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恐怖耐性で無双する話  作者: 砂場で遊んでる内に沼に入ってた子供
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1拒絶と対立

僕が発した静かな問いかけに、ローブの男たちは一瞬、沈黙した。彼らは、目の前の青年が恐怖に震え、跪いて命乞いをする「勇者」を期待していたのだろう。


リーダー格らしき、威厳のある装飾を施したローブの男が、怒りを押し殺した低い声で言った。


「貴様、何を言っている?ここは異邦の地、グランベル王国だ。我々は魔王の脅威から民を救うため、古の儀式によってお前を召喚した。勇者よ、我らの言葉に従い、魔王討伐の任に就くのだ」


男は自信に満ちた威圧的なオーラを放っていた。その場の空気は凍りつき、同行していた魔術師や騎士たちの視線は、僕に「服従」を強要していた。


だが、彼らの威圧は、僕にとってただの無意味な空気の振動に過ぎなかった。


【ユニークスキル:恐怖耐性(極)】。


かつて僕の全身を縛り付けた「恐怖」という感情そのものが、もはや僕の辞書には存在しない。高校で赤城たちに見せつけられた暴力や、権力者にへつらう教師たちの冷酷な眼差しが、僕の精神を破壊し尽くした結果、逆に手に入れた絶対的な心の平穏だった。


僕はただまっすぐに、その男を見返した。一切の怯えも、緊張もない、湖面のような視線で。


「拒否します」


僕の返答に、男の顔が驚愕に歪んだ。


「な、何だと!?」


「僕は、あなた方の道具ではありません」僕は淡々と続けた。「僕を召喚した目的が何であれ、それはあなた方の一方的な都合です。高校での僕は、誰かの都合で殴られ、罵倒される道具でした。もう二度と、そんな人生は送りません」


男は激昂し、手に持っていた杖を床に叩きつけた。


「愚か者め!お前には拒否する権利などない!我々が召喚したのだ、お前には我らの法と命令に従う義務がある!従わなければ、どうなるか分かっているのか!」


彼の威圧はさらに増した。一般人なら嘔吐し、気絶するほどの魔力の放出だ。しかし、僕のステータスウィンドウには、**【恐怖耐性:効果発動中。精神への影響:0】**とだけ表示されていた。


「脅しですか」


僕は少しだけ口角を上げた。それは、嘲笑に近い表情だった。


「高校で腐るほど経験しました。大声を出したり、痛い目に遭わせたりすれば、相手が屈すると信じている弱い人間が取る行動です」


騎士の一人が憤激し、剣の柄に手をかけた。


「無礼な!不敬罪だぞ、異邦人!」


ローブの男は騎士を制し、顔を赤くして僕に近づいた。そして、先ほど僕の顔に拳を叩き込んだ魔術師を指さした。


「よく見ろ。お前の頬の傷は、我々の治癒魔術で治したものではない。この世界では、お前のその異質な力は我々の管理下になければ危険だ。大人しく従えば、最高の地位と富を与えよう。だが、逆らえば—」


男は、僕の目の前で、鋭い短剣を自分の掌に突き立てた。血が噴き出し、男は苦悶の表情を浮かべる。


「その痛みを、お前は無限に味わい続けることになるぞ」


男は僕の反応を楽しみにしているようだった。


僕はそれを見て、静かに首を横に振った。そして、自分の左腕を掴み、そのまま力任せに引きちぎった。


ボキッという鈍い音と、肉が引き裂ける不快な音。僕の左腕は、肘から先が、ぐしゃりと変な方向に曲がった。ローブの男たちが息を飲む。


「何を…正気か!?」


その瞬間、【ユニークスキル:無限自己回復(極):効果発動中】。


折れた骨がきしむ音、破れた筋繊維が再結合する音が、まるで高速再生の映像のように僕の腕の中で起こった。男たちが驚愕のあまり言葉を失っている間に、僕の左腕は完全に元通りになり、まるで最初から何もなかったかのように動いた。痛みはあったが、一瞬で遠い記憶に変わった。


「僕を無限に痛めつける、とおっしゃいましたね」僕は腕をブラブラと動かし、血の一滴も残っていない床を見た。「それは不可能です。僕を傷つけることが、あなた方の力ではもうできない」


僕の「恐怖耐性」は、彼らが僕を支配するための最後の手段である「痛み」すらも無効化してしまった。


僕はそのまま、召喚陣から一歩踏み出し、謁見の間を出口に向かって歩き始めた。


「待て!どこへ行くつもりだ、勇者!」


「勇者ではありません」


僕は立ち止まらずに答えた。


「僕は、僕を道具として使おうとする者全てに逆らい、この世界を自由に生きる。あなた方グランベル王国は、僕にとっての敵国となりました」


騎士たちが慌てて僕を取り囲もうとする。僕は彼らを見もせず、右拳を軽く握りしめた。


「手を出せば、どうなるか…。無限に回復する怪物と戦う覚悟があるなら、試してみるといい」


僕の言葉に、騎士たちは一斉に動きを止めた。彼らの顔に浮かぶのは、恐怖ではなく、自分の常識を超えた「異常」に遭遇したことへの純粋な畏怖だった。


僕は振り返ることなく、王宮の長い廊下を、自由への第一歩として歩き出した。僕の異世界無双は、権力者に屈することなく、その権力に背を向けることから始まったのだ。

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