表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

Episode2 「We don't call 911!」

最初の方は一本一本が短いですし、出せるだけ出しちゃいましょうか。

全米を震撼させた怪人を撃退した愛国的な少女たちは、全米のお茶の間を賑わせ、活気づけた。


夕方のフォックス・ニュースでは、英雄的で愛国的な彼女らがスタジオに招かれていた。

「正直なところ、愛国者である私達の敵ではなかったわね。あのヘタレに比べれば、まだ不法入国者(メキシカン)のほうが骨のあるやつが多いわよ。」

マーガレットの得意げな顔がアップになる。今までテレビに出ていなかったことが不思議なほどテレビ映えする顔だ。


「怪人を撃退できたのはなぜだと考えますか?」

司会者が尋ねる。

「根本的な話、彼らには近接戦闘の心得が全くと言ってよいほどなかったわ。それはなぜか?彼らに愛国心がなかったからよ。」

「本物の愛国者ならば、パトリオット・タクティカル・トレーニングで基礎的な戦闘の心得を身に着け、パトリオット・ストリート・パトロールで実戦経験を積んでいるはずだわ。」


「パトリオット・ストリート・パトロールとは何ですか?」

司会者は当然の疑問を挟む。

「私達の街をパトロールして、例えば不法入国者やギャング、麻薬中毒者なんかを無力化することよ。」

「無力化…とは?」

「そうね…一番多いのは意識不明かしら。いくら強そうに見える不法入国者だって、腹に9mmパラベラムを叩き込むと急に情けなくなるのよ。」

司会者の顔が少し青ざめているのを見たメアリーが、慌てて話を引き取る。

「もちろん当局と連携の上、安全と人道に配慮して行っていますからご心配なく。」

「そうよ、ゴミ拾いの奉仕活動とそんなに変わらないわ。」

受け取り方によっては少し不穏なことを言う。


「とにかく、いま怪人のせいで私達の祖国がこれだけ困っているのは、ひとえに必要な予算を削って、不要なポリティカル・コレクトネスやLGBTQ関連に予算を放り込んでいる民主党と居眠りジョー(スリーピー・ジョー)のせいだわ。私から言えることは唯一つ。バイデン、お前は首よ!」

「やはりこの未曾有の国難に対応できるのは我らがドナルド・トランプと共和党しかないのですね。私も同感です。それではお時間ですので、以上で愛国的な少女たちへのインタビューを終わります!」


生放送のカメラが切れ、スタジオの人々が(マーガレットを除き)安堵の表情を浮かべたとき、あまり口を開かなかった一人の少女がぼそっと呟いた。

「シガレットをいただいても?」


こうして、(概ね)問題なく彼女らの初テレビ出演は終わった。


その晩、メアリーは自室でバスローブに着替え、いつものようにバーボンを愉しんでいた。その姿を狙う奇妙な生命体がいることにも気づかずに。


その生命体は、これまでこの星の数々の少女と”契約”を行い、怪人共と戦う優秀な戦士へと育て上げてきた敏腕リクルーターである。或いは、か弱き少女の良心に漬け込み、人間兵器へと変えてきた死の商人…とも言えよう。

今回もいつものように、マスコットキャラクターのような甘いマスクと、敏腕リクルーターらしいトークスキル(ペテンとも言う)によって、か弱い少女に”契約”をさせようとしていたのである。


「僕と契約して、まほu…!?」

妖精は、いつものセリフを言うこともできなかった。何故ならば、口を開いた刹那に、S&W社製M500 PC 10.5インチモデルの、シルバーに光る銃口を押し当てられたからだ。


代わりに、メアリーが口を開いた。

「We don't call 911!」

もごもごと口を動かそうとする妖精に対し、メアリーはさらに畳み掛ける。

「あまり私の機嫌を損ねないことね。.500マグナム弾なら、私の人差し指一つで貴方の脳漿をハンバーグにすることも出来るのよ。」

妖精は急に動くのをやめた。その瞬間、押し当てられた銃口は外され、代わりにブラックテープで妖精が簀巻きにされた。


一通り拘束したあと、メアリーは口につけていたブラックテープを外した。

「ちょっと、あんまりじゃないか!いきなり銃口を突きつけてくるやつがどこにいる!」

「黙れ。聞かれたことにだけ答えなさい。私の家に入った目的は?まさか入口の看板が見えなかったなんて言い訳はしないよね?」

妖精は完全に怯え、口を半開きにしたまま何も喋らなくなってしまった。


「回答いかんでは殺すわよ。或いは回答しなくても殺すわよ。」

「僕は…君と”契約”して魔法少女になってもらおうと思ったんだ。」

「あら、場所が悪かったわね。私には無断で敷地に入ったセールスを撃ち殺す権利があるわ。」

「でも…きっと僕の力は貴女の役に立つんだ!」

「大体、君たちは怪人について何も知らないし、対抗する有効な手段も持ち合わせないだろう!だから、役に立つよ!」

「随分見くびられたものね。既に一体の”怪人”を、私たちはハンバーグにしたわ。今ここで2つ目のキル・スコアを稼いでも良いのよ。」

「いや…でも!これからもっと強力な怪人が出てくる可能性もある!僕と契約したほうがいい!」


メアリーは、バーボンを一息に飲み干したあと、数秒目を伏せて考えた。そして、穏やかな声で妖精に話しかけた。

「わかったわ。契約の件、前向きに考えさせてもらう。」

「よかった!早速サインを…」

「前向きに考えると言ったけど、まだ契約するとは言っていないわ。そもそも弁護士抜きで契約なんて、どうかしてる。」

「ちなみに、契約が成立するまで簀巻き状態は継続よ。」

妖精は絶望で青ざめた。


その後メアリーは、マーガレットとエマに連絡を取った。そして三人は話し合いの末、妖精を出し抜く策を思いつく。


その頃Xでは、夕方のFOXニュースの内容がトレンド入りしていた。

そのトレンド・ワードは、”Liberty Girls”

「We don't call 911!」と「911 Around 10 MINUTES 1911 2 SECONDS」は、私の大好きな言葉です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ