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第21話 「異世界の異世界で」

セオドア先生の掛け声の直後、四人が動き出した。

俺の目の前にはアリスさんとヨナさんが。

リンには残りの二人が。

結局ニ対一って不公平じゃね?


ヨナさんが双剣を振りかぶっていた。

リンのほうをチラリと横目に見て、視線を戻した時にヨナさんが攻撃に移っていたのだ。

そりゃあ相対した相手が何処か別の所をみてたら攻撃しますね。

明らか過ぎる隙だし。

とはいっても、その隙を作りだした俺には関係無いわけで。


『ちょ、いきなり!』


上段から襲いかかる双流を切り上げながら叫ぶ。

ギインッ!

力が拮抗して押し上げる俺と圧殺せんとするヨナさんとで視線が重なる。


「始めの、合図は、あった、ろうが」


籠められた力がどんどん強くなってくる。


『そういやそうだったわー!』


「背中がお留守ですよ?」


ざわり、と後方から嫌な予感がした。


『っ!』


ヨナさんと斬り結んだ剣から力を抜き咄嗟にリンとは逆方向―――右に転がった。

直後俺の立っていた空間、それもちょうど頭部辺りにレイピアの刺突が駆け抜けていた。


『殺す気かぁ!?』


がむしゃらに叫びつつ下がって距離をとる。


「それはもう殺す気ですよ。

そうでもしなければヨナと初見で斬り結んだ相手に勝てると思うほどボクは甘くないんです」


「……アリスよ、あと数ミリで俺に刺さるとこだったぞ」


「「『……』」」


仲間(アリス)の攻撃によって眉間を貫きかけられたヨナさんの発言で場が凍りついた。


『え、えーと、そんな攻撃あたるかよ!

殺す気なんかじゃ生ぬるい!

死ぬ気でかかってこいやぁ!』


「そ、その減らず口がいつまで続くか見ものですね!」


「……やれやれ」


ヨナさんって俺以上に苦労人ぽいな、うん。


『と、その隙に攻撃』


両足にマナを纏わせて二人の間に踏み込む。


「む!」


「速い!」


二人の反応からするに瞬間移動にでも見えたのだろうか。

だがしかし、これは俺の『必殺・精霊だっしゅ』である。

ん?『魔弾』に続いてこれも俺オリジナルの魔法になんのかな。


『ちぇいさー!』


某勇気のトライフォースに選ばれた緑色の勇者よろしく回転斬りで二人を襲う。


「がぁっ!」


「くぅっ!」


『必殺・精霊だっしゅ』の効果もあってか想像していた以上に勢いがついた。

ヨナさんは咄嗟に双剣で受け止めたようだが練習場(せかい)(はじ)まで吹き飛ばされた。

アリスさんはギリギリでレイピアを使って受け流したようだ。

そんなほっそい剣でよくやる。


「これで!」


振りきった俺を地面に張り付けるように「突」の雨が降り注ぐ。

剣で受け、必死に避け続けるもアリスさんからマナの流れを感じる。

そのマナが身動きをとれない俺の足元で形を変える。


『下からもかよぉっ!』


「ボクの魔法を!?」


魔弾を収束させることもなく全方向へと解き放つ。

その衝撃でアリスさんは空を舞った。

かくいう俺も自らの攻撃で吹っ飛ぶ。


『づぁあ!』


「ぐぅ…」


運よく吹き飛ばされたヨナさんがいたのと同じ方向に吹き飛ばされた。

そして壁とのクッションになってくれたようだ。


「き、貴様」


踏んだり蹴ったりのヨナさんが怒りの声を上げた。

……まずい、これはマジギレやで。

壁、じゃなくて壁との間にいるヨナさんを蹴っ飛ばして距離をとる。

いいや、逃げた。

いつも静かな人のマジギレってやばいぜ。

立ちあがったヨナさんが双剣を投げ捨て、背に備えた大剣を構えた。

《火》のマナが形を成し、陽炎が滾る。


『こいつは―――』


これは――――――絶対に受けたら駄目な攻撃だ!

咄嗟にとりすぎてしまった距離をもう一度詰める。


「させません」


『アリスさん邪魔!』


吹き飛んだと思ったアリスさんが俺の動きを止める。

いつの間にか金色だった髪は白銀に染まり、今朝見た白いマナがアリスさんを覆っている。

その間にもヨナさんは腰を深く落とし、四股(しこ)を踏むように足を開き肉厚の大剣を頭の後ろに構える。

腰をひねって遠心力を最大に生かせるような形だ。


「セルキオス派三剣流魔剣士ヨナキリアス=ロゼス=アクセティア―――」


なんか名乗り始めた!

滾る《火》が大剣に移り、剣が割れ(・・)た。

展開したというべきか。


「―――《融鉄剣(ファイア・アクセル)》、構え(レディ)……」


やばいって!

あれ超必殺技か何かでしょ!?


『せいや!』


散弾状に拡散させた魔弾でアリスさんを今度こそ吹き飛ばす。

怪我とかしたらゴメン!

しかしもう遅かったようだ。

もう彼を止められるタイミングじゃない。

ならば!

俺もこの場でマナを練り剣にマナを送り込む。

真似ですがなにか?


キィィィィィ―――。


俺の剣が微細な振動を始めた。


『えーとなんだ!必殺―――』


(ブラスト)ォ!!」


『考える時間をくれぇーー!』




赤い斬撃が飛ぶ。

それは圧倒的な破壊の色。




迎え撃つは鋼鉄の剣。

それが放つは消滅の音色。




二つの剣が触れ合う刹那、視界が光に包まれた。





薙刀を構えたリンの前にはプリートとセシルールとが立っていた。


「そんな大ぶりの武器でどうする気ですか?」


プリートはマントと同様の黒を基調とした拳のみを覆ったナックルダスターを両手につけたまま問いかける。

彼女としてはさっさとこんなことを終わらせて食事をとりたいのである。

だからこその挑発。


「いやいや、そう常識に囚われていては足元をすくわれるぞ?」


微笑み返しながらリンも返す。

傍らでは自らの片割れとでも言える少年が戦闘に入った。

彼が負けるはずがないだろう、とリンは思いこれ以降そちらには全く気を向けていない。


「…いいですね。

美味しそうですよ、貴女」


「それは……全く嬉しくないな」


女二人の会話が繰り広げられるなか、セシルールは一人展開について行けずに困っていた。

〇番でも曰くつきの人外といわれる三人組といきなりチームを組めと言われてまだ一週間もたっていない。

〇番きってのお荷物部隊にだ。

彼にプリートを、ましてやリンを理解するなど不可能である。

それよりもすぐ近くで行われているニ対一の戦いに彼は目を奪われていた。


(すげぇ、あの二人が本気をだしてないとはいえ…)


一六〇あるかどうかの身長の少年が”三剣鬼”と”幽鬼”やりあっているのである。


(俺じゃああんなにはできないよな)


客観的に見れば、彼も実は人外三人とならぶにふさわしい力を持っているのだが、えてして人は自分の価値を正当に評価出来ないもの。

それが少年なら余計に。

と、まあこのようにセシルールは考えに耽ってしまった。

今がどんな時か忘れて。

今が戦いの場だというのに、相手に意識を向けるのをやめてしまったのである。


「《火槍(ファイアーランス)》」


「え?」


気がついた時にはもう遅く、リンの放った《火》の槍が彼の胸を、腹を、足を―――。

貫いていた。

燃えるような、事実燃えていることもあり「燃える」痛みに絶叫を上げようとした時には更に飛来した火によって彼の意識は寸断されていた。


「一人脱落」


校長(じゅつしゃ)がぼそりと告げた時には、セシルールのからだは庭園(ここ)から消えていた。


「庇わなくて良かったのか?」


「今のを見切れと?

無理を仰りますね」


「だろうな。

わざと見過ごしたなどと言われたらこちらが困ってしまう。

……さて」


「やりますか」


セシルールからしたらかき消えた、としか形容しきれないスピードで彼女たちは動き出した。


「本当に美味しそう……食べてしまいたい」


「残念ながら私にそんな気はない」


「あら、経験してみないとわかりませんよ?」


喋りあいながらも二人は動きを止めい。

リンは重量にまかせて薙刀をふりまわしているのではなく、完全に勢いをコントロールしている。

そうして雨のような拳打を放つプリートから距離をとっている。

対してプリートも地面を滑るようにステップを踏み決してダメージを受けていない。

人一倍容姿が優れた彼女たちの殺陣は見る者が見れば舞っているように見えるだろう。

切り札どころかこれ以上互いに手札を切ることも無く、数を重ねていく。


「まどろっこしいな」


リンが多少面倒臭そうに呟く。

この現状で、二人は拮抗していた。


「同感です。貴女を食べてみたい気持ちもありますがお腹がすきました」


プリートも優雅に微笑みながら、拳を止めない。


「提案があるのだが?」


無論、それはリンも。


「一発勝負ですね」


「話が早い」


そう言って二人は同時に壁際まで下がる。


「互いの最大級の攻撃魔法でやろうか」


「臨むところです」






そうこうして、俺たちの初対面は女性陣二人の放った破界魔法でめちゃめちゃになった。

詳しく言うと、あと少しで俺の新技とヨナさんの必殺技が触れ合う直前に決着がついたのだ。

リンが放った《日》の魔法とプリ―さんが放った《夜》の魔法とがなんだかヤバい感じに作用しあって校長が創りだした庭園?が崩壊。

その余波で俺たち三人も吹き飛ばされた。


「大丈夫ですか?二人とも」


「……体は別に異常はない。

だが―――」


『心が、ね。

粉々に砕かれました』


魔法の余波でやられた俺とヨナさんだけでなく、リンに惨殺されたセシルールさんも同様に女性に対する恐怖を埋め込まれました。


「あの、えっと、女性って怖いですね」


「…ああ」


『あははー、はい』


迫真。

真に迫った表情でセシルールさんの問いかけに答えた俺とヨナさんである。

一方、性別迷子ことアリスさんは涼しげな表情をしていた。


「そうですか?

少々お転婆なくらい、男なら受け止めてあげてはどうですか?」


『いや、あんた何者?』


リンとプリ―さんのほうも何があったのか分からないがいろいろとあったようで。


「これから一緒に食事でもいかがですか?」


「……断固辞退させていただく」


プリ―さんがリンにアタックをかけてるように見えるのは錯覚カナ?




昼休みの終わりを告げる鐘の音が鳴り響いた。





『暇だなー』


「そう言うな、もう少しで着くさ。

それに私と一緒の馬車が不満なのか?」


『け、決してそういうわけじゃ』


「ふふふ、冗談だよ」


そう、演習が始まる。


「いやいやー、私たちもいるんだけどねー」


『こういう輩に何を言っても無駄よ。ティー』


……演習が始まります。

ご覧いただきありがとうございます。


プリーはそっちの気はないと思います。

言葉通りの美味しそうもアレですが。

なにはともあれ次回から演習始まりです。

…さっさとまとめられるような能力が私にあるのかしらん。


では、またのお越しをお待ちしてます。

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