第三十五話 信仰のアルダーク その4
「くくく……」
アルダークが指を鳴らした……すると、複数の歪みが出現し始めて――
「――させるかっばーかァッ!!」
セラがアルダーク目掛けて強力な魔力弾を打ち込んだッ!!魔力弾はアルダークに命中し、その周囲に出現した歪みもろとも吹き飛ばす――
「確かにその術は厄介なものだわ。でもね、そのゲートは出来上がるまでに時間がかかる……」
セラの放った魔力弾によって爆発が起き、辺りには土埃が舞っている……
「…………なるほど、ね――」
アルダークは土埃の中から姿を表すと、再び指を鳴らし――周辺に再度、複数の歪みを出現させ始める――
「――ちったぁ頭使えッ!!」
セラがアルダークに手を向け、再び魔術を放とうとする――だが、次の瞬間ッ!
「――何ッ!?」
アルダークの数メートル前方の地面の中から二体の大型の魔物が現れた――
「何だッ!?この蛇――」
それは数十メートル程の長さはあるであろう大型の蛇の魔物で、その全身は真っ黒な鱗で覆われており、ギロギロとした赤い目でセラを凝視していた――
「ちッ!すでに呼び出して地面の中に潜ませてたか!」
「くくくくく……」
アルダークの周囲に出現した歪みから魔物達が次々に現れようとし――
「――させるかッ!!」
セラはすかさず歪みに向けて魔術を放とうとするが――
「――くそッ!!」
だが、それよりも前に二頭の大型の蛇の魔物がセラを丸呑みにせんと、その大きな口を目一杯開けて飛びついて来たッ!!
「面倒な――」
セラは魔術で風を身に纏い、後方に跳んで回避する――しかし、蛇の魔物達は間髪入れずにすかさずセラを追っていき――
「あー、うざいッ!!」
セラは着地と同時に地面に手を触れ――そしてッ!
「――串刺しになれぇぇぇぇーッ!!!」
直後ッ!!地面から数十本の鋭利な土の槍が現れ――二体の蛇の魔物を両方とも串刺しにして、その場に固定する――
「――落ちろッ!!」
さらに続けて、セラは二つの強力な風の刃を串刺しになり身動きが取れない蛇の魔物、それぞれの首に目掛けて放ち――切断するッ!!
二体の蛇の魔物は首を落とされ、切断面から大量の血を流して絶命する――
「……次から次へと、面倒くせぇなぁ――」
アルダークが呼び出した数多の魔物達がセラを殺そうと次々に迫ってきている――
「はぁー、鬱陶しい……まとめてだッ――」
セラは空に向かって魔術を放つ――極太の雷線が天高く、一直線に駆け上がっていき――
「テメェら全員――」
突如、空が急速に薄暗くなっていく――そしてッ!!
「――消えてなくなれッ!!!」
セラが上から下に手を振り下ろした――すると、次の瞬間ッ!!巨大な雷が天空から物凄い速度で地上に落下した――
大轟音ッ!!!!超威力の雷はセラへと迫っていた魔物達に直撃する――大地は激しく揺れ、凄まじい衝撃が辺りを駆け巡る――超強力な雷が直撃した魔物達は、その存在ごと消滅する……
「…………全滅ね」
セラの前方――巨大な雷が落ちた場所一体の地面は真っ黒に焼け焦げており、今も無数の雷が地を稲葉いている……
「……はっはっはっは、凄いすごいっ!」
アルダークが手を叩きながらセラの方に歩いてくる……
「敵ながら尊敬するよ、君は凄い!」
「はッ?あんた、何よ急に――」
「ん?いや、僕はいま思っていることをただ口にしているだけだよ?」
セラは気味が悪そうにアルダークを見ている……
「そんなつまらないこと言ったって、私があんたを殺すってことに変わりはないわよっ?」
「くくく、つれないなぁー……せっかくの勝負なんだからもっと楽しもうよ?」
「はぁー、あのね……私はとっととこんな戦い終わらせて、速くイルマと二人で楽しいことをたくさんやりたいのっ!!」
「ん……イルマ?楽しいこと?」
「ええ!そうよッ!!二人で一緒にやりたいことがまだまだ沢山あるのよっ!」
「例えば?」
アルダークがセラに質問をすると――
「いっぱいあるわ!もっと楽しい冒険をしたり、一緒に買い物したり美味しいお店で食事をしたり……私の屋敷に呼んでお泊まりなんかしたりして、一緒にお風呂に入ったり……同じベッドで仲良く……それで…………と、とにかくっ!!私は速くこの戦いを終わらせて楽しいことをいーっぱいやりたいのっ!!」
セラは少し気恥ずかしそうにして顔を赤くしていた……
「……君、それ……僕に喋ってもいいのかい?それに……せっかくさっき僕に嘘ついて違う名前を喋ってたのに……彼女の名前はイルマなんだねっ?それと、君はセラだ。さっきそう呼ばれてた」
「……もう、どうでもいいわよ。そんなこと……」
「……どうでもいい?くくく、君……僕は滅び神の祝会の幹部だよ?」
「――だからどうでもいいって言ってるでしょッ?あんたはこれから死ぬんだから、これから死ぬやつに何を言おうが……別に何の問題もないでしょ?」
セラは呆れた顔でアルダークを一蹴する。
「……くくく、君ってやつはおもしろ――!?」
突如ッ!!アルダークが後方へと吹き飛んでいった――
「これ以上あんたと話すことはないわ!」
セラが魔術を放ったのだッ!
「………………また喋ってる時に、全く――」
アルダークは歩きながらセラの方に近づいていく……自身の体に身につけている小型のマジックバックから何かを取り出して――
「――ダークヒュドラッ!!」
次の瞬間ッ!アルダークの体から黒いモヤが急速に発生していき――その背後から黒く細長い影が次々に幾つも飛び出してきて――
「――魔術っ!?でも、詠唱が――」
セラは警戒し、アルダークを見据えている――
黒く細長い影は段々と形を帯びて大きくなっていき――やがて、蛇の様な形になり――そしてッ!!合計で九つある巨大な黒い蛇の影は瞬時に、セラに向かって伸びていった――
「――何だコイツらっ!?私の知らない魔術だッ!」
セラは向かってくる巨大な黒い蛇の影達を迎え撃つべく、魔術を放つッ!
「こっちくんなッ!!」
セラの放った強力な炎の火球は一直線に飛んでいき――九体の黒い蛇達の、ど真ん中に命中したッ!真っ黒い巨大な蛇の影達は瞬く間に燃え盛る強い炎によって霧散していく――
「なぁーんだっ、大したことないわね――」
セラは予想以上の耐久力の無さに呆れている――だが、その時ッ!
「なっ、何――ッ!?」
セラの放った魔術によって霧散したはずの黒い蛇の影達が――みるみるうちに再生して元の形に戻っていった。
「――再生したッ!?」
セラは自身の目の前で起こった予想外の状況にかなり驚いていて――
「くくく、無駄さ……この蛇達は君を捕えるまで永遠に追い続けるのさ!」
アルダークの手のひらの上で魔石が粉々に砕けている……特殊な魔石を使って魔術の詠唱を省略したのだ。九体の巨大な黒い蛇の影がセラを捕らえるべく、次々に襲いかかるッ!!
「ちッ!」
セラは魔術で風を身に纏い、後方に広がる森林へと駆けて行き――蛇の影達もその後を追っていく――
「(――しつこいなぁッ!!)」
セラは身に纏う風とともに物凄い速度で次々に、木から木へと飛び移り続けて移動して――巨大な黒い蛇の影達もその後を追い続ける――
「(……攻撃しても再生するなら……やっぱし、本体をやるしかないか――)」
方向転換ッ!セラは蛇の影達の追撃を交わし続けて、アルダークの元へと移動速度を上げて一気に近づいていき――
「――やはりそうか!」
セラは木を強く蹴って空高くへ跳びッ!アルダークを見下ろす――その体からは黒いモヤが湧き出ていて……モヤからは九つの細長い影が森林の方にずっと伸びていた。
「……なるほどね。ヤツから湧き出ているあの黒いモヤが……つまり――あの魔術障壁をぶち壊さなきゃ、鬱陶しいあの蛇達も消えないってわけか――っならッ!!」
セラは両手を構えて集中し――急速に魔力を高めていく――その手の前には魔術方陣が現れはじめ――
「……ん?何だ……?」
アルダークは頭上を見上げ――身に纏う風とともに空を漂っているセラを見ている――
セラは魔力を高め続けて――そしてッ!複雑な魔術方陣が完成した――その瞬間ッ!!
「――ぶっつぶれろォォォォォォーッ!!!!」
セラの両手の前に展開された魔術方陣から極太の超強力な竜巻が発生し――アルダーク目掛けて放たれるッ!!!
「――赤竜ッ!!」
アルダークは咄嗟の判断で指を鳴らし――出現した歪みから現れた真っ赤な竜の背に飛び乗り、竜とともに空へと飛び立とうとする――
放たれた竜巻は炎と稲妻が渦を巻いており、恐ろしほどの破壊力を秘めている……火と雷と風の複合魔術だッ!
「危なかったねっ――」
超威力の竜巻が自身のいる場所に到達する直前で、アルダークは呼び出した竜とともに空へと飛び立ち回避する――竜巻はそのまま地面に激突する――と誰もが思ったその時ッ!!
「――何ぃッ!?」
逸れた――竜巻は地面に激突するギリギリで逸れ、方向転換――竜に乗って空へと飛んで回避したアルダークを追って突き進んでいく――そしてッ!!
「――巻き込まれ――ぅぐッ!?」
超威力の竜巻は竜とアルダークに直撃したッ!!巨大な竜巻は竜を一瞬で粉微塵にしてすり潰し、アルダークを巻き込んで空を縦横無尽に暴れ狂うッ!!!
「――なん、て――威力ッ――なん、だ――」
アルダークは炎と稲妻が渦巻く超強力な竜巻に巻き込まれ――全く身動きが取れず、展開している魔術障壁とともに暴れ狂う竜巻の中に囚われている――
「――ま、まずい――魔、術――障壁、が――」
アルダークの身を守る対魔術の障壁がビシビシと音をたてながら段々とひび割れていき――障壁全体にさらなる亀裂が入っていく――
「――このまますり潰されてっ――死んでいけェェェェェェ―ッ!!!!」
巨大な極太の竜巻はアルダークを巻き込んだまま一直線に突き進んでいき――前方に聳え立っている岩山に物凄い速度で激突したッ!!!!
直後ッ!!凄まじい破壊音とともにその場一体を衝撃が襲うッ!!!激しい炎と稲妻が荒れ狂い、巨大な竜巻と激突した岩山は、けたたましい音とともに一気に崩れ去っていく――
……………
………
「………………終わった、かしら――」
辺り一体には大量の土埃が発生しており、セラは少し離れた場所から状況を確認している……
「……手応えは、あったけど…………」
セラは目を凝らして前方を見ている……しかし、土埃が舞っていて未だ何も見えない……
「…………んっ!?」
だが、そんな時ッ!不意に土埃の中に人影が現れたッ!
「…………今のは、危なかったよ。本当に――」
一人の人物が土埃の中から姿を現す――
「……ったくッ!運のいいやつっ!!」
アルダークだ……あれほどの威力の技を受ければ本来は即死のはずだが……彼は、無傷だった……しかし――
「何とか耐えたみたいね――でも、次はどうかしらっ?」
アルダークの周囲に半透明の魔術障壁が展開している――だが、その障壁は今にも砕け散りそうで……障壁全体には無数の亀裂とひびが入っていた。
「……ああ、もう耐えられないね。だから――」
この戦闘が始まって以来、初めてアルダークが焦りの表情を見せる――
「――もう終わりにするよッ!!」
「……えっ!?なに――ッ!?」
後方から物凄い震動音が聞こえてセラが振り返る――そこには全速力でこちらに向かって走ってくる黒き災害の姿があって、セラは突然の状況に目を見開いて硬直していた――
「――セラッ!!逃げてぇぇぇぇーッ!!!」
「あ、イルマ――ぇッ!?」
イルマが突如、現れるや否やセラを突き飛ばした――セラは数メートル地を転がり岩に激突するッ!
「――痛ッ!!」
そして――その数瞬後ッ!!
「――くぅッ!?」
黒き災害が手に持つ斧を下から上に物凄い力で振り上げ――イルマは回避できず、それを剣で反射的に受ける――そしてッ!
「――うぐぅッ!?」
黒き災害が斧を勢いよく振りきって――イルマは遥か彼方へと吹き飛ばされてしまった――
「……イル、マ――」
セラは頭を抑えながら立ち上がる――出血しており、額から血が垂れていた。
「あれ……?イルマ、どこ?どこ、なの……」
セラはイルマの姿が見当たらず、辺りを見回している……
「……くくく、彼女なら君を庇って――遥か遠く……彼方へと行ってしまったよ!」
アルダークが不気味な笑みを浮かべてセラに告げる。
「……え、今なんて――」
「――くくくくく、どうやら……僕の予言は当たったみたいだねっ!君より先に――"彼女が死んだ"」
「…………くだら、ねぇ……くだらねぇ嘘ついてんじゃねぇよッ!!!テメェ――ッ!!」
セラは怒りの表情を浮かべ激怒するッ!!
「ははははは、君がぼーっと突っ立ってたからだよっ!確かに、強いよ……君は。でも……君ってやつは――やっぱりちょっと抜けてるよねっ?くくく、そのせいで今――赤髪の子が死んじゃったんだよっ!!」
アルダークは顔を歪め、楽しそうに嗤っている。
「……だからッ!!嘘つくなっていってんだろォッ!!!」
「くくくくく、まあ……落ち着きなよ。悲しむことはない……今から君もすぐに――逝けるんだからさっ――」
アルダークが懐から何かを取り出す――それは、何らかの紋様が入った魔石で――
「戻っておいで――」
突如、アルダークが手に持つ魔石が発光しはじめる――すると、前方に巨大な魔法陣が現れ――そして!
「――さぁ、黒き災害よっ!」
魔法陣の中に突如ッ!巨大な剣が出現し――黒き災害は手に持つ斧を背にしまい――その剣を手にした。
先程、黒き災害が二人に目掛けてぶん投げた巨大な剣だ。アルダークは特殊な魔石を使ってその剣を転移させ、この場に運んできたのだ。
「さて、では……終わりにしようか!!」
アルダークがそう言うと、黒き災害が手に持つ剣を振り上げて――
「……イルマは、死んでないわ――だから……私は――」
セラは下を向いて俯いている……その表情は、誰にも窺えなかった――
……………
………




