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第32話 「小さな主従」

大変長らくお待たせしました。


遅くなってほんとごめんなさい。


……待っててくれた人がいることを祈って。

どうも俺です。

時田 彼方です。

朝靄の中から聞こえてくる人々の声はなんとなくだがやる気がわいてくる気がするよな!

それと靄なんて実際は漢字で書けないよ!

大通りを歩きながらどこで飯を食べるかを考える。

朝御飯も食べずに出てきた以上、自業自得な訳だがまさか今朝にメリアがデレるとは思わなかったし。


『じゃなくてっ。

ともかくどこで食お―かなっと』


もやもやと誰にともなく放っていた言い訳じみた思考を切り上げる。

結局のところ、悩むまでもなく答えは決まっている訳で。

迷いなく歩き慣れた道を進む。

向かう先はリンの住む女子寮だ。




ゆっくりと通りを歩く。

時間潰しを兼ねて先日の件について考えながら。

……つっても結論はでない気がするんだけどね。

まぁ、リンと詳しく話し合う前の整理しとしておこう。

あの時、あの城で初めて会った女性は俺のことを異邦の精霊と呼んだ。

アリスさん達のように俺と共に過ごした人達でさえ俺の冗談だと思っていたことを見抜いたのだ。


『冷静に考えなくともすげくね?』


俺がこの世界では人にあらず、精霊と呼ばれる存在であること。

……ん?

そもそも精霊と人間の違いは何だ?

いや外見的な意味でなく、だ。

いつかのセオドア先生は何て言っていたっけ。


『マナ的な存在……だったっけ?

てか、マナ的存在とかどーいう意味だ?』


うん、わからん。

後でリンに聞いてみよう。

異邦の、ってところは精霊はこの世界の存在じゃないからなのかな?

でも意味深な響きだったけど。

何はともあれ。

あの城でのことの整理を続けよう。

俺を見抜いたこと以外にもいろいろ特徴はあったけども一番の謎と言えば。

……見た目、だよなぁ。

あの女性は校長と瓜二つだった。

双子と言うよりも鏡に写った姿といわんばかりに。

その不思議に比べたらあのすっげー《火滅|まほう》も霞んでしまう気もする。

しかも校長は一方的に彼女を知っているようだったし。

校長が帰ってくるまでに出来ることはあるのだろうか。

それを含めてリンと話してみよう。

忘れちゃいけないことはまだまだある。

どうしてリンを見たとたんにあんなに殺意がわき出たのだろうか。

個人的にはそこ最も怒りを覚えるところだ。

ああ、あんまり考えないようにしてたけども……駄目だな。

あの場では短い間に次々と進む状況にいちいち反応しきることが出来なかったけど、こうして落ち着いて考えると。



―――みっともないぐらいに怒りが湧いてくる。



あの子《リン》を殺そうとしたあの女性を今すぐには俺は許すことは出来なさそうだ。


「おはようございます」


なんかダークサイドにでも堕ちそうな思考だなー。

例えば俺とリンが一緒にいるときにまたあの女性(ゴスロリ)と遭遇したとしよう。

それでリンが止めるのも聞かずに飛びかかって次のページには見開きでぶちのめされてる俺が居る、みたいな?


「えっと、トキタさ……ん?」


完全にそれって噛ませ犬じゃないですかやだー。

そのあとの展開でリンがピンチになって覚醒するパターンもありかもしれない。


『……やれやれ、妄想も大概にしろよ。

それじゃあまるで俺とリンが主人公とヒロインみたいじゃん』


笑えるー。


「ねぇルリアちゃん。

トキタさんおかしいよ……」


「いつものことでしょう。

怖い顔をしてると思ったら急にオーバーアクション決めてその直後に自嘲的な笑みをこぼすなんて」


「…………状況説明ありがとうね?

自由な人なのは納得だけど」


……あり?

妙に近いところで会話が聞こえるな。


『ぉあう!?

二人ともいつからそこに?』


気がつけば俺を挟むようにして、お姫様ことルリアと男の娘なメロウ君がいた。

うっわ、びび……っ全然ビビらなかったわー。


「今きたばかりですのよ?

ただ私たちの挨拶は気がつかなかったようですけど」


「おはよーございます。

こんな朝早くに学校に行くんですか?

お休みなのに」


『気がつかなかったよ、ごめんね二人とも。

それとおはよう。

こんな時間に制服でうろうろしてるけど勉強に行くわけじゃないからね』


タステ、メロウ、ルリアの三人には演習に行くことを話していたから今日まで俺が学校に行く必要もないことをしっていたのだ。


「そうなんですかぁ」


寝起きなのもあってか警戒心薄いな。


『それはそうと二人も早いね?』


「いいえ、いつもこの時間ですわ」


誇る様子もなくルリアが答えた。


「そうですよー。

僕たち三回生はいつもこの時間ですー」


まじかよ!?

俺ってばいつもこの時間はお店の手伝いで学校に行ってないのに。


『ほー、えっらいねー』


「?

別に誉められることはしていませんわよ?」


「そーですよー?」


『さいでっか』


「「そーそー」」


こういうことを毎日、日常としてこなしてる彼らこそ俺は偉いと思うんだけどね。


「(……トキタさんまたあの顔してるー)」


「(どうして今度は得意げに微笑んでるのかしら)」


ちなみに先程述べたように二人は今俺を挟むようにして歩いている。

人を挟んでしまえばコソコソ話しても意味無いんだぜ?


『君ら確信犯?』


「かくしんはん?

どういう意味ですか?」

こてん、と首をかしげるメロウ。


可愛いなチクショウ!

俺がショタコンじゃなくて良かった!!


「さぁ、ワタクシも聞いたことありませんわ。

ふふふ」


そして俺への当てつけのようにドヤ顔をかますルリア。

メロウは本当に知らないんだろうけどルリアはそれこそ確信犯だッ。


『おや?

そういえばいつもこうして二人で通学してるのかい?』


ちと反撃だ。


「そーですよ。

だって僕はルリ……ルルリリアちゃんの」


「トキタさんは私の正体を知っていますわ」


正体というとルリア=お姫様ってことだろう。


「えぇ!?

そうなんですか?」


『ん、まーね』


「ええと、じゃあトキタさんにはいっても大丈夫かな?」


「ええ。

構いませんわ」


なんだよー。

俺を置いて話を進めるなよう。


『それで?』


少年(メロウ)は静かに居住まいを正した。



「はい。

僕はルルリリアちゃん……いいえ、ルリア様の騎士になります」



周りに聞こえないような小さな声でメロウはそう言い放った。

さっきまでの眠気はどこへやら。

可愛いだけの男の子ではない。

カッコいい少年がそこにいた。


『ちゃんと見つけたんだね』


「ええ。

とはいっても、まだまだこれから修行ですけどれど」


そいいって謙遜するように言うルリアも誇らしげだ。

この二人の間に何があったかは知らないけど、このままの二人ならきっと良い主従になるんだろう。

……もしかしたらそれだけじゃないかもしれないけどね。


『ほぅほぅほぅ、じゃあその決心がついた時のことでも教えてもらいましょうか』


きっと俺は今うざい顔してるんだろう。

でもこんないじれそうなネタをほったらかしには出来ないんだ。


「ぇえ!?えーとそれはその」


「ちょ、メロウ余計なことは言わなくても良いんですのよ!?」


そう言って途端に顔を真っ赤にする二人。

そしてそれをニマニマしながら追求する俺。

傍から見たら変な絵だろう。




二人と会えたこともあってリンと話し合うことを整理出来なかった。

けど時間を忘れるくらいには楽しく学校まで到着出来たのだった。

プラマイゼロどころか心情的にはプラスだけども。


『それじゃあね、二人とも』


「えぇ、お姉さまに宜しくお伝え下さい」


『なんで今からリンのとこ行くって知ってるの!?』


「ふふふ、やっぱりそうだと思いましたわ」


『はめられただとぅ!?』


「あははー、それじゃトキタさんまたねー」


「お楽しみくださいませー」


結局最後には俺がからかわれる形で二人と別れた。

散々いじりたおしたけどメロウが騎士となる決意をした理由を話すことは無かった。

それほどに大切な理由なのだろう。


『いやはや、輝いてますな』


俺もとっとと彼女(マスター)のもとに向かうとしよう。

あんな素敵になりそうな主従を見せられちゃ黙ってられないしね。

さて、こんな朝早くからお邪魔してどんな感じにリンを誘おうか。

なんだか緊張してきた。

だけどそれ以上にわくわくする。

早くリンに会いたいな。

俺は少し歩くスピードを速めて目的地(りょう)へと向かった。

今度こそヒロイン出ます。出します。ごめんなさい……。

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