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S’s~天空詩曲と滅びの歌  作者: 祖父江直人
最終話 天空の歌
30/32

12-B 天空の歌~Melody Rain

いよいよ大団円となります。

「止ま……った?」

 地震により大きく軋むルソラの家の一室で膝を抱えていた千鶴が、最初にそれに気付いた。それに呼応するかのように、ルソラが部屋に入ってきた。

「どうやら、終わったようだね。やりやがったよ、あいつら」

「や、やったぁ!」

 歓喜に打ち震えるルソラを、千鶴が勢いよく抱き締めたので、宿屋の主人は真っ赤になって制止する。

「おい千鶴!あたしにそんな趣味はないよ!」

「あ、すみません。つい……」

「ったく。どちらかというと、これからのあたしらは敵同士だよ。過ごしてきた時間はあんたの方が長いかもしれないけど、シンは渡さないからね」

 一つの戦いが終わり、また新たな戦いが始まりを告げたようだった。千鶴はキュッと口を結ぶと、いった。

「はい、負けません!」


 上空からは歌が響いている。リートレルムの危機に、敵も味方もないということか。

「こっちもそうしてくれるとありがてぇんだが」

 小型空船で脱出後、城下町に降り立ったコーディシア軍とアルマたちは、この非常時にも戦闘態勢を崩さないイギルスタン軍に取り囲まれていた。戦力差はざっとみて500対10,000といったところ。

「ちっ、おいテメェら、泣いても笑っても、これが最後みてぇだぞ」

 図らずも王宮に突き刺さった二隻の空艦を見てほくそ笑みながら、自身も砲撃の衝撃波を食らい満身創痍のアルマが兵士たちの戦闘に立つ。

「シンディオの魂は、ここにあり!!」

「うおおおおお!!!!」

「コーディシアも俺に続け」

「おおおおおおおお!!!!」

≪撃奏轟火―クウェイクディストーション―≫

 そうして、いざ白兵戦が始まらんとする一歩手前でぶつかり合う両軍の間に『戦奏器』の攻撃がやってきた。

「おおっと、最強の大将さんも登場か」

 アルマが目線を移すと、何故か自分以上にボロボロの元王子が王宮の方からゆっくりとやってきた。

「手出しをするなァ!!」

 拡声魔奏石も使っていないのにこちらの心臓を跳ねあがらせるほどの大声で自軍を牽制するオーミットに、アルマは唾を吐く。

「自分の手でかたを付けようってか」

 ややあって隊列の最善に進み出たオーミットがアルマと正対する。

「よお、師団長殿、一人で相手するってか?」

 オーミットの揺らぎのない目を真っ直ぐに見据え、アルマがいう。かつて、彼を守る立場だった自分たちが、こうして睨み合っているのは、本当にバカバカしい話だと思う。

 しかし、こちらにも譲れぬ信念がある。アルマは口を開き、その信念の言葉をぶつけにかかる。

「シンディオよ―――」

「―――我と共に在れ」

「……え?」

 オーミットはアルマたちに背を向けた。そして、イギルスタン軍に向かって、剣を抜いた。

「私の国の民を傷つけることは、許さぬ」

 アルマは、自分の頬を熱いものが濡らしていることにすら気付かず、その強大な背を見つめていた。

「イギルスタンの兵士たちよ―――」

 王が、我らの王が、帰還した。

「戦争はッ!終わったッッッ!!シンディオわれらの勝利だ!!!!」

 そして気付けば、大地の揺れも、収まっていた。


 娘や、妻と違い、自分は歌は苦手だった。この世界の崩壊を防ごうと、一心不乱で歌っていたので分からなかったが、恐らく、聴くに堪えない歌声だったことだろう。

「ラフティス。そなたの声が、また聴きたくなった―――」

 オーミットナイク・ジェス・シンディオよりもたらされた“絶歌”消滅の報に湧き上がる家臣たちを眺めながら、ドゴール王は呟いた。

 ミーファはまた、歌ってくれるだろうか。あの子の声は、母親によく似ていて、とても美しい。

『それはいいから、早く痩せてよね。甘いものを食べ過ぎよ、王様』

 そう娘にいわれ、渋々ダイエットに臨む自分の未来を想像し、ドゴールは静かに落涙した。


 かつて国を侵略した立場のものでありながら受け入れてくれた皆とともに歌っていると、不意に強固なシンディオの城が大きく揺れた。サイファはとっさにシーラを抱き締める。

 この方だけは命に代えても守る。死に損なった自分ができるせめてもの献身。

「アンディ……早く来て……!」

 先刻聞いた、自分の“きょうだい”だというガーゴイルの名を必死に呼ぶ“妹”に「大丈夫です。アンディが来るまでの間、私がお守りします」と声をかけ続ける。

 次第に揺れが収まった。どうやら倒壊は免れたようだが、次にまた同じ地震がくればどうなるか―――

「―――!アンディ!?」

 自分の身体の下で縮こまっていた主が飛び跳ねるように城壁の外へ出る。慌てて追いかけようとするサイファの耳に、通信魔奏石から声が届いた。“シンディオ王家の末裔”たる元同僚の無骨な声だった。

「オーミット殿……、そうか、終わったのだな」

 自然と笑みが零れるサイファの目の先に、長い黒髪をバタバタとなびかせる王女がきゃっきゃと跳ねまわっていた。

「アンディが帰ってくるっ!帰ってくるぞっ!!」

 リートレルムの夜が、明けようとしていた。


 陽が、じわりじわりと昇る気配を背に感じ、潮風が二人の歩みを止めるように打ちつける中、イーフは、ミーファの肩を抱き、城の断崖へと進んで行った。

「本当にいいの?イーフ」

 切れ切れの息で話す彼女に、ぶっきらぼうな言葉を返す。

「くどいぞ。ミーファのいない世界など、俺には意味が無い。死ぬときは一緒だ」

 初めてできた、自分の“居場所”になってくれる少女を抱き、自身も限界が近づいている身体で、あの日、図らずも初めて抱き合った場所まで歩を進めた。

 リートレルムを襲う崩壊の揺動は、シーラたちの“歌”によりやや治まっている。だが、これはあくまで時間稼ぎにしかならないということを、ドゴールから聞いていた。

 ロシェフの言うことを信用するのか、と訊かれれば、そんなことはできなかった。イーフが信用したのは、ミーファだ。だからここにいる。

「イーフ、私ね、音楽だけじゃなくて、自分のことも嫌いだったの」

 少年の体に縋り付くようにしながら、ミーファが自身の隠し続けてきた胸の内を吐露する。

「音楽が嫌いだって話をする前から、なんだかあなた、私に似ていた。世界の全てから責められているような、そんな強張った振る舞いをしていたから」

 生まれた時より、“滅びの力”を宿している自分。愛する父と母から生まれたこの身体、この声が、世界を滅ぼしてしまうということ。自分が嫌いなどとはいえず、さりとて愛することもできない。その板挟みに苦しみ続けた自分と、物心ついた時から親兄弟も拠って立つ国もないイーフは、境遇こそ正反対だがその中身はとても良く似ていた。

「そんな私の声を“きれいだ”っていってくれて、嬉しかったわ。出会いは、あんなのだったけれど」

 いって少し笑い、イーフの赤面した顔を見上げる。

「何を思い出しているのよ。本当に変態な兵隊さんね」

「うるさい。それにもう兵隊じゃない」

「じゃあ何?」

「お前を守る、騎士だ。俺の命は、ミーファと共にある」

 どこまでも堅苦しい物言いに、ミーファは本格的に笑い、泣き出した。

「死ぬのは怖いか?」

「ええ。でも、あなたが一緒にいてくれるのなら、踏み出せるわ」

 嫌いな音楽、嫌いな世界、嫌いな自分。そんなどうしようもない心が見つけた、心から愛する人。ならば、もう怖いものなど無い。

「行きましょう、イーフ。次はもっと、優しい世界に生まれましょう」

「どこでもいいさ。必ず会おう」

 二つの影が、抱き合ったまま、落ち……

「ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 叫び声と、何かが高速で飛んできた。イーフは首を背後に動かし、それを見つけた。

「ユキ!」

「え!?ユキ?どうしたの!?」

 ミーファも振り向いた瞬間、二人に勢い余ったアンディの体がぶつかった。抱き合った二人の体が落下していく。

「あ……」

 ユキが珍しく動揺した様子を見せ、落ちていく二人を見下ろす。ロシェフを吹き飛ばした穴からユキを迎えに来ていたアンディは平静と変わらず、落ち着いた様子だ。

『まずいことをしてしまったな、追うぞ、ユキ』

 ガーゴイルが急降下を開始し、間もなく落下する二人に追いついた。

「こらぁ!ユキ!何してるんだお前は!!」

 開口一番怒鳴られるユキだが、こちらにも言い分がある。

「ごめんなさい!でも、何であんなところにいたの!?」

 当然ですが、三人と一頭は、落ちながら会話をしています。断崖は結構高いです。いや、めっちゃ高いです。そういうことにしておいてください。

「いや、何って、“滅歌”を止めるために―――」

 いいかけるミーファを声に、ユキは被せる。

「止まった!!」

「え!?」

「なにぃ!!」

 無駄死に―――無駄心中を決行している二人の顔が青ざめる。

「早く!アンディに乗って!」

 手を伸ばすユキに待ったがかかる。

『ユキ、流石に我も三人を乗せるは辛いぞ』

「え?そうなの?」

『乗せられるのは二人までだ。イーフとミーファ、どちらかを選べ』

 ユキは真っ逆さまに絶賛落下中の少年少女を見比べ、いった。

「ごめん、イーフ」

「ふざけるな!!天秤にかけるにしても決断が早すぎるぞ!!」

「でも、ミーファの方がお姫様だし」

「随分と子供らしくない計算ができるのだなお前は!というか、お前の蒔いた種だろう!お前が降りろ!」

「嫌だ!」

 押し問答を続ける中、もう一つの影が彼らに近付いてきた。

「イーフ様ぁぁぁぁぁ!!!!」

 歴戦の兵士特有の、野太い叫び声。イーフは、その声をよく知っていた。

「ラキ!」

 小型の空船を操作し、こちらにやってくるイギルスタン軍第七師団第一部隊長はサムアップをしながらイーフに何かを投げ寄越した。それをキャッチすると、落下速度が緩やかになる。

「大丈夫ですか、イーフ様、それに、ミーファ様」

 ゆっくりと落下する二人を回収したラキは、二人の安否を確かめる。

「無事ではないが、命は助かった。礼を言う、ラキ隊長」

 空船で座り込むイーフが頭を下げると、ラキはやや尊大な調子で言った。

「私は隊長じゃありません、あなたが辞めたことで、師団長に昇格しました。今は、お前より偉いんだぜ?イーフ・・・

 不敵な笑みを浮かべながら、イーフの黒髪をわしゃわしゃと撫で回すラキに、イーフはふと、胸に暖かいものを感じた。

「そうか。ならば非礼を詫びねばなりません。私と、ミーファ様を助けていただき、ありがとうございますラキ師団長」

 味わったことない感情を顔に出さないようにしながら、努めて事務的に感謝を伝えたイーフの横で傷だらけのガーゴイルに乗った傷だらけのユキがのんびりと口を開く。

「良かった~。ギリギリだったね~」

「ユキ」

「なに~?」

「お前は後で説教だ」

「あうぅ……」

 落ち込むユキと共に丘に戻ると、東の空から陽が昇っていた。リートレルムが迎えた、新たな夜明けだ。

「綺麗……」

 ミーファが呟く。呪いのような“滅歌”の枷から解き放たれたその碧眼は、太陽の光を浴びて、より美しく輝いていた。

「死に急ぐのは良くないですよ、若いお二人とも」

 ラキが、年長者としての言葉を発する。

「こう戦争の多い世界に生まれると、生き死にに鈍感になってしまうものですがね、せめて生きている間くらい、その命、大事に持っていれば、何か変わるかもしれません。変わらないかもしれません。分からないから、生き抜いてみるのがいいんじゃないでしょうか」

 古参兵の諦観交じりの説教に、素直に頷くイーフは、ミーファを肩を抱き寄せ、昇りゆく朝日をじっと見つめていた。


 そして、朝。この朝は、さらに一日が経ってからの朝だ。何故かというと、連日連夜のハードワークから解放された安心感も手伝い、ついにユキが気絶したからだ。アンディに運ばれ、ルソラの宿で彼が目覚めたのは、きっかり二十四時間後のことであった。

 その間に、『最終戦奏器』という目的を失ったイギルスタン共和国と、戦争により国力が著しく損なわれた小国家連合の間で終戦の講和条約が結ばれ、イギルスタンには各国への賠償と、現アブソビエ、旧シンディオの土地をコーディシアに譲渡することが決まった。

 イギルスタン王家に一時的に主権が戻ったイギルスタンでは大規模な政治的粛清が行われる気配があり、次なる総統の座を巡り、新たな権力闘争が起こることが懸念されたが、国民からの信頼も篤い第一師団長のオーミットを推す声が多く、その線で調整を進めることに落ち着きそうだった。

 異世界からやってきた救世の使者によって滅亡を免れたとはいえ、壊滅的な被害を受けたリートレルムのこれからを話し合う為、旧シンディオの城にて、緊急のリートレルム議会が開かれ、各国で協調し、この難局を乗り越えるという声明が採択された。

 そして、共に一つの“歌”によって自分たちの暮らす大地を守ったという歴史を象徴するものとして、ローレアンヌ王家及び国家の再興が決定し、新ローレアンヌ王国の初代女王として、シーラサナル・ケルティフ・ローレアンヌが就き、まだ幼い彼女を支える為、コーディシア家がそのサポートに回ることになった。その後、ローレアンヌは、女王が隙を見つけてはしょっちゅう城を抜け出し騒ぎになる国になっていくことになるのだが、神ならぬ各国の国王および主権者たちは、大きすぎる王冠を被った可愛らしい新たな女王に頬を緩めていた。

 そんな話にユキが興味を抱くはずもなく、ただ、ミーファと、そのほかこの世界で出会った人々が無事だったことを喜んだ。

「やったぁぁぁぁぁ!!」

 丸一日眠っていたにも関わらずベッドの上で跳ねまわり狂喜乱舞するユキに目じりを下げながらルソラがいった。

「ユキ、興味は無いだろうけどさ、救世の英雄をどうしても祝いたいって、パレードがあるんだ。出てくれないか」

「うぇぇぇ」

 案の定面倒くさそうな顔をする。こういうところは本当に分かり易い奴だと思う。

「演奏させてもらえるよ」

「行く!」

 丸顔を綻ばせる。本当に、分かり易い。その単純さ、否、純粋さが、世界を救ったのだろう。


 旧シンディオの中心、旧シンディオ城下に設けられた特設ステージの上に、シンとユキ、それに何故かイーフとオーミットが立っていた。ステージの、向かって左からシン、オーミット、ユキ、イーフの順に並んでいる。

「おいユキ、シン。俺とオーミット殿は怪我人だぞ」

「何故こんな場所に俺がいるのだ」

 拡声魔奏石を通して、口々に文句を言う“新メンバー”たちを無視して、シンは自分たちを360度囲むようにに集まった数万人の“オーディエンス”達に演説という名のMCを始める。

「多くの、たくさんの命が失われようとしていた!戦争で、兵器で、何より、この世界の音楽で!」

 英雄の言葉を聞き漏らさぬよう、集まった者たちが水を打ったように静まり返る。シンは一つ息を吐いた。MCは前もって考えていた通りには喋れない。本当はもっと能天気なことを言うつもりだったが、自分の心が「そうはいかない」といっているようだ。

「それは、俺たちが止めた」

 語気を強めずに言うが、巨大な歓声が返ってくる。まだだ。シンはそれをなだめる。まだその“声”は取っておいてほしい。再び、静まり返る。

「これから、この世界がどうなっていくのか、俺には分からない。でも、昨日―――いや、一昨日か、あの出来事の後、確実に何かが変わった。何かは分からない。今城の上から偉そうに俺たちを見下ろしている、新しい女王様のことかもしれない」

 そういって、背後の城の窓辺からこちらを見下ろしているシーラを見やる。シーラが、にっと歯を見せて笑って見せる。その横に、完全に場違いな風体で千鶴が立っていた。完全に頭がパンクしている様子の千鶴に、ドラムに座っているユキが「せんせ~、ヒッヒッフ~」と緊張緩和にラマーズ法を推奨したので「その前に結婚が先です!」と怒鳴り、どうやら緊張は解けたらしい。

 爆笑の起こった会場を再び宥め、シンが続ける。

「ひょっとして、変わったのは、どこかの王女様に恋して、国王陛下から直々に睨まれているある男の、これからの人生かも知れない」

 話を向けられたイーフは、ふん、とそっぽを向き、ベースをぶっきらぼうに弾く。重低音の、しかし優しい響きだった。だが、同時にシーラと共に見下ろしているドゴール王の鋭い視線を感じ身体を強張らせた。

「どこぞの不器用なツンデレハゲオヤジが、変えてくれるのかもしれない」

 ツンデレハゲオヤジとは何だ。という風にオーミットが盛大に歪んだギターを鳴らす。特殊な拡声魔奏石(まぁつまりアンプというやつである)を通したギターの音にシンが慄く。

「商人、船大工、革命家に兵士、そして国、世界。変わった人や物は色々あるけど、それがどうなっていくかなんて分からない。だから、今からいう言葉は、ただの願いだ」

 そう、願い。音楽はいつだって祈りと願い、そして祝祭のために使われてきた。とても美しく、楽しく、無力で、無敵なもの。

 シンはリートレルムの空気を吸い込んだ。

「争いは、もう終わりだ!!みんな、世界を救った音楽の力、忘れないでくれ!!でも今は、楽しんで行こうぜ!リートレルム!!さぁ、歌えぇぇぇぇぇ!!!!」

 叫びながらギターを掻き鳴らし、世界中から響く大歓声に応えるように、ユキがドラムでカウントを取り、四カウント目が終わった瞬間シンがアルペジオを弾き始める。二小節弾いたところで、オーミットのギターが入り、イーフのベース、ユキのドラムが徐々に音圧を上げていく。全身を突き抜ける幸福感にシンが叫び、世界が揺れた。


“Melody Rain”


≪天駆ける声聴こえた日

海と空と太陽が溶け合い金色に輝いた場所で


心が闇を照らした君の光奏でた

共に飛べる魔法 Just Play The Brightest Sound


Blowing The Greate Wind and Falling The Melody Rain

誰も傷付けない雨 天空まで届いたら


降り注ごう絶望の世界に


暮れない朝に怯えて 明けない夜を求めても

笑みも涙も歌に変えて行こう 愛しい


誰もが自分の価値を求め争い合うけれど

君が僕の魔法 Never Stop Struggling


Singing or Breaking Shouting out The Discode Voice

終わりに向かおうとも迷わない誓うよ


立ち向かっていく守り抜くために


Flaping The White Wing and Glowing The Loud Gloove

飛べなくて終わったって君の手は離さない


Blowing The Greate Wind and Falling The Melody Rain

誰も傷付けない雨 天空まで届いたら


降り注ごう 絶望の世界に 希望の虹をかけよう≫

(ⒸSOUTH to NORTH『Melody Rain』JASRAQ申請中)

(https://www.youtube.com/watch?v=NkgMn3nezHs 楽曲参照(カバー)</)


 異世界からやってきた英雄の鳴らす楽音は、世界の果てのさらに先へその祝辞と希望を伝えるかのように響き渡った。旧い昔、誰かがそうしたように、海と空と太陽が輝く世界へと降り注ぐ天空の歌の旋律が、どこまでも。


――――――――


 数日前まで誰もがアブソビエと呼んでいた街の外れにある、旧シンディオの平原。“白き光”の真上に、一隻の空船が止まった。

「―――何で俺、あんな何にも知らない曲、全部弾けたんだろう」

「細かいことは気にしない~」

 ユキの言葉にも釈然としないものを感じながら、イーフは黙って頷く。そして、帰って行くユキと千鶴・・・・・を送り出す小舟を出す。

「シンよ、本当にいいのか?」

 アルマが「この世界に残る」と申し出たシンにもう一度確認する。

「ああ。決めたことだ」

「上からの指示ってやつか?」

 イーフが皮肉っぽく言う言葉を否定する。

「そうじゃない。いや、それも少しあるが、もうちょっとこの世界の行く先を、見届けたいと思ったんだ。俺の都合さ」

 そういったシンの腹に、小さな身体がぶつかってきた。

「―――お前が泣くのを見るのは、初めてだな、ユキ」

 弟のように可愛がってきた少年の頭を撫でながら、そう言葉が漏れる。

「さぁ、行くぞ。いつまでも世界の扉を開かせておくわけにもいかないだろう」

 イーフが告げ、シンはユキを離した。

「じゃあな、相棒。また会おうぜ」

「……イエッサー!」

 衣服に数種の液体がこびりついていて、涙より鼻水が多いことには閉口したが、これも二年間育んできた友情の証だと思うことにする。

「千鶴先生!……ユキを、頼みます」

 いわれた千鶴は振り返り、涙で曇った眼鏡面で何度も頷いた。だが、ややあって首を横に振り出した。

「いえ、一旦ユキ君を返したら、私も戻ってきます!」

「「「ええーーーー!?」」」

 全員が驚愕する中、ルソラだけが納得の表情で、その仰天発言を受け止めていた。

「このまんまじゃ終われませんから!辞表を書いて、とっとと戻ってきますっ!イーフさん、ちょっとだけ待ってて下さいね!!」

 ミーファが怒ったときと同種の剣幕に晒されたイーフは、頷くほかない。

「何が終われないっていうんですか」

 シンが心底訳が分からないといった風でユキに助け舟を求めるが、先ほど涙の別れをしたはずの相棒の目は、完全に白けていた。

「シンさん、それはないよ~」

「ええ!?」

 見ると、自分の周りにいるミーファ、シーラ、アルマ、ルソラ、カルウラ、ドゴール、共に戦った軍人たちやオーミットに至るまで、同じような目を向けられている。

「なんでハゲのオッサンにまで睨まれなきゃいけないんだ」

「自業自得だ。朴念仁」

「お前にだけはいわれたくないわ、イーフ!」

 シンの怒声に、イーフが無防備にふふっと笑う。それを見たユキが笑い、ミーファが続き、次第にそれは全員に伝播していった。何とも締まりのない別れの場面となってしまったが、湿っぽいよりはいいか、と思い、シンも大いに笑う。彼には後に、大いなる修羅場を経験することになるのだが。

「ふぅ、本当に面白れぇ連中だぜ。名残惜しいが、ユキとはここではおさらばだ」

 皆でひとしきり笑いの花を咲かせた後、アルマがそういって、いよいよ最後のときがやってきた。

「それでは、ユキを送ってきます」

「堕ちるなよ?」

「二度も船を墜落させたお前とは違う」

「はは、そうだな」

「ばいば~い」

 ユキが手を振って別れを告げる。イーフが船を出した。ゆっくりと白き光に向けて、小舟が降下していく。

「さようなら、ユキ。本当にありがとう」

 そう呟いたミーファの銀髪が揺れた。その一陣の風は、小さな勇者の帰還を後押しするようにリートレルムに吹きすさんだ。


「さて、ユキの島に降りたら、俺の元部下たちを助けてやらないとな」

 憶えていたら連れ帰ってやろうと思っていた連中のことを辛うじて思い出したイーフが呟く。

「そうだね~」

「シンの奴が上司と掛け合った出したこの白き光だが、いつまでもつのだろうな」

「そうだね~」

「……ユキ?」

「そうだね~」

 普段はボーっとした性格だと聞いているが、それにしても上の空すぎるユキにイーフは多少心配になる。流石にシンとの別れが堪えているのだろうか。

「なんというか、人は別れを経て成長するものだと思う。いつかこの経験が、財産になるのではないかな……」

 いってみてから、何だこの中身のない説教は、と思った。結局まだ自分は人に何かを教えられるほどのものを収めてなどいないのだ。

「うん、ありがとうね、イーフ」

 挙句、11歳に気を遣われる。もう黙っておこう。沈黙は金だ。

「そうじゃくてね、なんか大事なことを忘れてる気がするんだ~」

 どうやら凹んでいるのではないようだ。イーフは安心し、一つ思いついたことをいってみる。

「そういえば、もうすぐお前たちの島で、祭りがあるそうじゃないか」

「―――それだ」

 ちょっとした雑談のつもりだったが、ユキが立ち上がってこちらに真剣な目を向けた。

「……どうした?」

「―――バンド」

「バンド?」

 間抜けな声で返すイーフに掴みかからんばかりの勢いで、ユキがいった。

「イーフ、引き返して」

「な、何故だ?」

「シンさんと天唱祭でバンドやること忘れてた!シンさんを連れ戻さないと!!」

「お、おい待てユキ、分かったから船で暴れるな!堕ちる!またまた堕ちる!!」


S's~天空詩曲と滅びの歌 完

終わりましたぁぁぁぁぁぁ!!!!

本当にありがとうございました。でもね、もうちょっと続くんだっ!

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