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他国シリーズ

ブルーローズ戦記~青薔薇姫の祝福~

作者: ハテナ・ディン

ゼィ…ゼィ…ゼィ…


静かな森の中、誰もいないその場所で一人の青年が逃げていた。後ろからは気をへし折るような鈍い音が何度も木霊している。青年はそれに追いつかれまいと必死に走っていた。


「うわっ!?」


ふとその青年が足元の折れた小枝に引っかかって転ぶ。その転んだ青年の後ろから現れたのはネーヴェリウスと呼ばれる獣だった。その姿形は表現すると白いオオカミ、ただしその大きさは普通のオオカミの三倍はあるが…その獣が今、赤い瞳をぎらつかせながら青年に牙をむいて襲いかかった。


もうダメだっ!?


青年は目を瞑る。頭の中で自分が獣の鋭い牙と爪でズタズタにされるイメージが思い浮かばされる。だが不思議と痛みは来なかった。昔老年の兵士から聞いた話だが自分の感覚を超える痛みを食らうと痛みを感じなくなるという、それなのだろうか?

目を開けると二人の男女が目の前にいた。男の方は細身の剣でネーヴァリウスの牙を防いでいる。


「全くこんな所で戦闘とは…もうちょっとゆっくりさせてくれても良かったんじゃないかねぇ。」

「ブツブツ言わないの。君、大丈夫?」


青年の顔を覗き込む女性、鮮やかな金色の髪に赤いローブを着たその女性に青年は思わず…


「綺麗だ・・・」

「え~そんな綺麗だなんて~!坊やさ、今夜おねぇさんと良い事しない?」


そう呟いてしまった。すると女性は顔を赤くさせて両手を頬に当てながら体をクネクネさせるとそんな危ない事を言い出した。


「えっ!?いやそんな、ちょっと…」

「とりあえずコイツをさっさと片付けるぞ。もういい年のやつが子供相手に何言ってんだか…」


黒いコート姿にサングラスをかけた男が獣に向かって剣を一閃させる。それだけで獣は口から血を吐き、その巨体を崩れさせていった。男は獣が死んだのを確認すると剣を腰の鞘に戻す。


「小僧、だいじょうブッ!?」


男が自分に近づこうとすると金髪の女性が男の鳩尾にパンチを投げ入れた。男は抵抗も出来ずにその場に崩れる。


「な、何を…」

「さっきいい年とか言ったでしょ。聞こえないと思ったら大間違いよ。」

「無念…」

「あの…?」

「なぁに?」

「大丈夫なんですか?」


青年は男の方を見る。サングラスをかけたままのその男は苦しそうに呻いていた。綺麗だが性格はかなり恐いらしい。


「あぁディンの事なら大丈夫。いつもの事だから。」

「あれがいつもの事なんですか…」


だとすればこの人も大変だな。


「あぁそうそう。この近くに聖ブルーローズ神国って国があるはずなんだけど知らない?」

「それは自分が住んでいる国ですけど…」

「嘘っ!?ラッキ~、じゃあ案内してくれない?実は道に迷って困ってたのよ。」


女性は嬉しそうに青年に抱きつく。女性から漂う良い匂いと豊富な胸に腕を押しつぶされて青年の顔は真っ赤に染まった。


「はい、あっ…その…」

「ウフフッ照れてるの?可愛い~!!私はアヤ・ティーチっていうの。よろしくね。あっちの男はハテナ・ディン。腕だけは立つから。」

「イテテッ・・・腕だけっていうなよ。ディンだ。よろしくな。アヤの護衛をしている。」

「僕はピー・ザ・ナッツです。ナッツと呼んでください。」


そして三人は一緒に聖ブルーローズ神国へ向かう事となった。


「アヤさんとディンさんはどこから来たんですか?」

「私とディンはEGO国から来たの。」

「EGO国と言えば最近建国された黒衣シャドゥ・僧侶プリステルっていう凄腕の隊長がいるって噂の国じゃないですか。」

「あ、あぁまぁな…」

「どんな人なんです?」

「ただのバカだよ。」

「バカって・・・」


アヤさんがそう言うとディンさんが何故か落ち込んだ。よく分からなかったがとりあえず楽しそうな人達だ。


「そろそろ国に着きますよ。」


ナッツが指を指すと大きな白い建物が見えてきた。そして三人は聖ブルーローズに入国したのである・・・


--------------------------------------------------------------


「ナッツちゃ~ん!」


聖ブルーローズ神国に辿りついてナッツを最初に迎えたのはチャイナ服を着た赤い髪の女性だった。その女性はナッツに飛びつくと頬をスリスリする。


「うわっ、女王様!?」

「心配したよぅ。モンスター退治に行ったまま帰らないって連絡があったから・・・」

「心配かけてすみません。」

「それに女王様じゃなくてミナミって呼んでっていつも言ってるでしょ?あら、この方達は?」

「あ、オレの命の恩人です。女性の方はアヤさん。男性の方はディンさんです。」

「初めまして。聖ブルーローズ神国の女王をしているミナミ・ラビリンスです。」


ナッツが二人の自己紹介をするとミナミが自己紹介をする。ディンはそれを聞いて目を疑った。新しく国が出来たと聞いて見にきたのだが・・・まさか王がこんなドジっ子属性を持ってそうな女性だったとは・・・


「あの・・・」

「何だ?」

「そんなに見つめられると照れてしまいます。」

「わ、悪い!!」

「ディン浮気~チェリーちゃんに言いつけちゃうぞ~?」

「それだけは勘弁してくれ・・・」


ディンは一気に疲れた様な顔になる。街を見た所そんなに軍事力を強化しているわけでもなさそうだし・・・こりゃ早々と潰した方が良いかな?


「それより命の恩人ってナッツ怪我をしたの!?」

「だ、大丈夫です。少しすりむいただけですから…」


ミナミはナッツの顔を真剣に見つめる。ミナミと見つめ合ったナッツは顔を赤らめて目を背けた。何せミナミは美人なのだ。クリっとした目に優しそうな顔、性格も悪くないとなれば顔を赤らめるのも仕方ないだろう。


「あ~ぁ、すでに彼女いたんだ。残念だなぁ。ディン、今夜ヤケ酒の相手してくれない?」

「お前を相手にすると襲われそうだから遠慮しとく。」

「つまんないの~」


アヤは本当に羨ましそうに二人を見つめる。ディンはそんなアヤを見てヤレヤレといった風にため息を吐いた。そこにすごい剣幕でピンクの髪をした女性がナッツ達の目の前に来た。


「女王様、また執務室を抜けだしたのですか!?」

「あ、リズだ。」

「全くアナタはこの国の王という自覚があるのですか!?」

「だってお仕事ばかりでつまんないんだもん。」


リズと呼ばれたその女性はミナミに説教を始める。やっぱりどこの国もこんな風景があるんだな~とディンは自国を思い出してしみじみと考えた。


「それよりお客様の前ですよ。」

「・・・これは失礼しました。私はリズ・ムソウと言います。一応この国の大臣をしていますのでどうぞよろしくお願いします。」


リズは丁寧に頭を下げる。その瞬間、山の方から地響きが聞こえた。それを察知したナッツ・リズを始め、何人かが即座に国の入口へと向かう。


「何でしょう?地震ですかね?」

「ディン。」

「あぁ、これは不味いな・・・オレ達も行くぞ。」

「私も行きます!」


そしてディン達も国の入口へと向かった。そこで最悪の惨状が起きているとも知らずに・・・


--------------------------------------------------------


「何ですかこれ・・・」

「やっぱりか。」


ミナミの目の前には傷だらけの兵士が何人も倒れていた。肩に青い薔薇のエンブレムがあるところを見ると恐らくブルーローズ国の兵士だろう。そしてその兵士達が戦っていたのは・・・


「黄龍・・・」


ナッツが小さく呟いた。兵士達が戦っていたのは全長十メートルはありそうな巨大な龍、それも鱗が黄色をしている所から見ると宝石を守っている番人と言われる黄龍だった。


「何で宝石の番人がこんな所に!?」

「知るか。とりあえずコイツを倒さねぇとやばいぞ。街に向かってやがる。」


ディンの言う事はもっともだ。確かに黄龍は街の方に向かって進んでいた。あんなのが街に出たらパニックになるし街の被害も尋常じゃなくなるだろう。


「ナッツ、リズ。あの龍を止めるわよ。」

「「了解!」」


二人はミナミの命令で自分の武器を取り出す。ナッツの方は天照あまてらすと呼ばれる炎の剣、リズは大地の加護を受けたと言われている流星の剣を黄龍に向けた。


グギャアアァアッ!!


龍の咆哮が体の本能を呼び覚ます。二人は恐怖でその場から動けなくなった。その隙を見逃さず、黄龍は尻尾をナッツに浴びせる。


「チッ、くぉの!?」

「ディンさんッ!?」


ディンはナッツの前に飛び出し、細剣で黄龍の尻尾を受け止める。しかしそこはやはり龍、尻尾の衝撃に耐えきれず岩山に吹き飛ばされる。


「リズ、ナッツを援護して!」

「了解。ここは通させないわよ・・・」


そしてリズとナッツは黄龍へと突っ込んでいった。一方その頃、岩山に吹き飛ばされたディンはアヤの治療を受けていた。


「ディン、大丈夫?」

「グッ・・・大丈夫だ。しかしアヤ、あれはやりすぎじゃないのか?黄龍なんてオレ達の国でも手間取る相手だぞ?下手すればあの国は滅亡する。」


ディンが眉をひそめるとアヤは妖笑ようしょうする。それはさっきまでの明るい笑みとは違い、何かを企んでいるような、そんな笑みだった。


「フフッ…ばれちゃった?大丈夫よ。いざとなれば私が助けるし。それより傷を見せて?アバラが何本かイッちゃってるでしょ?全く龍の攻撃をまともに受けるなんてバカね。そんなにあのナッツって子が気にいったの?」

「まぁおもしろそうではあるな。」

「あら、随分適当ね。私としてはあんな国すぐに潰れそうな気がするんだけど・・・」

「それは上が判断する事だ。それにしてもちくしょう。レクイエムがあればあんなヤツ瞬殺なんだけどな。」

「アレは有名すぎるから使っちゃあダメ。医者の言う事は聞くものよ?」

「医者関係ないだろ・・・」

「それよりもうしばらく寝てなさい。」

「分かったよ・・・」


話は戻ってナッツとリズである。二人は黄龍相手に苦戦を強いられていた。ナッツは得意の剣術で黄龍の足を切る。リズはナッツを援護してエンペラーマインドを黄龍に向かって放ちまくる。だがそれをあざ笑うかの様に黄龍は足を止めなかった。もう街までは目と鼻の先だ。


「くそっ…何で止まらないんだよ!?」

「これではもう持たない・・・」

「諦めてはダメです。」


ナッツとリズが諦めかけるとミナミがそれを制した。そして自分は黄龍の前に出る。


「ミナミ様!?何をしているんです!」

「ミナミ、危ないぞ!?」


ナッツとリズの言葉にも気にせず、ミナミは黄龍に近づいていく。黄龍はそんなミナミを邪魔だと思ったのか、ブレスを吐く準備をした。そしてミナミに向かって一気に炎のブレスを浴びせる。


「ミナミ!?」

「ミナミ様!?」


二人の声が森に響き渡る。ブルーローズの兵士達も王が炎に巻き込まれたのを見て呆然とした。あの攻撃を食らってはもう・・・だがミナミは生きていた。いやそれ所か苦しんでいたのは黄龍の方だった。


「あなたみたいな龍如きに私の国を荒らさせません。」


ミナミの手にはラグナレクと呼ばれる風の加護を受けた槍が持たれていた。その風は黄龍を包むと途端に黄龍が苦しみ出す。


「いける…いけるぞ!全部隊黄龍に攻撃!!」

「「「ウオオォオオォ!!」」」

「ほぅ・・・?」

「あのミナミって王様、中々やるね。」


陰から見ていたディンとアヤはミナミを見て感嘆の声を上げる。気力の無くなった兵士を奮い立たすのは簡単な事ではない。だが彼女はたった一回の攻撃で全兵士を奮い立たせたのだ。並大抵の事ではできないだろう。


「勝負は決まったな。」

「ハァッ!」


ディンが見返したときにはすでにナッツの攻撃によって黄龍が倒される様子だった。黄龍が倒れるとミナミの前に青い光の粒が舞い落ちる。


「何だ?」

「サファイアです。黄龍を倒した者に捧げられる秘宝・・・」

「ウワァッ・・・」


サファイアはミナミの目の前で砕けたかと思うと街を青い光が包み込み、まるで青い薔薇の様な形を作った。後に青薔薇姫あおばらひめの祝福と呼ばれるこの事件はブルーローズ国では伝説として語り継がれる事となった。


後日談だが庇ってもらったお礼がしたいとナッツはディンとアヤを探したが国の中ではとうとう見つからなかったという。


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「良いモノ見させてもらったな。」

「綺麗だったわね。」


ナッツが探していた頃、ディンとアヤはブルーローズ国を出て、EGO国へ向かう馬車に乗っていた。ディンの肩には大きな大剣が背負われている。


「最初はダメな国だと思ったんだけどなぁ…私の目も狂ってきたかな?」

「オレも最初はすぐ潰されると思ったが…あのミナミっていう国王といい、ナッツとかいう兵士といい、全く予想外だったぜ。帰って王に伝えないとな。あの国は大きくなるぜぇ?」


そしてEGO国隊長にして黒衣シャドゥ・僧侶プリステルと呼ばれた男、ハテナ・ディンはブルーローズがあった方面へ顔を向ける。


「戦える日を楽しみにしているぜ。」


聖ブルーローズ教国はこの後、EGO国から攻撃を受けるがAzur Vie街の戦いでこれを撃退する事に成功する。その前線ではリズと呼ばれた女戦士とナッツと呼ばれた男、そしてその二人に守られるように赤い髪の女性がいたという。

これはEGO国が保管している歴史資料の小さな話。だがその小さな話が今後の歴史を作っていった事を忘れないでもらいたい。


                                

                                      完

さてこれは自分の小説をブログで紹介してくれた人への贈り物のつもりで書きあげた作品です。今回のテーマはもちろん「青薔薇」です。


ちょっと分かりにくいかもしれませんが楽しめたら幸いです。

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