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第7話 「初めての……」

「皆さ~ん話を聞いてください!」前では若い女性教師が子ども達に向けて叫んでいた。

しかし相手は9歳の子どもである。弱々しい教師の声を聞いてくれるはずもない。



「昨日の続きな!」


「今日は違うことしようよ~」


「早く帰りたいですわ」



『手伝うべきかなぁ』


最後尾の席で座り込んでいるこっちを助けを請うように見ている気がする。先生が。

はしゃぐ子ども達も見知らぬ年上には構いたくないようで、俺の周囲にはいないためだろうか。


『はぁ、俺は魔法を使ってみたいだけなのに…』


先生からの視線を避けるようにして、さきほど借りたこの学校の資料に目を落とした。



~~~


この魔法実技という時間は本校、エクリプス魔導学校を魔導学校たらしめる特徴的な授業である。

この国にはここを含めて5つの魔法を教える学校がある(各学校名は12頁を参照)。

しかしそのどれもが魔術理論に重きを置いており、授業で魔法を使用することは実験以外にない。

それらの学校の指針は「魔法技術の発展」なのだから当然ともいえよう。

本校では「学徒の向上」を指針としており、卒業後に一人前の魔術師と名乗ることが出来るよう魔法実技を実施しているのである。

また、魔法実技は三回生の2学期から始まる。

この時は各クラス単位で授業を行うが、四回生からは実力でクラス編成を行い……


~~~



「はぅー、これじゃ今日も授業がぁ…」


鈍臭い先生だなぁ。

こんな状況じゃ、俺も魔法を学ぶこともままならないし。

先生はまだ俺を見ていた。

さっきよりガン見だった。

…一肌脱ぎますか。



15分後。

あれほどうるさかった教室は静まり帰っていた。

教卓で語る俺の言葉に耳をすまし、話に聴き入っている。


『授業をいっつも聞いていなかった男の子はとっても後悔したんだ。

けれどドアの向こうでは男の子を呼ぶ声が聞こえる。

「おいでぇ~」ってな。魔法が使えれば亡霊なんて恐くなかったのに』


身振り手振りを加えて話す俺の怪談は効果覿面だった。

ストーリーは勉強嫌いな男の子が魔法しか効かない化け物に襲われ、魔法をしっかりと勉強すればよかったと後悔する話。

少し稚拙がすぎるかと思ったがウケは良かった。


「そ、その後どうなったんですかぁ?」


いい年した大人も怖がっているが。

それで先生できんのかよ。


『…このあと、誰も男の子を見ることはなかったとさ』


話の落ちに子ども達は(おのの)いていた。


『みんな、こんなことにならないようにしっかりと勉強しような?』


「「は、はい!」」


『よし、いい返事。先生よろしくお願いします』


「はい!」


こちらも良い返事だこと。



「それじゃあ四人一組になってくださーい」


やる気を取り戻した先生の言葉で俺は凍りついた。

この1人も知り合いがいない中でグループを組め…だと…!?

中学時代、いつもあぶれかけていたこの俺にそんな芸当が出来るとでも?

なんか涙出てきた。

子ども達はそれぞれ仲の良い子とグループを組みはじめた。

俺を誘ってくれる奇特な子はいない。


「トキタさん?どうしましたぁ?適当でいいですよ?」


適当が出来ないんです……ッッ。


「俺らの班に入る?」


涙をこらえていたとき、1人の少年が声をかけてきた。


『俺でいいの?』


「もちろん!」


班のメンバーは俺を含めて4人ちょうど。

自己紹介を軽く済ます。


「兄ちゃんせいれいなんだ。すっげー!俺はメロウ=ディスティ」


メロウは赤い髪をした、猪突猛進な男の子。



「ぼ、僕はタステ=ティムズです」


タステは女の子のような男の子だ。一言で言えば男の娘。

女装しているわけじゃないんだけどね。



(ワタクシ)はルルリリア=ファイアラーですわ。以後おみしりおきを」


『ルルリリアて呼びづらいからニックネームとか無いの?』


「まぁ、人の名前を呼びづらいなどと!…親しい人はルリアと呼びますわ」


ルリアは金髪碧眼の西洋人形のような娘。どことなく貴族っぽい。



「はーい、今日はマナの収束と魔弾の復習から始めます」


先生の指示が下されると皆一様に目をつぶり、片手を前に突き出した。

直後、様々な色の風が教室内で吹き荒れ、30秒ほどすると突き出した手の前に球の光が出来ていた。

なるほど、これが収束か。


「皆さんはそのまま維持してくださいね。トキタさんも見てないでやってみて下さい。


胸の内から熱を手の平に集める感じで」

見様見真似でやってみよう。

目をつぶり、手を前に。


『《集まれ》《集まれ》《集まれ》』


イメージ。

この世界で見た、色のついた風。それがマナだ。

自分の中の熱いモノを核にして作りたいものをイメージする。

核を満たすように、覆うようにマナを集める。


「はわわわわっ!こんな密度見たことがないですぅ!」


「兄ちゃんすっげー!俺でもマナが見えるぜー」


先生の怯える声とメロウの大声が聞こえた。

そんなにすごいのかな。

恐る恐る目を開けてみた。


『うおっ、まぶしっ』


手の平に無色透明の光球があった。

クラス中が皆俺を見ている。

そんなに見ないでよ恥ずかしい。

で、この後はどうすればいいんだ?


「トキタさんっ、解放はゆっくりしてくださいね!」


もしかして俺がどうにかしないといけないの?

初めてじゃ無理だよ!

途端に球体で落ち着いていたマナが振動し始めた。


『なんかヤバい気がするー!』


振動はどんどん大きくなり、俺の手から離れていこうとする。


「兄ちゃん大丈夫!?」


心配したのかメロウたちが駆け寄ってきた。


「えっと、とりあえず落ち着いてください!」


「取り乱しては余計にマナを制御に置くのが難しくなりますわ!」


2人のアドバイスどうりに心を落ち着ける。

深呼吸、深呼吸。

って、こんな状況で落ち着けるか!


『…安心してくろ!これが精霊の魔法だ!!』


せっかく同じ班になってくれた3人に嫌われたくなかったので格好つけることにした。


「あんなに慌てていたのにいまさらですわ…」


「噛んでたし」


思ったより賢い子たちだった。


「まじでっ?やっぱり兄ちゃんはすごいなぁ」


馬鹿は1人釣れたみたいだけど。

ただならない雰囲気に他の子ども達が逃げ始めた。

無軌道に逃げ回るせいで手をどちらにも向けられない。


「トキタさんっ、魔弾を撃つなら人のいないところにっキャー…」


魔弾なにそれ!?

先生が逃げる子ども達に流されて行ってしまい、説明が聞けない!

落ち着いて考えろ。

…………。

…わかるか!そもそも落ち着けるような心境じゃないし!


「そのマナの塊を放つことを魔弾と言いますわ」


ルリア、ナイスサポート!

近くには3人がいる。

かといって3人のいない所を狙って撃てばどこに魔弾が飛んで行くかわからない。

ならば何処に向けるのか?


『じゃあ、こっちだ!』


腕を真上に向ける。

テンションが上がってきた!


『人呼んで…』


(たが)が外れたように魔弾が銃弾の如きスピードで真上へと昇っていった。

本物の銃弾なんて見たことないけど。

魔弾を放ったままのポーズで呟く俺と俺を見て黙っている少年少女。


『カナタスペシャル!』


リィィィィィン!

フィニッシュで叫ぶと同時に何かが割れるような音が聞こえた。

窓の外を見ると厚みのないガラス片のようなものが降ってきていた。


「兄ちゃんカッケー!!」


「「いたぁ…」」


俺には小学生2人からの冷たい視線を浴びせられていた。



『つまり、さっき降ってきたのはこの学校を守っていた結界だったんですか』


「そう。結構お金がかかっている(怒)」


校長室で先程の件でお叱りをうけていた。


『はぁ、それで?』


そんなお金がかかっているなら俺の初めての魔法程度で壊れるわけないだろうに。


「……君はどこに住むつもり?(笑)」


『家ですか?リンの部屋にでも泊めさせてもらおうかと』


「あそこは女子寮。それに男子寮にも空室は無い(笑)」


校長先生、楽しそうだ。

いやな予感がする。


「今は午後1時。今日中で下宿先を見つけて(笑)」


さっきから笑ってばっかりなので絶対に悪いことは確信していた。


『もしも、見つけられなかったら?』


「野宿(笑)」


さっきから笑ってばっかだなこのババア!

こちらに来てまだ1日と少ししかたってないのに分かるわけないだろ!


「がんば(爆)」


地の文読むのやめてください!



次回、俺の下宿探しの旅っ(仮)!


今回もご覧いただきありがとうございます。


あれ?ヒロインでてない?

次回予告も本気かは謎です。「!」マークばっかり!!


それではまたお越しください!

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