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盗賊と黒装束

盗賊というのは、法を犯して人様から金品等を強奪する輩のことである。


彼らの種類といえば置き引きやスリなど少しカチンとくる者から、人を殺して金や物を奪っていくシャレにならない団体まで色々とあるのだけど、大体は自分より弱い者を捉えて、「おーおー、金目のもんを出さんかい!」と、直接的な暴力を行使しながら相手を脅し、有り金を巻き上げながら身ぐるみはいでは去っていく、普通の民からすると迷惑極まりない集団である。


一聞すると頭まで筋肉でできてるじゃないかって疑うほどの筋肉バカや、何も考えてない激情型の様な輩が多そうで、適当に人生を謳歌している少々頭がよろしくない連中の集まりなんじゃないかって誤解するけど、実は盗賊さんたち、きちんと組織化していて自分たちの鉄の掟なんていうのもあったりする。

ならず者の集まりゆえ、統制をしっかりしてないと仕事にならないっていうのが理由だ。まぁ、その統制の取り方が「法」ではなく「暴力と分け前」というとこがミソなわけだが。

しかも物や金の流れの様々な情報は、実を言えば官兵よりも持っていたりと、昨今の盗賊さんたちは意外と頭脳派でないと生き残れないので中々に難易度の高い商売だともいえる。


さて、そんな盗賊家業を生業にしている、髭もじゃ赤鼻のドリさんとその盗賊一家に、その日の早朝、ついに吉報がもたらされた。

何しろ、昨晩惜しくも逃した金髪の超がつく綺麗な姉ちゃんが、仲間を殺したガキとともにワラミ村から出たという情報をゲットしたのだ。

半刻ほど前に、見張りからその情報がもたらされた時、ドリは時をあける事なくすぐに作戦を立案し、近くでだべっていた仲間を緊急招集する。


「いいか、ドガの持ってきた話じゃ、例の2人は先ほど村を出て、裏道を使ってイワミ山に向かっているらしい。ということは、沢に沿って進むだろうから麓の草原に着くはずだ。あそこは隠れる場所がない!そこで襲うぞ!」


盗賊一家の親分であるドリはそう力を込めて、今や3人になってしまった部下たちの細やかなやる気を引き出そうと、いつもの二割り増しで高く拳を掲げた。


「おっー!!」 


なんて、一呼吸置いて仲間の3人も如何にも悪巧みをしていそうな声をあげてそれに応える。

まぁ今回はお金っていうだけじゃなく、綺麗な金髪のお姉さんとのイチャイチャがついてくるっていう袋とじ特典付きみたいなお仕事だ。

ドリは野望に満ちたその連中の顔を見渡し、満足そうに笑みを浮かべた。

何せこいつらは昨日、ヒョロヒョロのガキに返り討ちにあった新人くんとは違う。

先代の親分さんの時代から盗賊一家にいる経験も度胸もある古参の盗賊たちだ。

そこそこ剣の腕が立つチョビ髭のラドゥ、病人のような顔色だが斧使いのデブのダエグ、短剣を操る茶髪の色男のドガ。

もちろん、盗賊なのだから一癖も二癖もある連中だが、ドリが失敗したルンの街での盗賊稼業計画の後も、自分について来てくれたありがたい仲間だ。

うんうん、この3人はドリも信頼している。付き合いも長いし、あんまり自分に反抗的な態度も取らない。

しかも、今回はその他にもう一人いる。

さっきルンの街から来たばかりの助っ人さんである。腕をたつ御仁をと、裏のシンジケートにお願いして無理やり用意してもらったのだ。

そいつは可愛い部下たちの後ろ、少し離れた場所に佇んでいた。

もうね、その人物は子供みたいに小さく、諜報部員が着るような黒装束を纏った如何にも怪しさ満点の人物だ。頭からすっぽりと頭巾を被っているので顔は分からないのだが、無表情な切れ長の目だけが頭巾の開いた部分から怪しく覗いている。

短い槍を右手に持ち、微動だに動かず、ほとんど口も聞かない…いやはや不気味な事この上ない野郎だった。


「金には興味はない。白ローブを着た女に用がある。」


この黒装束は、ここに着た早々、それだけを言って押し黙った。思ったより高い声だったが、こいつを紹介してきたシンジケートの連中によると、街中で官兵を5人まとめて半殺しにした槍の名手らしい。その風貌からも、とても一筋縄では行かない人物とお見受けしたが、まぁ腕が立つ助っ人とか用心棒なんて類は、こんな扱いにくそうな連中が多い。

( 金は要らず、女にしか興味がないか…。 )当初、盗賊らしくないその動機に、ドリは訝しんだが、まぁただのスケベな奴なんてゴマンといる。何せ今回のターゲットはあの金髪姉ちゃん、ありえないほどの美貌だ。

( 腕が立つなら…まぁ、しょうがねぇ。 )

結局ドリはその怪しさ満点の黒装束を、用心棒として雇い入れることにした。何せ、今回はドリ一家の存亡をかけた戦い。もう、絶対に失敗できないし。


( あのガキは恐らくそんなに強くねぇ。こいつを使って一気に勝負をつけてやる。 )


ドリはその黒装束を一瞥しながら、そう気合を入れてアジトを出発した。




そんな訳でドリとその部下の4人と、そして怪しげな黒装束野郎の合計5名は、あの2人を追って馬を駆り、森を疾走していく。と、言っても黒装束野郎は、馬ではなく木の上を変な暗具のような紐を使って、ターザンか曲芸師の様についてくるのだが…。


( まったく…どこまでもふざけた野郎だ…。 )


ドリは自分の頭上をまるでムササビの様に木から木へと飛び移りながら馬と同じスピードで進む怪しげな用心棒を見ながら、苦々しく悪態をついた。…だが、もう作戦はすでに動いている。止まるわけにはいかない。


今回のドリの思惑はこうだ。


ガキがこの山に慣れているといえ、女連れ。

険しい山道を登りきった草原で、休憩をするはずだ。

なので作戦の実行場所は、その場所で決定とした。

早朝で陽が昇りきっていないからまだ薄暗いし、あそこには沢も流れているから、水の音もする。…そう、馬とはいえ相手に気がつかれる事なく結構近くまでいける。

気づかれたとしても昨日と違って、今回の場所は草原。2人が逃げ隠れできる場所はない。馬で回り込んで一気に取り囲んでしまえば、簡単に襲い掛かれる。


そして今回は、女を捕獲する作戦にきり変えた。


前回はガキを殺して、ゆっくりと女を捕まえようと思っていたが、あいつらは小賢しく、素早い。それよりも、ガキをいなしながら、女を捕まえる…これならガキがしぶとく抵抗しても、女を人質にして脅せば何もできない。

となると、最初はあのガキと女との距離を離れさせられるかどうかがポイントだ。


そしてそこからは時間との勝負だーードリはそう考えていた。一瞬でカタをつけないと、またまんまと逃げられる恐れはあるし、鉱山の仕事が始まれば厳つい鉱夫があの場所に来ないとも限らない。それはできれば避けたい…。

やがて、進む先の漆黒の森に、かすかな青白い光がうっすらと浮かんでくる。もうすぐ、森を抜ける合図だ…。その先に、獲物はいる。

彼は彼なりの流儀で、今や盗賊一家の唯一の生きる糧である金髪姉ちゃんとガキのいる場所へ突っ込んで行ったのだった。


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