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第18話 「君には知る資格がない」

新学期の人がんばって。

「それじゃあ授業を始めます」


リンとともに特訓を始めようか、という時に校長が急にそんなことを言い放った。


『果てしなくいやな予感がするんですけど』


俺だけかな?

ちらりと横にいるリンを窺うも彼女はそんなことを思ってはいない様子。


『いきなり何故?』


「変わったから」


この人は文法とか勉強してきたほうが良いんじゃなかろうかっ。

校長は人じゃないー、とかそういう突っ込みはなしで。


「君たちは変わったから」


「”私たち”、ですか」


なるほど俺たちか。

意識的に思考から排除してきたけどそうはいっていられないか。


『契約のことですね』


リンも同じことを思っていた様子で校長をじっと見ている。


「そう。先達として、君たちに教えておかなければならない」


あれ?

やけに雰囲気が重いぞ。


「召喚前に学んだこと以外に何かあるのですか?」


「ふつうはない。けれど君たちは違う」



一瞬の間。



「そして君は誰とも違う」


澄んだ湖のような瞳が俺を捉えている。

ごくり、と隣に立ったリンが生唾を飲む音が聞こえた。





彼方やリンのいる、エクリプス魔導学校から東北東に約70キロメートルほどの所にアスカ王立士官学校はある。

塹壕や城塞が周囲を取り囲み、勉学や魔法を教える他の学校とは全く違うこの施設。

国防の要となる軍人を排出することがここの設立目的だ。

とはいってもアスカは――天候の問題で使えない所も多いが――広大な土地を持つ国家なので士官学校はここ一つではない。

そのため士官学校同士ではここの士官学校を近隣の地名―――月齢0の新月(エクリプス)―――から「0番」と呼ばれている。

また、魔物が多く生息する新月の森に近いこともあり設立目的よりも近隣の町や村の盾として機能していたりする。

そんな士官学校からエクリプス魔導学校のある街までは地面の状態もあり馬車でも約二日かかる。

かかるのだが、その道のりを馬車の数倍の速度で駆ける四つの影があった。

彼らの身分はたなびくアスカの国章が入った漆黒のマントが示すとおり、0番の訓練生である。

時刻は黄昏時。

普通の旅人はこんな時間に狼がでるこんなところをうろうろしてはいない。


「やれやれですね、教官の思いつきには」


「そう言うな、アリス」


「いきなり特殊部隊などと…、もう演習を目前にしているというのに」


「今更どうしようもなかろう」


「アリスさんもヨナも、くっちゃべってないでもっと急ぎやがれ。

私は腹が減っているんだ。

ああああぁ、「月の踊り場」のディナーが私を待っている!」


「……相も変わらずプリーは食に関しては面倒ですね」


「……そう言うな」


「さあっ! ばんばん加速していっくよー!」


「(つっこんだら負けだ…)」


「セシルールさん? どうかなさいましたか?」


「い、いやっ!別に何もっ」


「そうですか。

―――いきなりボクたちと、ということで緊張なさっているのかもしれませんが」


「いえ、な、何かありましたら自分から申し出るのでっ」


「そう、ですか。

ではなにかありましたらボクかヨナにでも言ってください」


「お心遣い感謝します」


「こぉらぁー!アリスさんに新入り、口を動かしてる暇があるなら走りなさいー!」


「わかりましたよ」


「り、了解!」


ちょうどそのころ、彼れらの視界には目的地(スパイア)の放つ光が飛び込んできた。

あの学校まではもう少しだ。





「これが第一の、最大の違い」


『んなあやふやな。ほとんど拡大解釈じゃないですか』


「……」


『リン? 俯いてどうしたの?』


「な、な、なんでもないから」


耳が赤い気がするけど。


『そう言うならいんだけどさ』


それにしても校長の知識はどこから来てるんだか。

どうして通常召喚された精霊と、精神によって召喚された精霊の違いを知ってるんだろ。


「君には知る資格がない」


『だ・か・ら!どうやって俺の考えを読みとってんですか!?』


この際、校長の中二臭い台詞を突っ込んでる暇はねぇ。


「顔にでてる」


「表情が分かり易すぎるよ、カナタは」


リンまでそんな。

自然と体が崩れ落ちてしまう。

客観的に説明すればOTLという感じに。


『もうその件は気にしないことにします。

……まだ授業はあるのでしょう?』


「そう。君たちが本契約を結んでくれたお陰で君の魔法特性が分かった」


「やっとですか」


俺から顔を隠すように俯いていたリンが復活。

まじめトークなら大丈夫らしい。

というかリンは何を考えてたんだろ。


「君の属性はこの世界に存在するどの魔術体系とも違う」


『はぁ』


「…カナタの属性がですか?」


「先日の測定の時は無属性と断じたけれど違った。

君の属性は全ての複成属性。

通常ならば互いに相殺しあうはずのそれらが合わさった結果の新しい属性」


「なるほど…」


……なるほど、わからん。

これで分かる人がいるんだろうか。


『ええと、新しい魔術体系ってことはリンとかが使ってる魔法はつかえないってことですか?』


「簡単に言うと、そう。

君は新しい魔法の祖。

自分で魔法を考えなければならない」


ようわからんけど無茶言われてる気がするよー。


「…それでは特訓を始める」


そしてやっぱり説明は最後までしない、それが校長クオリティ。




こんな説明もあってか俺の集中もいつも以上にぶれてしまい、今日だけで新しい穴を五個ほど壁にこさえてしまった。

最近は減ってたのに。





セオドア先生との特訓では新たな事実が発覚することもなく戦闘訓練だった。

この時にはさっきまでの混乱もある程度落ち着いていたので目立ったミスをすることも無かった。

練習も終り、さっさとセオドア先生は帰って行った。

今日はリンもティーちゃんもいないしさっさと帰りますか。


『久々の平和な帰り道を楽しみながら帰ろー』


そして俺は暗闇に染まる学校を後にした。




彼方が学校を後にしたころ、セオドア=クライハウスが


「そういや明日は0番からトキタと同じ部隊になるやつが来るんだったな。

……伝え忘れてた」


などと呟いていたことを知る者は本人のほかにいなかった。



毎度、ご覧下さりありがとうございます。


現在、演習に向けての準備期間みたいな感じです。

校長が言った「最大の違い」とはなんなのか。

説明をぼかしてるのは考えてないからではアリマセンヨ?


次は新キャラでるかもです。


またのお越しをお待ちしております。

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