↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/33

第23話 「夜天の瀑布を背景に」

なんだこのタイトル…

俺たちの天幕の中にはミフル以外の三人―――アリスさん、プリーさん、ヨナがいた。


『どーも』


気づいていない風なのでこちらから声をかけると三者三様の返事が返ってきた。


「軽く明日からの指針について話しておくか」


ヨナは入って来た俺とリンに席に座るように進めた後、ゆっくりと語りだした。


『リーダーはヨナ?』


俺にしろリンにしろ演習を経験したことが無いのでそれが自然だろう。


「ボクはそんな器ではありませんし、プリーに責任ある立場が務まりませんよ」


冗談めかしてアリスさんが答えた。


『つまりは貧乏くじひいたんだ』


「……」


渋面を作り、ヨナは無言のまま。

沈黙が肯定とはこのことか。


「…では、この部隊の計画を伝える」


憐憫を込めた視線を振り払うようにヨナが沈黙を破った。


「最後の部隊が帰るのが二週間後だが、俺らは明日から十日かけて探索を行う。

一般部隊は横に広がるようにして浅い部分を行くことになるが、俺たちは極力戦闘を避けて森の中心を目指す。

他が一週間に対し俺たちが三日長く計画されているのはこのためだ」


地図を広げ、指し示すように説明するヨナはそこまで語ると周りの反応を窺うようにしゃべるのをやめた。


「どうしました?

説明を続けて下さい」


アリスさんが話しかけるとヨナは仕切り直すように深呼吸すると語りに戻った。

なんだかフラグ臭いんだが。

俺の気のせい、だろう。


「すまん。

そして俺たちが探索するのは……500年前に封じられた魔王城だ」


……いきなりファンタジーみたいになってきた。

剣と魔法の世界だから今だって十二分にファンタジーだけども。


「魔王城?

あれは 作り話ではなかったのか?」


リンが不思議そうに言うとヨナはなんとも言えない表情を作った。


「俺もそう思っていたんだが、一応これが上からの指示だ」


一人微妙な顔をする俺を尻目に話は進んでいく。


「教官ですか?」


「いいや、どちらもだ」


どちらも、ってことは校長もかんでるわけか。

それよりも。


『魔王とかこの世界にいたん?』


自分一人だけ話題に乗り遅れたくない!


「そうか…カナタは知らなかったか。

それも当然だ。

魔王城にかかわる伝説はこの世界で有名なんだな。

……カナタがいることがそこまで私に馴染んでいた、のか」


「ふふふ、素敵ですね。あなたたちは」


何が面白かったのかアリスさんはそう言って笑い、魔王城と―――勇者と魔王の伝説を語りだした。

曰く、500年前は大陸上には小国が乱立し大陸の覇を競いあっていた。

当時は大陸上至る所で闘争が巻き起っており、左右を見渡せば十の戦争が起こっている、と形容されるほどだった。

大きな対立構造があったわけでもなく、ヒトとヒトで滅ぼしあいを続けていた。

細々と、延々と。

長く、永く。

そんななか、流星の如く現れたのが一人の"王"だった。

彼もしくは彼女はヒトとは違う怪物を操り近隣諸国を蹂躙していった。

まるで、戦いに狂っているかのように。

そしていつしか怪物は魔物と呼ばれるようになり、その奸雄はいつしか魔王と呼ばれるようになった。

魔物はヒトだけを襲い、恐怖の象徴となり、互いに争いあっていた人々が気づいた時にはもうヒトは生存競争において崖っぷちにたたされていたのだ。

軍が魔王 に攻め入るにしても、憎しみに捕われた各国は手を組むことをせずに小規模戦を繰り返し敗北を重ねるだけ。

だが、全ての国の王や国民が絶望を嘆いた時、立ち上がる若者たちがいた。

彼らは皆、違う国の出身でありながら国家間の憎しみに捕われることなく、協力し遂にには魔王を封印するに至ったという。

そして彼らは人々を救い、勇者とよばれるようになった。

しかしそれ以降にも、この世には魔王の封印より零れでたマナから魔物が生まれるようになった。


「簡単に言うとこんな話ですね。そして物語の最後は

「魔王はいずれ復活するだろう。しかしその時にはまた勇者が現れ戦いを終わりに導くだろう」

となっています」


『んで、その魔王が封印されているのが魔王城だと』


なんつーか、ありきたりな勇者伝説やなー。

嫌いじゃないけどね。


「そういうわけになりますね」


「自分たちはそのためにあの森に?……はあ」


なんてこった\^o^/とため息をついたミフルとは対照的にアリスさんは涼しい表情のままだ。


「…まあ概要はこんなところだ。

予想になるが、魔王城発見のカギはトキタだ」


『俺?』


いきなりヨナが俺に話題を振ってきた。

授業中に急に当てられたみたいな気分。


「お前の能力だ」


能力とかいてチカラと読むんですねわかります。

……中二病はさておき、俺に出来ることか。


「カナタはマナを見れるだろう」


『あ、なるほど』


精霊になって?はや一月。

この感覚に慣れきっており、気がつかなかった。


「それでは明日の出発は正午だ」


納得した俺を確認するとヨナは話はこれまでだ、と言わんばかりに切り上げた。

誰も異論はなくヨナの言葉に全員 が頷いた。

……ちなみに、最初の挨拶以降一度も声を発しなかったプリーさんは終始何かを食べていた。

最初はパンだったが次見た時にはパエリヤっぽいもの。

その次見た時は麺類。

気がつくと違う物を食べていた。

俺含め全員が突っ込みたくなるのをずっと堪えていた。

なぜならプリーさんに突っ込んだって意味がないことは分かっていたから。

彼女はかなりマイペースなので。


晩、食事は部隊毎に用意することになっている。

教師たちはほとんど介入することは無く、食事も一緒に摂ることはない。

なかには例外的に一緒に食べる人もいる。

セオドア先生とかそうらしい。

俺たちの場合はとても意外な人が食事作成の立候補をした。


『本当にプリーさんが作ってくれるの?』


「ええ、食事には少々こだわりがありましてね」


ほんわかと微笑みながらプリーさんが袖を捲った。


「食料は足りるのか?」


リンもプリーさんの料理スキルに半信半疑なようだ。

俺もリンもプリーさんは食べる専門だと思っていた。


「では、勝手に厨房に入って来ないでくださいね」


話はそれまでと言わんばかりにプリーさんは意気揚々と歩いて行った。


「一時間ほどかかると思いますので辺りを見てまわったらいかがですか?」


置き去りにされた俺とリンにアリスさんが声をかけてきた。


「そうだな。少し歩いてくる、行こう」


『うい。じゃ、晩御飯までには戻るから』


リンと並んで天幕を出ると辺りは月の光で照らされていた。


「どこに行こうか?」


『んー』


リンの言葉を受け辺りを見回してみる。

……と、俺の視線はある方向に釘付けになった。

リンに釘付けになったワケではないよ?


『………ぁ』


「どうした?」





「どうした?」


私の精霊(かぞく)が急に間の抜けた声を出した。

普段から抜けているところのあるそいつだがいつもとは違う雰囲気だ。

いや、だからといってそこが欠点ではなく可愛らしいところだから無くなってしまうのは嫌だが。

……何はともあれ。


「だからどうしたんだ?」


質問を重ねても答えは返って来ない。

仕方がないのでその視線を追ってみても先にあるのは月に照らされた木々だけ。

…まさか森から何かが来るのか?

探るために魔法を使おうにも私の魔法は攻撃専門のものばかりだ。

それに見張りに行っている仲間もいる。

何か問題があるとは思えない。

試してみるか?

《一体化》とやらを。





『っと、ごめんね』


あまりにマナが綺麗で言葉がでなかった。

昼に観ていた風景だけど今観ているモノは格別だった。

昼は太陽の光もあり、青空との対比としても綺麗だったが、今はそれを上回る。

端的に、表面上だけを言うならばこの風景は「夜空に向かい、上る光の瀑布」だ。

色の違う光の滝が空へと向かっている。

ああ、この前リンと見た夜景だって忘れられないけど。

だけどこの幻想だってきっと忘れられない。


「やれやれ、楽しそうだからいいさ」


『やっぱり、リンにはこの森がただの森に見える?』


「まあね。大きなマナの存在ぐらいは感じ取ることは出来るが」


『………』


「どうした?また黙って」


『ちょっとこっち来て』


「へ?」


リンの手を取って人気のない方向へと向かった。




生徒たちからある程度離れた所で歩くのをやめた。

ここなら森から流れ出るマナの奔流もしっかりと見えていい感じだ。


『ここなら誰にもばれないな、うん』


「い、いきなりどうした?」


『リンクが出来てもうある程度経ったし、そろそろ次の段階に進んでいいんじゃないかな。

俺たち』


「つ、次の段階っ?」


『そ。校長も言ってたよ。俺たちは遅すぎだ、って』


「なにっ?もももうみんなそうなのか?」


『校長に聞いた限りではだけどね』


「……そうか。分かった、私も覚悟を決めよう」


『んじゃ、始めようか!』


「ぇ?そ、外で……か?」


『なんか問題ある?』


「いや、カナタが良いなら…」


『そんなに顔赤くして緊張しすぎだって』


「だが、やっぱり…」


『ううん、やるよ、《感覚共有(シンクロ)》!』

ご覧下さっている方、お気に入りして下さっている方、皆々様こんにちは。


前回に続き大きな話の進行はあまりありませんでした。

ですが少しずつですがこれの中央?核心?に近づきますので、たぶん。


誰かの発言を明後日の方向に誤解してわらわらする人が好きです。

最後あたりはリンのそんな様を書きたかったんですが。


またいらして下さりますよう。それでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。