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宇宙の端には滝があります

宇宙の端には滝があります

宇宙は巨大なテーブルのようであり、それを巨大な象が支えています

そして、象は一杯のビールを探しています

しかし、象が飲めるほどの大きなジョッキは見つかりません

王子は不思議そうに言いました。

「そんなにビールが欲しいのかい? その長い鼻で飲んでしまえばいいじゃないか」

象は言いました。

「ビールはジョッキで飲むのが一番美味しいのさ。

そして長いこと、宇宙の始まりから待ち続けた最初の一杯こそ本当に美味いものさ」

王子はそういうものかと思いました。

でも同時に、最高を追い求めて何も手にはいらない事に憐れみを感じます

王子は言いました。

「じゃあ僕がジョッキ一杯のビールを作ってあげるよ」

象はそれを聞いて、喜ぶどころか困惑します。

「どうしたんだい? 君の言う最高の一杯が飲めるんだよ」

「ビールは待てば待つほど美味いものさ。まだ待ちが足りないかもしれない。

そうすればわしは最高の一杯を逃してしまうかもしれない」

期待していた返事が返ってこないことに王子は拗ねました。

そうだ。この象の目論見を砕いてやろう。

喉から手が出るほど欲しいビールを目前にして、この象は我慢できるかな? きっと出来ないだろう。

王子はニヤニヤ笑いを隠して、ジョッキ一杯のビールを作ろうとしました。

しかし、王子は子供です。お酒を飲んだことがありません。

知らないものをどう作るというのでしょう。

王子は困ってしまいました。

「そうだ。知らないなら知っている人に聞けばいい」

王子はそう考えて、象のもとを去ります。

そこは酒場でした。

いろんな人がお酒を手に長い時間を消費しています。

彼らは存在していることが重要なので、それ以外に仕事がないのです。

なので、お酒の力で時間を忘れることで時間を消し去っているのでした

王子はそんな一人の酔っ払いに問います。

「ビールってどんな味? 美味しいの?」

酔っ払いはその問いかけに緩慢に振り返りました。

「美味しいとかじゃない! 僕の存在になくてはならないものさ」

なくてはならない存在。そう聞いても王子にはちっともビールがなにかわかりません。

もうこうなったら飲んでみるしかない。王子はそう決めて頼んでみることにしました。

「ねえ、僕にもちょうだい?」

「なんだい、もう欲しくなっちゃったのか?」

酔っ払いは案外あっさりと王子の前にジョッキを置きます。

「さあ、これを飲めば君も大人だよ」

「大人? 僕はまだ子供だよ」

「忘れたくなることを忘れるためにビールを飲む。その瞬間から人は大人になるのさ」

王子は困りました。

まだ大人になりたくなかったのです。

いつまで経っても飲もうとしない王子に、酔っ払いは静かにジョッキを引っ込めました。

「まだ大人になるには早かったみたいだね」

そうかもしれない。王子はそう考えて、ビールを飲んで知ることは諦めました。

王子はとぼとぼと象のもとに戻ります。

王子は象に言いました。

「僕にはまだビールを作れないみたい。僕が大人になったらでいい?」

もうすっかりイタズラのためにビールを作ろうとしていたことなど忘れて王子は申し訳なさそうに言います。

象は笑って言いました。

「ああ、君がビールを飲めるようになって一緒に飲むその日こそ、最高の一杯に相応しい日だろうなぁ」

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