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10-B ユキの過去

この最終盤で何と重い話を書いてしまったんだと思いつつ、シンの過去も夜や掘り下げつつ、真の“黒幕”と、この小説のタイトル『S's』についても書いています。

 声に振り向くと、ケロイドに埋もれた顔をさらに歪めたロシェフが立っていた。シンがギターで殴りつけようとするが、兵士らしい体術であっさりと躱され、腹に当て身を喰らわされる。

 シンを地に伏せたロシェフは、『戦奏器』が使用不可となっていたユキも長い足で蹴り飛ばされ、石畳の上に叩きつけられた。

「武器が使えなくては、あなた方もただの人ですね。さて、参りましょうミーファさ―――」

 地面に蹲るミーファに手を差し伸べたロシェフは、背中に感じた衝撃に言葉を止めた。どうやら剣が突き刺さっているらしい。

「イーフ。流石は我が生徒です。急所を外しましたか」

「あんたもな、ロシェフ先生、気配は消していたはずだが―――」

 今にも倒れそうな出血量で荒い息を吐きながらイーフがいう。ロシェフは振り向き、平然と背中に刺さった剣を引き抜くと、詰め物を貫き、血を一滴も付けていないそれをイーフに返す。

「急所どころの騒ぎではありませんね。軽装の軍服に惑わされてはいけませんよ、私からの、最後の授業です」

 いってから、自らの剣を抜き、今度こそ止めを刺さんと上段に構える。が、その瞬間、立ち上がってきたシンの拳が飛んできた。それを悠々と避けたロシェフは、大きな溜息を吐く。

「非常にめんどくさいです。しょうがないので、私のとっておきを見せて差し上げましょう」

 言葉通りの億劫そうな声色で言うと、揺れ続ける大地に手を触れた。

「それでは、さようなら」

 ユキ、シン、イーフが、自分の足元に白い光を見た瞬間、三人がこの世界から姿を消した。


 吹き抜けの二階構造のオペレーションルームに通された。壁を埋め尽くす大小さまざまなモニターが並ぶ様子は、まさしく秘密組織といった風情で、誰も言葉を発しない。オペレーターと思わしき局員のキーを叩き続ける無機質な音と、二階部分の指令席に向かう自分の足音が聞こえるのみだった。

「殺風景っていうか、殺人的に静かな基地だな。職員同士のコミュニケーションは取れてるのか?」

 自らの緊張を和らげるために発した軽口も、相手には通じない。組織内でも異端の存在らしい白髪の紳士は、顔の前で両手の指を合わせ、こちらを向いている。

「本当にいいのかね?“S”に関わるということは、君の生命に関わることだ」

 低く深みのある声が耳に届き、ここに来る前に退学届を提出してきた手を固く握りしめる。

「いい加減、俺“も”戦いたくなったんですよ。国立大学なんていつでも入れます。―――いいから、とっとと“名前”を下さい」

 人が何を成すかは、悩んだ時間ではなく、踏み出した足で決まる。覚悟を決める時間など、三秒あれば十分だった。だから今も、考えるよりはただひたすら、足を前に出すのだ。

 男は小さく頷き、デスクの上にあるPCから名前が羅列された画面を呼び出した。

「今空いている偽名は、真螺しんら加郷かごう天霧あまきり……」

「なんかピンと来ないですねぇ……あ、これがいい」

 一つ、これと思う名を見つけて、指を差す。

「ふん―――」

 初老のスーツ姿が、初めて笑った。

「どうしたんです?」

「いや失礼、頭文字が“S”だと、そう思ってね」

 そういうことか。“S”。正体は分からないが、この組織と、自分の親友が追いかけている敵の名前。

「ああ、それは関係ないですよ。名前に“神”が入っているから選んだんです。今も戦ってる、俺の連れと同じですから」

「そういうことか、ならば“神宮寺敦しんぐうじあつし”君、君を『十三人じゅうさんにん』の“S-Worldエス・ワールド”専任諜報員No.01に任命する」

 S-Worldか。この世界以外の世界を、彼らはそう呼んでいる。そして、追っている敵もまた“S”だという。これではまるで敵がその世界を支配しているようではないか。

「一つ訊くけど、“S”は一人なんだよな?」

 確認のための問いだった。だが、男は解答に窮するように顎に手を当てていた。

「一人、か。我々の常識当てはめるのならば一人だろうが、実際にはそうではない。奴は十年ほど前に存在を“解体”された」

「なんだそりゃ。死んでるってことか?」

「いや、一応、死んだ、ということにはなっているが、奴はそれ以前にも“思念”として他者の内部に住み着く術を得ていた。それらまで消えたのかは、確証が無い」

 話がどんどんオカルティックな方向に向かっていることを感じながら、男にさらに訊く。

「“S”ってのは、何なんだ?何をしようとしているんだ?」

 一応、ここに来るまでにも教えて貰ったことだが、より詳しく訊いておきたかった。

「世界の結合と、破壊。我々が得ている奴の目的は、それだけだ」

 が、答えは以前と同じ、簡潔であり、それ以上に何も付け加えられないものだった。

「結合と、破壊……」

 一見結びつかない二つの単語を繰り返す。男がその意味を説明した。

「S-Worldに行くには、“ゲート”というものを通らなければならない。突発的にできるワームホールのようなもので、“S”は、それを自由に開くことができる。だが、それは危険だ。世界同士は本来混ざり合ってはならないものなのだ。世界はバランスを崩し、否応なく崩壊する。“S”は“ゲート”を繋げることで世界を“結合”し、全てを“破壊”しようとしていた」

「だから、あんたたちが殺した。でも、まだ死んでない」

「恐らく」

 その、恐らく死んでいない“S”を再び倒す為に、親友は卒業まで三カ月を切った高校三年生の冬、忽然と姿を消した。彼を“勧誘”した人物の手に導かれて。そして、それを知った自分もまた、その人物に会い、この秘密組織の門を叩いた。共に、戦う為だった。

「では、先ず以て任務を言い渡すが、天奏島に向かい、そこで生活をしてもらおう。別命あるまで待機。分かったな」

 天奏島、聞いたことのある島の名前だが、どんな場所かは見当もつかない。まさか人生で初めての一人暮らしがこんな形になるとは。と思いながら、『上』の男に向かって言う。

「島暮らしはしたことが無いんだ。後、魚はあまり好きじゃない」

「すぐに慣れるさ。それに君の奔放な性格なら、色々と面白いことができると思うよ。まぁ、せいぜい楽しむことだ」

 その、捉えどころのない“緩さ”を持った声を発したのは『上』ではなく、いつの間に背後に立っていた細面の男のものだった。

「氷月さん、そんな無責任な―――」

 振り返り、自分の先輩である氷月陽ひづきように文句を言う。氷月は、鋭角な顔に宿した、刺す様な眼光を見せつつ、柔らかな物腰で新生活を応援する声を発する。

「君の能力は俺が保証する。だから自信を持って任務に当たれ、家持いえもち君」

「言っても、ド田舎の島で役場の手伝いさせられるだけですけどね、あと、本名言わないでください」

 家持―――二年前のあの日以来、自分の本名を呼ばれたことは無い。何故今になってこんなことを思い出しているのだろうか。何故、只今絶賛その天奏島に落下中にそんなことを思い出しているのか、全く分からない。全てが分からない。

「何が島で生活してろだ馬鹿野郎おおおおおぉぉぉ!!!!」

 自由落下の風を全身に受けながら叫んだシンは、空中を泳ぐように動くと、近くを同じように落ちていたユキを抱き寄せる。眼下には、見慣れた島の全景が見渡せる。このままなら、海に落ちること無く学校の校庭辺りに不時着できるだろう。当然、そんな高度から落下すれば、小中学生にトラウマ確定モノの人体図形がグラウンドに描かれることになるだろうが。

「何とかならねぇのか!」

 空中で器用に悪態を吐いていると、おもむろに声がした。

「掴まれ!!」

 突然降ってきた声の指示されるとおりに手を差し出すと、何かにその右手を掴まれ、落下が緩やかになった。手を取った人物を見上げると、自分の顔に血の塊が降ってきた。腹部を押さえてはいるが、出血が止まる気配が無いらしいイーフが言う。

「これは一つ“貸し”だ。島に降りたら、医者を紹介して貰うぞ」

「ああ、整形外科か?やっぱり顔はダメだった?ボコボコ殴って悪かったな」

「こんな時にも冗談言わないと気が済まないのか貴様は!次にふざけたことを言ったら手を離すぞ!」

 叫んだせいでさらに痛みが増したらしいイーフに、シンの左腕に抱えられていたユキが言った。

「イーフ、僕の家に来なよ。お父さんが医者だから」

 先程まで命のやり取りをしていたとは思えないほどフレンドリーに話しかけてきたユキとシンに辟易しながら、イーフは懐に忍ばせてあったミーファの言うところの“お守り”があとどのくらい持つか確認しながら「すまない」といった。


 浮遊魔奏石で学校のグラウンドに降り立ったイーフは、ユキの火事場の馬鹿力で診療所まで運ばれ、ユキの父親である志動昭光しどうあきみつ医師の治療と、医者も驚く常軌を逸した生命力で、一命を取り留めた。

 麻酔無しの手術に臨み、意識をはっきりとさせているイーフに驚愕する志動医師が、ユキと話をするために外に出て行ったタイミングで、シンが切り花を持ってやってきた。

「よぉ、見舞いの品を買ってたら遅くなったぜ。まぁ、ユキが早すぎるせいもあるけどな」

「本当に口が減らないな。口から生まれたのか」

「こっちの世界じゃしゃべくりラジオDJで通ってる。DJシンと呼んでくれ」

 返事はない。この呼び名は異世界人にも不評らしいことを知って少し落ち込んだシンは診療所の固いベットの脇にあった花瓶に花を突っ込むと、椅子に座った。

「あのロシェフってキャラ作り野郎が、全部の黒幕だったってことか」

 先程までとは違う、落ち着いた口調で話し始める。イーフは診療所の無機質な天井を見つめながら頷いた。

「“白き光”―――世界の扉ってのも、あいつが開いた。それどころか、今回や、前回の戦争も、裏で糸を引いていた。イギルスタンの総統って奴と手を組んで」

「恐らくな」

 イーフは同意の声を上げてから、キュッと唇を噛みしめる。誰もが、あの仮面の奥にある微笑みのさらに奥に秘めた狂気的な企みに気付くことができなかった。自分に至っては、故郷を間接的に滅ぼしたロシェフを兵士として、尊敬してさえいた。所詮戦争に於ける消耗品でしかない兵士とはいえ、もしロシェフのようになれるのなら、悪くないかもしれない、そう思ってしまっていた。それを思うと、悔しさに身が震える。

 イーフの様子を見て、シンは話題を変える。

「それにしても、なんで『最終戦奏器』を奪った戦争から、十五年も待ったんだ?」

 ドゴールから今回勃発した戦争の内実を知ってから疑問に思っていたことだった。わざわざインターバルを設けたのは何故なのか。イーフは少し考えてから、推測を言った。

「恐らく、コーディシアの先代の女王ラフティス様が厳重な庇護下に置かれていたからだろう。女王陛下は病弱で、ミーファを生んで間もなく死去したらしい。ミーファにも当然“滅歌”は伝えられたが、年端もいかない少女が発動するには、少し条件が厳しい」

 ≪滅亡絶歌―ディスコードヴォイス―≫ 声にならない絶望の叫び声。

「確かに、家族でも殺されないと出せない声だ。それだけお前が大事だったんだな、ミーファは」

 いわれたイーフは、「うるさい」と言って右手で顔を覆った。

「お蔭で俺の相棒は失恋しちゃったぜ」

 体力的に限界を超えている状態で自分をここまで運び、三日ぶりの再会に浸る余韻も与えぬまま恐ろしい剣幕で、謎の軍服を着た異世界人の緊急手術を父親に頼んだ丸顔の少年のことを眼に浮かべ、イーフは何を言ったらいいのか分からなかった。

「―――済まない」

「気にするな。あいつはそんなことでへこたれるヘタレじゃない。いや、そもそもミーファに対しての“好き”が恋愛感情ってことでも無いような気がする。なんていうか、あいつの他人に与える愛情は、質が違うっていうか」

 上手く言語化できない様子のシンだが、イーフも、良くは分からないが理解はできる。ただの子供ではないことは確かだ。

「ユキは、一体何であんなに強いんだ?一体何がユキを突き動かしているんだ?」

 ミーファの心を動かし、結果的に失敗に終わったが、イーフに真っ向から挑み、勝利していった少年だ。ユキを、認めないわけにはいかなかった。だから、知りたかった。

 シンは、少し頭を掻いて、話すべきか考えた。外で話をしている昭光医師とユキに了解を取った方がいいような気がした。だが、答えは決まっている。ユキは「いいよ~」と言い、昭光医師は何もいわない。分かり切っていることをするのは意味がない。

「あいつはな、ユキは、一身上の都合で、強くならなきゃいけなかったんだ。この世界の、どうしようもない現実と戦うためにな」


 三年前。ユキがまだ東京で暮らしていた頃の、小学三年生の夏。国内でも有名な心臓外科医として名を馳せていた昭光医師に、ある難病の患者が連れてこられた。

 佐藤しょうというユキと同い年の少年は、その病気によって余命幾ばくもないという状況だった。

 翔の父親は昭光と同期の医者で親交が深く、志動家とも、家族ぐるみの付き合いをしていた。

 そのような関係を気付く中で、世界的にも最高難度の術技を要求される手術を昭光に依頼したのは当然の話であった。

 しかし、当初、昭光はその手術を拒んだ。困難過ぎたのだ。小学三年生の体力では長い手術に耐えらない、と。

 だが、かといって放っておけば一年以内に翔が亡くなることは確定している。翔の父親は食い下がった。何もしなければそのまま死に、手術をしても死ぬかもしれないが、生き延びられるかも知れない。そうなる確率は非常に低かったが、それでも奇跡が起こる方に賭けたいと、父親はいった。

 そうして、翔の両親は、昭光に息子の残り僅かな人生を全て預けるといい、例え手術が失敗に終わっても、それによる訴訟などは絶対に起こさないことを約束し、昭光の首を縦に振らせた。

 そして、奇跡は、起こらなかった。手術による負担で翔の容態は悪化し、手術用の全身麻酔から醒めぬまま、帰らぬ人となった。

 最初から、ある程度は分かっていたことだった。昭光は父親に対し、いくらでも賠償に応じるといったが、翔の父親は丁寧にそれを断った。息子を殺したのは医者の手術ミスではなく、親のエゴだ。そもそも成功の確率はほとんど0に近かったのだ。

 どこまでも一人息子の主治医に誠実だった父親は妻と共に、離島の医師として移住することを決めていた。

 だが、その話を放っておかなかった者たちがいた。

『自身の腕を過信し、無茶な手術で一人の子供の寿命を縮めた医者』

『患者との同意を隠れ蓑にし、責任を逃れようとする悪徳医師』

『倫理観の欠如した天才医師の信頼は地に落ちた』

 すべて、ある面から見れば“事実”である。昭光は反論しなかった。その態度と、名声を得ていた昭光の“名医手術ミス”の話題性により報道は過熱し、飛び火し、バッシングの炎はネットを経由し際限なく燃え広がった。

 彼を庇い切れなくなった病院は昭光を解雇し、彼の妻はメディアからの集中砲火に精神を病み、僅か九歳の息子は『人殺しの息子』と呼ばれ同級生や教師にまでさげすまれた。

 翔の父親、佐藤医師は責任を感じ、自分に話が来ていた離島の診療所を昭光に託すことにした。中央から離れれば、報道も多少は沈静化するだろうと。昭光はそれを承諾し、天奏島に家族と共に移住した。

「……」

 重い話を終えたあとは、時計の音が煩くなる。シンは完全なる沈黙に支配された診療所で、言葉を絞り出した。

「なぁ、イーフ。お前は、この話のどこに“悪者”がいると思う?」

「たくさんいるだろう。根も葉もない誹謗中傷をした連中、アキミツ殿を守らなかった病院の上層部、ユキの名誉を傷つけた者たち―――」

「ああ、そうだな。じゃあ、訊き方を変えよう。お前なら、この“敵”と、どう戦えばいいと思う?」

 シン自身、初めてその話を聞いた時から、そのことをずっと考えていた。昭光も翔の父親も、“翔に死んで欲しくない”という共通の思いの元、最善の行動をして、最悪の結果に終わった。誰もが必死で、誰も悪くなかった。

 なのに、世界は昭光を断罪した。それすらも、ある意味では“正しい”ことなのだ。人を生かすための医療・医術が、人を殺してはならない。こういったことが二度と起きないように、起こったことをありのままに白日の下に晒すことは“正しい”ことだ。だから昭光は批判を甘んじて受け入れた。

 だが、情報が徐々に拡散していく段になり、少しずつそれは変容してしまった。それは当然のことだ。人は情報をありのままに受け取らない。必ず、取捨選択をする。

 そして、“流れ”ができてしまう。一面的な正しさを振りかざし、“悪”を総叩きにする行為の濁流は、その人が社会的に、時として生物的に死ぬまで止まらない。

「俺には、分からないな。すまない」

 イーフは考えたが、答えを出せなかった。

「ユキは、どうしたんだ?」

「ユキは、あいつは―――」

 シンは胸の内からくる痛みに耐えるような表情をした後、言葉を継いだ。

「―――誰も恨まない道を選んだ。根っからの平和主義者だからな」

 “平和主義”という柔らかな言葉からは不釣り合いな壮絶さを感じたイーフは、何一つ言葉にできないまま、シンの次の言葉を待った。

「俺は、もう会って二年くらい経つけど、あいつが泣いたところを見たことが無い。だけど、一度だけ俺に訊いてきたんだ。『どうやったら、誰も傷付けずに済むか』って。俺は、無責任に『強くなれ』って言ったんだ。ユキの事情を知ったのは、そのあとだ」

 元々ドラムを教える間柄でしかなかったが、それから、シンはユキに特別目をかけるようになった。自分などより、ずっとこの世界の薄暗い部分を生きてきた少年に、妙なことを吹き込んでしまった責任感なのかは分からなかったが、今でもこうして一緒にいる。そういう関係だった。

「きっと今も、親父さんと話をしてるんだろうけど、あいつの言うことは決まってる。『友達を助けに行くんだ』の一点張りだ。もうじき親父さんが折れる頃だよ」

「あいつは、どうしてそんな―――」

 イーフの疑問に多い被せるように、シンが高らかな声を上げた。

「転んだ数だけ立ち上がる!目の前に壁があれば壊してでも先に進む!そうすることで、ユキはこの世界の現実って奴に勝ってきたんだ。これからもそうだ。なら、俺はどこまでも付いていくさ」

 笑みを浮かべながらてを差し出してきた。

「さぁ、行こうぜイーフ。まさかあんな恥ずかしい告白を決めておいてここでリタイヤか?」

「ふん」

 シンの手を振り払い、自力で起き上がったイーフはいう。

「いっておくが、ミーファは誰よりも俺の助けを待っている。邪魔はしないで貰おうか」

 黒髪の兵士―――否、騎士に言われ、シンは破顔した。

「上等だ。ヘタレ野郎にミーファは任せられねぇからな」

「何だその言い方は、そもそも、お前こそ何者だ」

 言動や戦闘に対する心構えなどから、ただの一般人でないことは分かっていた。自分と行動を共にするのなら、素性を明らかにしてほしかったので訊いたが、その答えは異世界の住人であるイーフにとっては意味不明なものだった。

「秘密結社のアルバイトエージェントです」

「は?」

謎の組織『十三人』と氷月は作者の前作『S's~暁の鐘』にも登場しています。よろしければそちらも読んでください。

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