、例え王でもどんな有名な剣士でも…聖女の話す言葉だけを信じ、心に寄り添い、聖女の敵を全て消し去る…そんな男たちのようだ。」


「…すごく、格好いいですね。聞いてるだけで気持ち良いです…。」


アルバは体をそらし、目を細めながら思い切り息を吸い込んだ。だが、彼女はそんなアルバの肩をバシッて一発叩く。


「バカ!気づかないのか?君は、もうそれをサーシャにしている。」


「…いやいや、俺はただ、逃げ惑っていただけです。いつも右往左往して…今日だってサカテさんに助けてもらって何とか…。」


「一人で無謀にただ立ち向かうのが騎士だなんて思わないけどな。勝てないと思ったら、逃げてでも彼女を守る。一人じゃ無理だって思ったら、体面もプライドも投げ捨てて誰かに助けを求めてでも聖女を救う。聖女にとっても騎士は自分の全てだ。命を賭して自分を守ってくれるのは嬉しいが、死んでしまったら元も子もない。違うかい?」


…ごもっともすぎて、ぐうの音も出ない。


「だいたい、あのお姫様が、『逃げるなんて格好悪い!』とか『もっと華麗に敵を一瞬で倒してよ!』なんて文句を言ったか?」


…その言葉に、ハッとした。確かに彼女は、逃げた時もギリギリで助けた時も、いつも満面の笑みで自分を褒めてくれた。


「言っておくけど、君程度の腕前で、あの盗賊たちに勝つなんて奇跡だ。だけど、君はそれをやり遂げた。」


…確かに、そうかもしれない。


「そして今、君もお姫様も無事でここにいる。…だから僕に言わせれば、君はサーシャの立派な騎士だ。」


彼女のその言葉は、とっても嬉しかった。

自分以外で、それを認めてくれる人が出てくるなんて思わなかった。しかもこんな近くに、今日出会ったばかりのほとんど他人に…。

アルバは短い記憶の中で、ほとんど人と深く関わらない人生を送って来た。だけど、こんな風に言ってくれる人が側にいてくれるのは、何ともありがたいなって初めて思えた気がした。


「サカテさん…。サーシャの師匠という人は、今日の盗賊さんクラスなら睨むだけで撃退するそうなんです。」


アルバはふと、そんなことを口にした。何でも的確に答えてくれるサカテに、全部話したくなったのかもしれない。


「ふうん…。」


「俺にもいつか、そんな事ができますかね?」


「…答えっていうのは人に聞くもんじゃない。自分で見つけるもんだって思うけどな。」


「なるほど…。」


「人は言葉じゃなくて、行動で信じるものだ。君も、臨時だぁ、日雇いだぁとか愚痴を言ってるばかりじゃなくて、彼女に行動で示せば良いのでは?」


「行動か…。」


「そうだ。僕は、騎士と聖女の理を全部知っている訳じゃないけど、所詮男と女だ。どんな綺麗事を並べても、やっぱり側にいる奴が強いっていうのは変わらないと思う。例え君が本物の騎士様じゃなくたって、彼女を愛おしみ、リスペクトして、護りきる事が出来れば、彼女の心が動かないとは限らないんじゃないかな。」


「…ちょっとだけ、希望が湧きました。」


アルバは、何だか気持ちを持ち直したと感じた。

たった数分の短い会話なんだけど、とても心が沸き立つ。それはきっと、このサカテの言葉に、嘘やおべっかがないからだって思った。つうか、こんな事を理路整然とわかりやすく話せる彼女にも興味が湧く…。

なにやらそんな彼女に感動していると、サカテは急にニカッって笑った。


「でもさぁ…アルバは子供のくせに、なんか落ちつているよな。」


「そ、そうかな?」


「ああ。せっかく年下なんだからさ、もっとあのお姫様に甘えて、がっつけば良いじゃん。」


「えっ?…がっつくって?」


「スキンシップ?」


その言葉にアルバは思わず吹いてしまった。


「無理無理。あんな綺麗な人に、俺が甘えられると思う?近づくだけで、足が震えるのに。」


「う〜ん…じゃ、いっそキスしてみるとか?」


その暴言で、つい敬語が崩壊してしまった…。


「ハァーーーーーー!?バカ!サーシャには想い人がいるんだぞ?」


「でも君は、その師匠って人からあのお姫様を奪おうってしてるんだろ?」


「だとしても…そんなサーシャが嫌がる事なんて出来る訳ないでしょ!」


アルバが若干ふてくされ気味にそう漏らすと、彼女は腕を組んで顔を掲げる。


「…う〜ん。とっても真面目な君の意見っぽいけど…。これまでの君たちの様子や話から察するに…僕は、彼女が君のキスを嫌がるとは思えないんだけどな。」


「そんな事、ある訳ないでしょ!彼女はそりゃ、世間知らずでズレてるとこも確かにあるけど…。とっても清廉で、優しいんです。清々しいほど、師匠って人を愛しているって…俺は思っています。」


アルバがそう言い切ったとき、家の引扉が開く音がした。

2人は同時に顔を向けると、サーシャがその扉の隙間から顔を出して手を振っていた。


「騎士様〜、サカテさん〜。ご飯〜!できましたよ!」


黄金色の髪を纏め左肩から垂らし、女神像のように安らかな笑みを漏らすサーシャ。

その彼女に、思うところはそれぞれだったが、とにかく今は飯だ!

そのことだけは、アルバもサカテも一致している。


「今、行きます!!」


アルバはそう答え、サカテとともに子供のように彼女の元へと駆けて行ったのだった。

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