第四話 冒険者認定試験 その2
今、ミラと名乗る女性と赤髪の少女イルマの模擬戦が始まろうとしていた……
「いきますッ!!」
先に仕掛けたのはイルマの方だった……掛け声と共に地を蹴って前方へ急加速――目先にいるミラとの距離を一瞬で詰めるッ!
「てりァァァァーッ!!」
距離を詰め、ミラを自身の間合いに捉えた瞬間ッ!イルマは上下に剣を振り下ろし、剣撃を叩き込むッ!!
「やる……」
ミラはイルマの剣撃を自身の手に持つ剣で受け止める……
「くっ……」
初撃を防がれるや次いでイルマは、上下左右あらゆる方面から無数の剣撃をミラめがけて叩き込む――振り下ろす剣は最早、常人の目には捉えられぬほどの剣速に至っていた――
「(開始早々に激しいのくんじゃんっ!)」
ミラはイルマの放つ剣撃の数々を捌きながら不敵に笑っている……
「(このまま押し切るッ!)」
イルマはミラに剣撃を叩き込み……叩き込み……叩き込み続ける…………
すでに振り下ろした剣の数は百に迫るほど……その一太刀が鉄製の丈夫な剣を破壊するのに十分な威力をもっている……だが、そんなイルマの無数の剣撃をミラは尽く捌き続けている……未だ一太刀も受けてはいなかった。
「……ッ!!」
次の瞬間ッ!イルマが無数に放ち続ける剣撃の僅かな隙をついてミラが一太刀放つ――命中するギリギリでイルマは地を蹴って後方へと跳んだ――
「……ッ!?」
着地すると同時に剣を構えて臨戦体制に入り、目先にいるミラの方を見る――だが、既にその場所にはいなかった……
「(どこに――)」
一瞬、動揺して辺りを見渡す――が、その直後ッ!ミラがイルマの背後に突如現れ、剣を振り下ろした――イルマは持ち前の勘と反射神経で左方へ跳び、なんとか回避する――
「いつの間に……」
体制を整えて剣を構え、ミラを見る――
「今のを避けるかッ!!ふふ、楽しくなってきたッ!」
ミラは笑みを浮かべながらそう言って……剣を構えて地を蹴る――イルマとの彼我の距離を一瞬で詰め、物凄い力で薙ぎ払う――イルマは寸前でしゃがんで回避し――その直後ッ!足払いをしてミラの体制を崩そうとする――が、当る直前でミラが真上に跳び、避けられてしまう。
「はッ!!」
ミラは跳躍している状態から目下にいるイルマ目掛けて斬撃を放つ!
「……ッ!?」
イルマは頭上から放たれた斬撃を回避して――跳躍状態のミラに斬撃を放った――
「そらッ!!」
だが、ミラは持ち前の剣捌きで斬撃を弾き飛ばし、着地すると同時に地を蹴って急加速――イルマとの距離を詰め、喉元目掛けて光速の突きをおみまいするッ!
「くぅッ!」
イルマは命中する直前でなんとか避けてミラの背後に回り、一太刀与えんとミラの背目掛けて剣を振り下ろす――が、その数瞬前にミラが振り向きざまに剣を振り――捌かれる。
「すげぇ……あの二人……」
「確か……あの茶髪の女の人って、Aランク冒険者の……」
「もう一人の赤髪の娘……私と同じくらいの歳なのに……凄い……」
今回の試験希望者達が各々反応する。
「あの女の子凄えなぁ……ミラさんとやり合ってるよ」
「Aランク冒険者の中でも上位の実力を持つミラさんとあそこまでやり合えるなんて、あの赤髪の娘……何者なんだ?」
冒険者達も驚いた様子で二人の模擬戦を見ている。
「イルマ……貴方はいったい……」
銀髪の少女セラも呟く。
……………
………
二つの剣が交わり続けている……剣がぶつかり合うたびに激しく火花が散り、お互いがお互いを押し切らんとその激しさは次第に増していく。
「てやァッ!!」
ミラが薙ぎ払うッ!イルマは剣で受けるが十数メートル程後方に弾き飛ばされる――
「これでもくらえぇぇぇぇーッ!!!」
イルマが弾き飛ばされて着地をすると同時に――ミラが無数の斬撃をイルマに対して放ったッ!
「……ッ!?」
初撃をなんとか回避すると同時に体勢を立て直し、自身に向かって飛んでくる無数の斬撃をイルマは、剣で捌き続ける……
「耐えれるもんなら耐えてみろォォォォォォッー!!!!」
ミラは叫ぶと同時に自身の持つ剣の柄を力一杯握って、より強力で速く夥しい数の斬撃を放ったッ!!
「くッ!?(これはヤバいッ!!)」
イルマは飛んでくる斬撃の数々を何とか捌き続ける……
「そらそらそらァァァァーッ!!!いつまで続くかなぁッ?」
ミラは強力な斬撃をイルマに対して放ち続ける……
「このままじゃ…………いやっ!まだだッ!!(やるっきゃないっ!一か八か……)」
イルマは何かを決心したと同時に、自身の間合いに入っている斬撃を全て薙ぎ払って、前方のミラのいる方に向かって全力で走り出した――
「ん?……何を――」
イルマの想像もしなかった行動に少々驚いたミラだったが、自身に向かって走ってくるイルマに対して、斬撃の雨霰を放ち続ける――するとっ!
「いぃぃヤァァァァァァァーッ!!!!」
力強い声とともにイルマは自身に向かって飛んでくる無数の斬撃の数々を剣で逸らして逸らして逸らし続けて走り抜け――ミラとの彼我の距離を詰めてゆく――
「なッ!?」
ミラは驚きながらも、無数の斬撃をイルマに対し放ち続けて自身との距離を詰めさせんとする――だが、イルマは次第にミラとの距離を詰めてゆき、その目前まで近づくと同時に自身の持つ剣の柄を思いっきり握って、全力の力で剣撃をミラに対して叩き込んだッ!!!
「うぐぅッ!」
ミラは剣で受けたが、そのあまりもの衝撃の強さに後方――会場内の壁まで物凄い速度で弾き飛ばされ、そのままの勢いで壁に叩きつけられた。
ドガァァァァァァァァァンッ!!!!
物凄い衝撃音とともに会場内の壁が壊れる。
「「!?」」
その出来事に会場内の全員が驚愕し、ミラが弾き飛ばされて破壊された壁の方を見ている……
「なんとか……なった……かなぁ……」
イルマは息を切らしながら、破壊された壁の方を見ている……土埃のせいでミラの姿はまだ捉えられない状況だ。
「ん……」
イルマが目を凝らし壊れた壁の方を見ていると……土埃の中から人影が現れ、こちら側に向かって歩いてくる……
「いい、一撃だった……」
ミラが土埃の中から姿を現した。
「手がちょっと、痺れて痛いよっ!」
ミラは苦笑しながら自身の手を軽くばたつかせている。
「じゃ、続きしよっか……」
「はい……」
二人は剣を構える……先程までの死闘がまた始まろうとしたその時ッ!
「二人とも――そこまでだッ!!」
一人の人物が声を発する――その人物は、会場内の扉の方からこちらに向かって歩いてくる。
「ミラ、やりすぎだぞッ!これはあくまで試験だ」
ミラに対して注意を促すその人物は、黒色の短髪に黒い瞳をした五十代くらいの強面の顔をした男性だ。
「ギルドマスターッ!?なぜここにッ?」
「職員の一人にお前が試験会場の方に歩いていくのを見た……と言う者がいてな、もしや……と思って来てみたら、やはり……」
「ギルド……マスター?」
「ん?君は今回の試験希望者かな?」
ギルドマスターと呼ばれる黒髪の男性が、イルマに尋ねた。
「は、はいっ!……あ、あたしは……イルマ・ツアーと申しますッ!」
「そうか……では、私も名乗るとしよう……私はこの冒険者ギルドでギルドマスターを務めている、アルヴェス・レイだ」
ギルドマスターことアルヴェスは、自身の名を名乗ると……次いでミラに対し苦言を呈する。
「お前のことだから驚きはしないが、こう何度も勝手なことばかりされると……我々も行動せざるを得ない」
アルヴェスは少々不機嫌そうにミラに告げる。
「はいはい、もうしませんよー……これで満足?」
「はぁ〜、お前とゆうやつは……もういい、とにかく……次はないからな」
そう言ってアルヴェスは、会場内の他の冒険者や試験希望者達が集まっている方へと歩いて行った。
「イルマ!」
ミラがイルマに向かって歩いてきた。
「実にいい立ち合いだった……久々だよ、あんなに体を動かしたのは……」
「あたしもです!ミラさん強かったです」
「しっかし、いいとこだったのに邪魔が入ったな……」
「ギルドマスター……アルヴェスさんのことですか?」
イルマはミラに尋ねた。
「そうそう、いっつも上から目線で面倒くせぇの」
「ははは……」
イルマは少々困った顔をして笑っている。
「しっかしなんだ……イルマ、君は強いなぁ〜まだそんなに若いのに」
「いえいえ、ミラさんも強かったですよ!こんなに強い人と手合わせしたの、お父さん以来でした」
「そうか……君の父上は相当な実力者らしいな」
イルマとミラは、お互いの実力を認め合いながら談笑している。
「はいっ!あたしの剣の師匠でもあって……小さい頃から何度も立ち合いをしてるけど、まだ一度も勝ったことがなくて……でもっ!いつの日か……お父さんに勝つのがあたしの目標の一つなんですっ!」
「そうか……それは素晴らしいことだ。……しかし、それほどの腕の持ち主というのなら、私も機会があれば一度手合わせ願いたい者だな」
「ビックリするぐらい強いですよッ!」
二人が談笑していると……会場内の皆が集まっている向こうの方からギルドマスターが二人を呼んでいて……ミラとイルマは小走りでそちらに向かうのだった……
…………………
…………
現在時刻は夕刻……全ての模擬戦は終了し、ギルドマスターが会場内にいる皆を集めて、これからのことについて話しはじめていた……
「皆さん、今日はお疲れ様でした。これにて全ての試験は終了とします……結果については後日、伝えるとします……では、私はこれで……」
ギルドマスターはそう言うと、会場内を後にし……ミラ含めその他冒険者達もそれに続き、今回試験を受けた者達も皆それぞれ会場内を後にしていく……
「あぁ〜疲れたぁ〜……今日は早く寝よぉっと……」
イルマがへとへとしながらそんなことを呟いていると……
「さっきの模擬戦……凄かったわ。強いとは思ってたけど、想像以上よ」
そんなことを言いながら、誰かがこちらに近づいて来る……
「セラ……」
「お疲れ様ね、お互いに」
午前にあった筆記試験の後の休憩中に話をした銀髪の少女セラだ。
「疲れてる?」
「うん、さすがにね……ミラさん、メチャメチャ強かったよ……」
「そうね、でも……貴方も相当よ」
「……セラは大丈夫なの?」
「私は全然、ちょっと所用があって昨日遅くまで起きてたから……寝不足なだけ」
「そっか……で、なんだけど……今日の試験どうだった?」
イルマが尋ねる……
「まあまあね……でも、自信はあるわ。貴方の方は?」
「あたしは結構良い線いったと思ってるよ。筆記の方は全然余裕だったし……問題は実技かな」
「それこそ余裕でしょ!……まあ、お互い合格できるよう祈りましょ」
「だね」
二人は話し合いながら会場内を後にし、こうして冒険者認定試験は終わりを迎えるのだった。




