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Episode1 「テキサスに怪人現る!20ゲージ弾の洗礼を浴びせよ!」

魔法少女モノのテンプレ通りに進めています!

怪人(ヴィラン)の出現は、唐突だった。


どこからともなく現れ、人々を殺し、拐い、痛めつける。気づいたときには人間の力が及ばない異世界へ逃げ出す。


怪人(ヴィラン)たちは異世界で満足げに談笑しながら、昼食のヴィーガン・スシ(かっぱ巻き)を食べていた。

「この世界に巣食うガンである人間、どんなに強いんだと思っていたら、大したことないじゃないか。ちょっと魔法を使えば簡単に腰を抜かして、間抜けなことこの上ない!」

「次はどの町の人間を減らそうか?この、ダラスなんて街は人間が多くて良いんじゃないか?」

「ああ、確かに人間も多くて良いな!午後はここを襲うことにしよう!」

一人の怪人はそう言うと、手を空にかざしてワープホールを作る。

「それじゃあ、ちょっと行ってくる」


彼らは気づいていなかった。今まで襲ったニューヨークやサンフランシスコの人間とは、全く違う人間たちを相手することになることを。

そしてこの判断ミスは、その命を以て償うことになる───


一方その頃、3人の少女はステーキハウスのテラス席でワンポンドステーキにかぶりついていた。

「つまりわかる?トランプの当選によって、ファッキンペドフィリアどもはブタ箱に打ち込まれるのよ!」

4chanで仕入れた世界の真実を一生懸命語る彼女は、マーガレット・スミス。聖書と4chanをこよなく愛する敬虔なプロテスタントの少女だ。

「なるほどね…ところで、私のゴールドのzippoはどこかしら?そろそろラッキーを吸いたいのだけど。」

彼女の名前はエマ・ウィンストン。1日4箱のラッキーストライクをこよなく愛するライトスモーカーだ。

「zippoなら胸ポケットにさっき入れていたわよ。でも、オイル切れで火がつかないって言っていたじゃない。」

そう言われるやいなや、エマは目にも止まらぬ早さで右ポケットからスペアの使い捨てライターを取り出し、口に咥えたラッキーストライクに火をつける。

そしてこのライターの場所を正確に言い当てた、聡明な少女がメアリー・クロケット───後のアメリカ大統領になる少女である。


その時、突然悲鳴が上がった。3人が即座に伏せながらテラスの外側に目を向けると、全米を騒がせている怪人が、(無謀にも)3人に牙を剥こうとしていた。


「全米を騒がせているクソ怪人(ファッキン・ヴィラン)が、ついにテキサスにもお出ましね…!」

エマは伏せたまま、咥え煙草で怪人をじっと凝視していた。

「メアリー!聞くまでもないけど、どうする?」

答えが決まりきった質問を投げかけるのは、マーガレットだ。

「もちろん決まってるじゃない!今まで襲ってきた間抜けなリベラルどもと、テキサス人は違うことをあのバカに教えてやるのよ!」

「分かったわ!」


言うが早いか、マーガレットはコンシールド・キャリーされたGLOCK26をホルスターから取り出し、襲いかかる怪人に向ける。タクティカル・トレーニングで、ハンデありとはいえ現役の海兵隊員からキル判定を取ったこともある彼女から見て、怪人はあまりにも近接戦闘の心得がなかった。乾いた銃声が、3発響く。しかし、怪人はよろめき、血を流しながらも余裕の表情を崩さなかった。

「まさか人間のくせに攻撃してくるとは…生意気な!」

マーガレットは続けざまにもう3発撃つが、次は通らなかった。怪人が謎の力で自身の身体を再生させたからである。

「クソッタレ!コイツ、アーマードよ!エマ、貴方のショットガンが必要みたいね!」

投げられた鍵を受け取ったエマは駐車場に向けて走り出した。

「さて、あとはコイツをどう足止めするか…だね」


すると、メアリーがいきなり立ち上がり、両手を上げて前に歩み出る。

「分かった。降参よ。人質にでもなんでもなるわ。」

あまりに唐突な降伏宣言に、マーガレットは動揺を隠しきれなかった。

「ちょっとアンタ!テキサス人として誇りはないの!こんな怪人に降伏するくらいなら戦って死ぬべきでしょう!」

怪人は自身に恐れおののいた人間を見て、満足そうな顔をしていた。

「よしよし…こっちへ来い。降伏すれば、悪いようには扱わない。そこの女も、殺される前にこっちへ来たらどうだ?」

「アンタに降伏する不名誉で家の名を汚すくらいなら、死んだほうがよほどマシね!」

「そうか…それは残念だ、死んでもらおう」

そう言って、怪人が手に禍々しい弓矢を生成した。


今にも弓矢が放たれようとしたその時、怪人は弓矢を手から放してしまった。マーガレットを降伏させることに夢中で、右ストレートを放ったメアリーに気づかなかったからだ。

「愛国者ならば、ストリート・ファイトの心得は当然だわ!」

続けざまに左フック、ローキックを食らわせる。

「かかったわね!3フィート以内にメアリーを立たせて、勝てた者はいないわ!」

マーガレットが知っていて、怪人が知らなかった彼女の秘密がある。

彼女はパトリオット・ストリート・パトロール(Patriot Street Patrol 略称はPSP)と呼んでいるボランティアパトロールによって、数々の悪質な不法移民や犯罪者と戦闘し、無力化(この場合の無力化とは、骨折、チョークスリーパー、失血による意識不明などを含む)している。最近現れ、ニューヨーカー程度と戦ってイキっている軟弱な怪人とは場数が違うのである。

しかし、不法移民や犯罪者より戦闘力は弱いものの再生能力を持つ怪人との戦いは、メアリー優勢ではあるものの致命傷を与えられない状況だった。このままでは逃げられてしまう。そう思った彼女は、急に攻撃をやめ、間合いを取った。


怪人は一瞬の戸惑いを見せ、固まった。その戸惑いが、怪人の最後の思考であった。

9mmパラベラムとは比べ物にならない威力を持つ20ゲージ弾は、怪人が再生する前に、彼の脳髄をハンバーグにしてしまった。

「ありがとう!エマ!」

エマは少し気恥ずかしかったのか、咥えていたラッキーストライクを怪人の脳髄だったものに吐き捨て、はにかむように笑った。


彼女らの愛国的で、記念すべき初戦はこうして、勝利のうちに終わった。

このノリが延々続きます。覚悟してください。


ご拝読ありがとうございます。

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