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黒歴史、国家機密になる

当作品は 衝撃遮断装甲服開発秘話 とある女学生の記録  https://ncode.syosetu.com/n6835ku/  の続編になります。


 アレから──あの悪夢のようなスーツテスト事件から、数ヶ月が経った。

 ゼミのみんなの私に対する態度は、最初こそなんというか……腫れ物に触るみたいな空気があったけど、今ではようやく普通に戻ってきた。

 よかった。マジで。ほんとよかった。

 でも──

「女帝」ってあだ名だけは、なぜか残っている。いや、意味が分からない。解せぬ。

 誰かが事件の断片だけを盛りに盛って伝えた結果、学内の一部では私は「圧倒的権力を持つ小型生物」的存在になっていた。

 ……ほんと、何がどうねじ曲がってそうなったの。


 そんなある日のことだった。

 いつものようにゼミに顔を出すと、教授に「ちょっと話がある」と呼び止められた。

 その顔が、いつになく深刻。


「橘くん、本当に申し訳ない……」


 開口一番、深々と頭を下げられる。嫌な予感しかしない。


「スーツ試験の時の、あの映像なんだけどね……」


「──はい?」


 心臓が跳ねる。嫌な予感が、確信に変わる音がした。


「報告先のほう……お国の関係なんだが、テスト時の映像も提出してほしいって話が来てね……」


「はぁあああ!?!?!?」


 声、裏返った。


「何で提出!?っていうか、画像……残ってたんですかああああっ!?!?!?」


 カメラ全損で、てっきり残ってないと思ってたのに──!


「補助金申請の関係でな……奇跡的に、生き残ってたカメラがあったんだ。それも、高画質なのが……」


 教授は申し訳なさそうに目を伏せながら言った。


「なんで、残ってるんですか……! あんなに消してって、お願いしたのに……っ!」


 私は、反射的に叫んでいた。

 顔から火が出そうだった。よりによって、あの映像が──あんなものがまだ残ってるなんて……。お願いだから、消して!見せないで!!なかったことにして!!!


「ち、違うんだ! わかってる! 君の尊厳の問題だってことも、わかってる! でもね、本当に、映像記録としては一級品なんだ!  2時間フル稼働時の間接応力、衝撃耐性まで一目でわかるものはほかにないんだよ!」


「ちょっ、待ってください! 本気でやめてください! 見せるとか、ほんと、やめてください!! 恥ずかしいってレベルじゃないんですから!!」


「もちろん関係者以外には絶対に見せない! 閲覧権限は私と、提出先の主任技官、それと──」


「その『それと』の人が一番ヤバいんですよ!たいていの場合!!」


「パスワード、厳重に掛ける! 二重三重のセキュリティを施す! 学内でも機密度トップクラスのデータ扱いにするから!」


「せ、せめて……せめて、脱いだ後の部分は削除してください!!」


「……特殊フォーマットで加工不可能なんだよ……本来ならカメラ止めたんだけど、あの状態では……。ね?安心してくれ、幸いなことにコピーも不可能だ!」


「何一つ安心できません!!それにカットは加工なんですかぁぁ?!」


「ツールを使う処理は全部、形式上加工扱いなんだ……すまん!!」


 私は崩れ落ちた。

 しばらく言葉も出せずに、口を開けたまま硬直して──


「……絶対、絶対誰にも見られないようにしてくださるなら……」


 ようやく、それだけ絞り出した。

 教授は、神妙に深く頷いた。

 こうして、私の黒歴史は──機密指定のもと、国家レベルで封印された。

 ……マジで、どこまで行くのこの黒歴史……


 そんな始まりだった。まさか、あんな事件に巻き込まれるとは、この時はまだ思ってなかった──

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